【 モードック/Marvel’s M.O.D.O.K. 】30点 – 批評 –



※ネタバレを含みます

【 ◆◆長所・視聴するメリット◆◆ 】
【①アメコミ×ストップモーションアニメという意外性】
【➁ストップモーションアニメとして高品質】
【③クレイパペットの造型が可愛らしくていい。アメコミキャラと親和性あり】
【④ファミリー系の人間ドラマとして質がいい】

【 ◆◆短所・問題点◆◆ 】
【①ギャグプロットがことごとく面白くない】
【➁奇をてらい過ぎてとっつき難いストーリー】


【 本文の要約 】
 企画は面白いしストップモーションアニメとしては秀逸だがストーリーは面白みに欠け、ギャグはとにかく笑えない。相当マニアックな人向けのアニメ作品。


【 本文 】
 「モードック(2021)」はディズニープラスで視聴出来るマーベル系列のアニメ作品。マーベルが題材になったアニメやビデオゲームを触った事のある人なら名前は分からなくても見た目は覚えている、そのくらいの位置づけのヴィラン「モードック」が単身で主人公を務める攻めた作品。サムネを見ればギャグアニメである事までは想像がつくが、クレイパペットを使ったストップモーションアニメの形をとっている事は意外過ぎる。主人公のチョイス×ストップモーションで二重に攻めている、チャレンジングな企画だ。

カラフルなクレイパペットという形式はモードックのフィギュアっぽいフォルムと非常によくマッチしていて、CGと組み合わせてよく動きよく喋るアニメーションはとても高品質。さすが乗りに乗っているマーベル、こんなマイナー作品でもよく金がかけられている。粘土で作られた様々な造形のアメコミキャラ達はとても可愛らしく温かみがあり、見ているだけで楽しい。特にモードックと同じ体系で思春期特有のつんけんした態度を披露する長女メリッサは少々哀れでもあり、可愛らしい。調べても一向に情報が見つからないがモードックの日本語版声優はアニメ版こち亀でお馴染みラサール石井氏だろうか。だとすればおじさん世代の郷愁を誘う人選である。

各話30分の尺の中でとにかくボケ続けるスタイルのギャグアニメだが、それらがとにかく面白くない。馬力の弱いボケを常に早口でまくし立てるような展開なので何を言っているのか聞き取れず、巻き戻してちゃんと聞いてもやっぱり何を言っているのかよく分からない、そんな微妙なシーンの連続だ。日本とアメリカの文化の違いか、と思いそうになるが同じスタイルの「シンプソンズ」はちゃんと笑えるのでこれは脚本家のセンスがないせいだろう。粘土で作られたキャラ達の可愛らしさにほだされ、好意的な気持ちで前向きに視聴していたら1話につき2、3度は笑える、そんな所だろうか。

脚本家のセンスのズレはメインのストーリー部分にも表れていて、企画同様攻めた筋書きは考え過ぎで込み入っている上に奇をてらい過ぎており非常にとっつき辛い。ギャグのニュアンスを込めて度々残酷な展開や凄惨なオチを入れ込んでくるが常々どっちの意味でも面白くなく、シーズン最後の胸クソ展開は誰も喜ばないだろう。企画は面白いが普通に考えるとこのシリーズに今後は無い。

ギャグはシーズン通してずっと面白くないが、モードックの中年男性特有の人間ドラマ、妻や子供達との家族のストーリーはなかなかに秀逸。仕事場でいい所のない不細工なおじさんが妻に見放され、子供達に反抗されつつも現状回復に努めていく、そんな大人の男の孤独な闘いをギャグテイストでありながらもリアルに、哀愁たっぷりに表現する手腕はなかなかだ。このシリーズの脚本家はギャグではなく人間ドラマの創作の方に才能があるのだろう。

マーベル作品「モードック」は相当なマーベル好きかストップモーションアニメに興味を持つ通な人にしかオススメ出来ない奇作だ。視聴の際は「スポンジ・ボブ」の外れ回を観る時ぐらいの心構えで臨むのがいいだろう。

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