【ホロライブレビュー.03】C-1《足して割るべきだった姉妹》include:宝鐘マリン、天音かなた、YAGOO、大空スバル、兎田ぺこら

VTuber


【①.数年スパンで繰り返される宝鐘姉の、「上京するする詐欺」】

【➁.激旨の雇用条件をよく分からない理由で袖にする姉は一見するとやっかいな人だが、問題はむしろ宝鐘のオファーのかけ方の方にある】

【③.YAGOOは天才。大空はバカ】

【④.ブラック企業勤務時代に宝鐘が負った傷は、時を経て姉に受け継がれる。ブラック企業全盛の時代ならではの負の連鎖】



上京するする詐欺

✔ 先日宝鐘の配信の中で、実家で引き籠りと化している宝鐘の姉を東京に呼び寄せ、社外マネージャーとして雇う計画を立てるも頓挫したという話があった。天音とのマイクラコラボ中に話されたエピソードだったが、弱腰で優柔不断で、多分に迷惑な姉の行動に天音、そしてリスナーからは姉へのヘイトが集まっていたように思える。売れっ子ホロメンが家族を呼び寄せて活動の補佐に充てるのはいい案だと思うが、以前から上京する・しないで揺れていた宝鐘姉はこれでさらに、こちらに出て来辛くなってしまったのではないだろうか。


二日で裏返った計画

✔ 「姉を上京させて雇う計画が頓挫した話」をする宝鐘。美味しい条件を用意して貰った上で細かい注文をあれこれとつける姉に「甘え過ぎ」とヘイトが集まる。


✔ 23:41~ 上の配信のたった二日前、姉を呼び寄せる計画を嬉々として語る宝鐘。この浮足立っている様子が直後に裏切られるのだと考えて観ると少々胸が痛い。

この配信に寄せられた、リスナーの「甘やかし過ぎ」という意見を鵜呑みにした宝鐘が姉に「条件出せる立場じゃないよね」と厳しく出た結果、計画が白紙に戻ってしまう。


足して割るべきだった姉妹

✔ 家を訪れた妹の友達から逃げ回る宝鐘姉(上)と、同僚の家を訪れてその妹に迫る宝鐘(下)という、姉妹で全く真逆のエピソード。

宝鐘と宝鐘の姉は、性別以外の何もかもが全くの逆だ。同接2万人の配信で日々喜んで衆目に晒される宝鐘に対して一人の人間とも関わりたくない宝鐘姉。才能を活かした特殊な職に就く事を模索し、遂には地元を飛び出した宝鐘に対して好きでもない職場で時間を潰し、妹にお膳立てされても上京したくない姉。業界一笑いに極まった宝鐘、喋りがトロくて何も面白くない姉。下とセンシティブの化身の妹に対してどちらも過度に嫌う姉。躁を疑う程に元気で明るいコミュ強の妹、本当の意味で一人の友達もいない、真性の陰キャである姉。人生を何周か送れる程稼いだ妹に対して、退職以来実家で引き籠り状態の姉。

何もかもが作ったかのように余りに両極端で、ハゲの親父は何とかこの二人を足して割ったような形で育てられなかったのかと思ってしまうが、この姉妹を足して割ったバランスで仕上げてしまった場合、宝鐘マリンというお化けライバーはきっと生まれなかっただろう。

あたかも宝鐘が姉から何もかもを吸い上げ、自分だけ人生を成功させたような図式だが、今回の宝鐘による姉の雇い入れは、せめてそれによって得た金は分配しようとしているようにも見えて面白い。もしかするとこれも「てぇてぇ」の一種なのかも知れない。


社畜の飼い方

✔ 「宝鐘が姉に破格の好条件で雇う打診をする」→「提示された好条件に細かい条件を上乗せしようとする姉」→「リスナーの忠言を受けてあんま甘えんなよ、と毅然とした態度をとる宝鐘」→「あ、そういう感じなら大丈夫ですwwwとあっけなく引く姉」という一連の流れを見ているとやはり姉が悪く、同時に極めてしょうもない人物に見えてヘイトを買ってしまうのも無理は無いのだが、実のところ今回のこの計画の頓挫に関しては100対0で宝鐘の方に非がある。それは宝鐘を雇用主で上の立場の者、姉を雇用者で下の立場の者と考えると見えてくる問題なのだが、業界の覇者のようなイメージがありながら、実は生まれてこの方一貫してしがない雇われ人の立場でしかなかった宝鐘には、少々荷の勝ち過ぎる問題だったのかも知れない。

まず前提として押さえておかなければならないのは、宝鐘の姉はちっぽけで哀れな地方の社畜でしかないという事だ。生まれてこの方目的意識を持った事のない人間、愛知の訳の分からない田舎に生まれて、そこから出ないまま一生を送る事に何の抵抗も覚えない、小さくて無個性で意志を持たない人間。八割方の日本人は大体そんな感じだが、そんな人々にとって大事なのはプライドや体裁、日々従事する仕事の内容等ではなく「条件」と「保身」の二つのみになる。

