【 シャン・チー/テン・リングスの伝説 】79点 – 映画批評 –

映像作品



※ネタバレを含みます※


【①アクションの質・量共にMCU最高峰。主演俳優の技量は圧巻】
【➁ポップでライトに、小気味良く展開していくストーリー。時間を忘れて鑑賞出来る】

【①映像の明度が高く、中華風の世界観が映ると安っぽくなる】
【➁主演を含めメインキャストのビジュアルが今ひとつ】
【③アクションプロットで打突の瞬間やキメの大技を強調し損ねている。ボヤけた印象】

批評

✔ シャン・チー/テン・リングスの伝説は2021年に公開されたMCU(マーベルコミックを原作とする映画作品群)の映画。主演は中国系カナダ人のシム・リウが務め、その父親役をトニー・レオンが演じる。時系列は「エンドゲーム(2019)」直後。

「ブラック・ウィドウ(2021)」の低品質ぶりを見た時MCUはこの先予算をカットしてシリーズ作の質を下げていくのかと悲観したものだが本作とMCUの次作「エターナルズ(2021)」に関しては取り敢えず大丈夫のようだ。どちらもエンドゲーム以前のMCU作品と遜色ない出来栄えで、大変楽しませて貰った。

カンフーというのは、近年ハリウッド映画においてあまり使用されない。「マトリックス(1999)」「少林サッカー(2001)」以降数年はカンフーブームだったと記憶しているが、その後「マッハ!!!!!!!!(2003)」でムエタイに注目が集まり、同じ東南アジアの映画「レイド(2011)」でシラットが世界のスタンダードになって副次的にクラヴマガだとか柔術だとかカリみたいな物が取り入れられているのがハリウッド映画における格闘シーンの現環境だ。ブームから20年程が経った今、「ハリウッドのカンフー映画」と聞くと「大丈夫か?」と思ってしまう。「逆に新しい」とも言えない程、ハリウッド映画においてカンフーは今一番ダサい格闘技なのだ。

これまでのMCUから一転キャストをほぼ東アジア系に絞り、カンフーを用いた「シャン・チー」を鑑賞前は訝しんだ私だが、これは完全に杞憂であった。主要人物は全員中国人と言うより「東アジア系アメリカ人」で、彼らの日常をベースに展開していく物語は変わり種でありながらも親しみ易い。冒頭見せられる「グリーン・デスティニー(2000)」みたいな世界観のアクションシーンは正直キツいものがあるが本編が始まってから展開される、カジュアルウェアに身を包んでストリートで振るうカンフーは普通に格好いい。主演のシム・リウのスタントマン並のアクションには思わず声が漏れる程だ。



本作はMCUの中でも指折りにアクションに拘って作られており、アクションシーンの質・量に関してなら「インフィニティ・ウォー」「エンドゲーム」を除いて一番なのではないかと思う。ルッソ兄弟(インフィニティ・ウォー、エンドゲームの監督)の作った物に比べると少し重量感に欠けるが、それでも膨大な鍛錬の跡が見える洗練されたアクションプロットの数々は必見だ。

物語自体もこれまでのMCU作品と同じくアメリカ人を主演に据えたハリウッド映画のノリで進んでいくが、スピーディーでポップな展開に芯を食ったギャグが散りばめられた作りはシンプルに楽しめる。監督は決して有名ではなく大作映画も今回が初めてだったようだが大したものである。センスあるストーリー展開に上質なアクションシーンが高頻度で挿入された本作は、アクション映画好きの人であれば誰でも時間を忘れて鑑賞する事が出来るだろう。

主役のシャン・チーは質実剛健でキャプテン・アメリカのように強いが誠実で優しく、親しみ易い性格をしており、リーダー不在のアベンジャーズの次期リーダーを務めてもおかしくないような人柄だがそれはどうやら実現しなさそうだ、というか出来ればやめて欲しい。いちヒーローとしては申し分のないキャラクターなのだが如何せん華がないのだ。多様性を重んじる今のハリウッドでどんな人物が重要なポストを与えられてももう驚かないが、せめてヒーローチームのリーダーは一目でそれと分かる華のあるイケメンにして欲しい。主演のシム・リウに合わせたせいか本作はメインキャストを演じる役者が皆今一つパッとせず、ヒロインであるケイティはまだしも主人公の妹で美人設定であろうシュー・シャーリンまで微妙なのは少々残念だ。アメリカの映画やドラマは東アジア系のキャラに美形を採用したがらない傾向があるようだが、本作もそれが適応された形なのかも知れない。

「シャン・チー/テン・リングスの伝説」はこれまでのMCUとは毛色が違うもののセンスある監督によって仕上げられた上質なアクションエンターテイメントだ。MCUはインフィニティ・ウォーとエンドゲームしか観ていないようなライトな層にもこれまでのMCUとの落差で敬遠しているコアなファンどちらにもお勧め出来る。全てのMCUを追って来たコアなファンへのご褒美もしっかりと用意されているので、鑑賞の際にはお見逃しのないように。



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