【 ボバ・フェット/The Book of Boba Fett 】55点


※ネタバレを含みます


【 本文の要約 】
 ストーリー部分はお粗末だがCGやVFXを駆使したアクションシーンは超大作映画並。アクション好き・スターウォーズ好きなら観て損はない出来。

 
【 ハゲてて渋くて棒で戦うお前はだれ 】
 サブスク系の映像配信サイトは本当によく儲かっているようだ。Netflixのオリジナル作品は以前から高品質な物が多い事で有名だったが、近年のディズニープラスも凄い。アベンジャーズ系のドラマ作品はCGや特殊効果面で本家である映画シリーズに勝るとも劣らない。本作「ボバ・フェット」はそれらに輪をかけて多額の製作費がかけられたであろう超高品質なドラマシリーズである。

大作アクション映画並の見せ場は全7エピソードの各所に配置してありそれなりに満足感は得られるのだが、ストーリー部分は無理に捻り出した感満載でなかなかに残念な出来だ。特に主人公ボバ・フェットの人格やキャラクターデザインに関しては本当に何も思いつかなかったようで、別の海外ドラマの無骨なおじさんキャラをそのままコピペしたかのような有様だ。無骨で圧倒的な戦闘力を誇るが、良心的で器が広く、人との触れあいを通して悟りを開いていくこのおっさんと幼い頃映画の中で見た渋く怪しい殺し屋が、私の中ではどうしても重ならない。

思うにボバ・フェットは主人公には据えない方がいいキャラなのだ。脇に置いてたまに見切れるからこそ目を引く、映えるキャラというのはいるものだ。その昔「奈良シカマル」というキャラがとにかくモテた時代があったが、彼を主人公にしたスピンオフ作品はきっと地味で盛り上がりに欠け、ネタもすぐ尽きるだろう。本作はそれと同じような物で、前に出ないのに何故か目を引く、脇で暗躍するからこそ唆るキャラを無理矢理主人公に据えようとした結果、本来のイメージとは大きく異なるキャラクターが出来上がってしまった印象だ。

全7エピソードのうち4話目まで、主人公は我々の愛したあの渋い鎧や兜をほとんど身に付けないまま出演しており、見た目も違うし性格も本来のボバ・フェットのイメージとは噛み合わない、最早誰なのかよくわからないおっさんのSFアクションドラマが繰り広げられる事になる。知らないハゲのおっさんと知らない部族の交流を延々と観せる序盤の展開はスター・ウォーズ感すら薄く、見応えのあるアクションシーンが無ければ視聴の放棄を考えるレベルだ。

エピソード5以降、ボバ・フェットは主人公でありながら大幅に出演頻度を下げられ、代わりに関連作品「マンダロリアン」の主人公ディン・ジャリンの独壇場になる。ドラマ「ボバ・フェット」は「マンダロリアン」の拡張作品というのが実際のようだが、取って付けたような教義を重んじるマンダロリアン達には失笑を禁じ得ない。「マンダロリアン」というドラマこそボバ・フェットのカルト的な人気から生まれたシリーズだと思うのだが、ドラマ化に当たって設定やキャラクターを苦し紛れに拡張した感が拭えず、「一生ヘルメットを脱いではいけない」という教義は最早ギャグの域だ。彼らはきっと食事の際は箸でヘルメットの隙間から食べ物を差し込み、入浴や着替えの際は素っ裸にヘルメットだけ被った姿になるのだろう。可愛らしい殺し屋集団もいたものである。

マンダロリアンとボバ・フェットが合流してからの最終局面は本当に豪華なアクションシーンの連続だ。地味な隠し武器を駆使して戦う主人公のアクションは少々パッとしないが、カイジュウが巨大ロボをグチャグチャに砕く件は全男の子大歓喜の胸熱シークエンスだ。これだけでもサブスクの元を取れた気になれる。

若いルークやチビヨーダ、メカニックのおばちゃんにサイボーグのティーンエイジャー達等脇に質のいいキャラがそこそこ揃っており、彼らの出演シーンと大作映画並の豪華なアクションシーンを足せば全7エピソードを通しで視聴する価値は十分にあるだろう。主人公もボバ・フェットのイメージとは食い違うが一人のおっさん属性のキャラクターとして見れば悪くはない。ストーリーも視聴の邪魔になる程酷くはないので醍醐味であるアクションシーンは素直に楽しめる。ディズニープラスも大した所まで来たものである。

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