宝鐘が姉の雇い入れに関して提示した条件は、具体的に出た物だと「宝鐘が住んでいる場所(恐らく都内でも家賃の高い場所)から徒歩圏内に姉専用の部屋を借りる」、「家事や車の運転等身の回りの世話を全体的に任せる」、「必要な時(寂しい時)は一緒に居て貰う」等で、推定30代中頃の社会性に乏しい女性が、妹だけを相手取るというストレスフリーな環境でこれをやって金を貰えるというのは恵まれ過ぎているし、羨まし過ぎる。最早万札にもティッシュぐらいの価値しか見出せなくなっているであろう宝鐘は、たったこれだけの仕事でもその辺の中小企業に勤めるより余程いい給料を姉に渡すつもりだったのではないだろうか。YouTubeという貧乏人が観るプラットフォームでこの話をして「甘やかすな」とコメント欄が憤るのもよく分かる。

これだけの好条件を姉が蹴ったのは、一重に宝鐘が強めの態度に出た事で「保身」が崩れたからだろう。地方のパンピーからすれば「東京で成功した人間が家族を上京させて、ほとんど養うような形で雇い入れる」という話は、恐らく異質過ぎて受け入れられず、宝鐘の姉のように思考力のない人間だと単純に「怖い」と感じてしまう。だから「マンションの日当たりが」とか「八畳の部屋が欲しい」等のしょうもない条件を撒く事で前蹴りを繰り返し、ある意味不安な気持ちを表現していたのではないだろうか。「日当たり」と「八畳の部屋」の二つはどちらも上京してきて働いた上で、宝鐘から受け取った給金で姉が勝手に新しい部屋を借りればいいだけの話なので、実は条件としてそもそも成立していない。

社畜、それも地方のどうでもいい土地の、どうでもいい会社で働くタイプの社畜というのはそういった生活を長年続ける事で思考力の大半を失い、視野はどんどん狭まり柔軟性は皆無に等しくなる。代わりに美味しい条件と表面的な安心感を与えてやればいくらでも操れる、それこそ家畜に近い生き物になり果てるのだが、姉に対して「条件出せる立場じゃないよね」と強く出てしまった宝鐘は、その点を全く理解出来ていない。ただ安心感が欲しいだけの、言い換えれば上手く騙しさえすればいくらでも言いなりになる、むしろそうありたい人間相手に本当の事を言ってどうするのか。宝鐘の姉は妹と対等な関係を築きたい訳でもまともな社会人になりたい訳でも、美味しい条件を提示してくれる出来た妹に頭を下げられるような誠実な人間になりたい訳でもない。ただ脳死で信じて安心出来るような状況をセッティングして、騙して欲しかっただけなのだ。

姉の雇い入れが失敗した話を隣にいる、白髪の寺田心くんみたいな奴に打ち明けてこども相談室みたいな事をやっているが、こいつは物分かりの良い風を装った只の小娘でしかなく、こんな事はやっても無駄だ。「お姉ちゃん引き籠ってるうちに怖くなっちゃったのかなー」とか言っているが自分のチャンネルに引き籠っているうちにホロメンとの絡み方を忘れて怖気づいてるのはおめえだろという話だし、「マリンの出した条件がどれだけ有難いか掴めていない事の方が(上京して来れない事より)問題」とか言っているが業界で最も上質なライバー達ホロメンと自由に絡める環境に身を置かせて貰えている有難みを掴めていない自分の方が問題だろという事で、お話にならない。分かった風な口を利けば利く程バカが露呈している事実に気付かない、こんな未熟なガキが一番の聞き役だというのだから宝鐘もつくづく可哀想だ。

「甘やかし過ぎ」とコメントを打ったリスナーも同様、宝鐘の配信でコメントしている人間なんか全員最底辺の非モテ男しかいないのだから、そいつらの言葉を鵜呑みにしてしまう宝鐘の方にむしろ問題がある。同じ最底辺ではあっても物を見極めて考える事が出来る、人心掌握に優れた私のようなイケメンモテ男は宝鐘の配信を観ていてもモニター前腕組みを決め込んでコメントなんか打たない。宝鐘はもっと相談する相手も意見を参考にする相手も精査した方がいい。

そういった人物は宝鐘が自分の力で探すしかないが、有様自体を参考に出来る、雇用主の模範例なら意外と近くにいる。それは先日「日本の起業家ランキング2023」で三位に輝いた、カバー株式会社代表取締役、谷郷元昭氏だ。


YAGOOの経営術

✔ 0:10~ 当時成績不振だったさくらみこが辞めたがったところを、泣いて引き留めたというYAGOOのエピソード。当時成績不振の小粒なタレントに過ぎなかったさくらみこにも愛情と思い入れを分かり易い形でアピールする人心掌握術。価値の薄い人間にもその事実に触れる事は敢えてせず、過剰な程優しく扱う事で良好な雇用関係を保つ。

引退の意を表明するさくらみこに「ここで甘やかしては今後の力関係が」とYAGOOが「辞めたいならどうぞ」と返したなら、さくらみこという怪物ホロメンは生まれなかっただろう。これは宝鐘が姉に「条件出せる立場じゃないよね。そんなにわがまま言うならやめる?」と突き放したものとは全く逆のアプローチだ。


✔ 自分が雇用しているタレント達を前に、進んでピエロを演じるYAGOO。上役の圧を感じさせない開放的な社風が、所属タレントの伸びやかな活動と自主性を育む。ほとんどのホロメンは、YAGOOの術中にハマってデビュー以来泳がされている事に気付いていない。


✔ 0:00~ YAGOOの術中にハマっている事に気付かないバカ一号。YAGOOを一番叩いてイジって蔑んでいる大空だが、やればやる程YAGOOの柔軟性と器の大きさを讃えて知名度を上げ、「カバー株式会社、そしてホロライブは自由で楽しい社風です」と宣伝している事に気付かない。


✔ 0:00~ YAGOOの手練手管に気付いてしまった勘のいい兎。YAGOOの話をする口ぶりから会社経営や権力の取得に興味を持っている事が窺える。


同じ痛みを、愛する者に

✔ YAGOOの雇用者(ホロメン)との関わり方は長期的に伸び良く回る、ホワイトな会社を作る為のものだ。パワーや圧、規律で縛り付けないから目に見える成果が上がるのに時間がかかってしまうが、代わりに社を構成する全員のモチベと自主性を削がず、健全に回りながら延々と成長し続ける永久機関が出来上がる可能性が残る。初っ端にスタートダッシュをかまして今では自転車操業に終始しているにじさんじと、立ち上がりは遅かったが今では悠々と大名商売を決め込んでいるホロライブの差は、二社のトップ同士の性質の違いに依るものだろう。

YAGOOの雇用者との関わり方がホワイトなのだとしたら、ではブラックな関わり方とはどういうものかと言えばそれは宝鐘がやったような、力関係を誇示して上下を明示した上で、「言われた通りに即従う・去る」の二択を迫るものだ。今すぐ道具として役に立たないのであれば要らない、関わる時間さえもったいないという余裕のない姿勢は、やればやる程即効性の効果を得られるが、長い目で見れば自転車操業にしか帰結し得ない。

宝鐘が今回姉をそのように扱った理由は「①ブラックな環境で即物的に扱われている、下層民に属するリスナー達の意見に従った」事と「➁宝鐘自体、ブラックで質の悪い職場に従事していた頃の感覚が抜けていない」という二つが考えられる。


✔ 2:43~ ブラックな飲食系の職場で接客係として働いていた頃のエピソード。「接客係なんかはいくらでも替えが利くから全員辞めて貰って構わない」と、自分が価値の薄い職に従事している現実を突きつけられてショックを受けたという話。

宝鐘が今回姉に対して言った「意見出来る立場じゃないよね(お前は立場の低い人間だ)」は「接客係はいくらでも替えが利く(お前達は価値の低い人間だ)」に相当し、「そんなにわがまま言うならもう上京やめる?(従わないならお前なんか要らない)」は「全員辞めて貰って構わない(従わないならお前達なんか要らない)」に相当する。宝鐘と姉の場合は姉の方が非常識で、宝鐘と宝鐘の以前の職場の場合は職場の方が理不尽だった訳だが、アプローチの方向性としては変わらない。「こっちの方がお前より上。だから主導権はこっちにある、それが分からないなら去ね」と同じ言葉を口にしている。哀しい事に今回宝鐘は、自分が以前の職場でやられて一番傷付いた事を、あろう事か肉親に対して行ってしまったのだ。姉妹だからか、その言葉を投げかけられてとった行動も「拒絶」と「退職」で共通している。


天才社長谷郷氏のやり方を、今回宝鐘が姉のわがままの処理に応用したなら「じゃあ日当たりのいい部屋は探すけど、悪いけど八畳は我慢して貰えるかな。給料は多めに渡すからそれ貯めて改めて新しい部屋探して貰えると助かる」みたいな感じになるだろう。何でも呑んでいたらさすがに雇用関係が成立しないが、「優しい」と相手が理解して安心感を得られる程度には分かり易く譲歩して「立場が低い」「替えの利く存在」「価値が無い」「要らない」という「事実」は絶対に口にしない。

雇用者だってバカではないので雇用主に力関係で勝ちたいとは思わない。「居てくれると助かるわ」感を醸して優しさと愛情、思い入れをアピールし、度が過ぎた時には恐怖や不安を覚えない程度に軽く諭してくれる、そうして平々凡々で唯一無二の価値を持たない、いくらでも替えの利いてしまう、弱くて情けない自分を忘れさせてくれる。それがパンピーにとっては理想の職場で、雇用主だ。

雇う側にとっては世話がかかって面倒臭くて仕方ないところだろうが、致し方ない。相手は「社畜」という名の四本足に相当する、人と存在を異にする生き物なのだから。


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