【 不定期VTuberレビュー vol.3 】にじライバーという生き物達(個人勢V視聴者向け記事).Ⅲ:関西系(非東京系)にじライバー③【06.健屋花那:31点】前編

VTuber



【 YouTubeチャンネル:健屋花那【にじさんじ】KanaSukoya
【 所属:にじさんじ 】
【 活動開始:2019年9月21日 】
【 チャンネル登録者数:44.6万人 】
【 直近再生回数(一ヶ月平均):3.13万回/day 】

【①外連味のあるナースに特徴的なロリボイスがマッチした秀逸なデザイン】
【➁ギャップが幾重にも積み重なった多層的なキャラクター】
【③いかなる発声でも可愛い声が出る。悲鳴が秀逸】
【④徹底してお行儀がいい。リスナーに対して決して失礼を働かない】
【⑤努力家。寝る以外の時間を本業か配信に費やしている】
【⑥V界トップクラスの知性派。一般社会の中でも高学歴のエリート組】

【①お笑いにもバラエティにも疎い。トークとノリが面白くない】
【➁サブカル畑の出役としての基本が分かっていない。立ち居振る舞いが場違い】
【③コメントとプロレスが出来ない】
【④ほとんどのにじライバーと噛み合っていない。コラボでいい効果を生めない】
【⑤デビュー時期が絶妙に悪い。スペックで勝つには遅く、能力で勝つには早過ぎる】


異色の高学歴Vタレント

✔ 可愛らしい声優声に美麗なモデルというど真ん中の正統派ライバーを生み出し続けるホロライブに対し、バラエティーに富んだ多種多様なライバーを量産しているのがにじさんじだ。2019年以降のにじライバーには浮世離れした金持ち体育会系出身大阪のおばちゃん等ありとあらゆるキャラクターが揃っている。

健屋花那はカテゴライズするなら「高学歴」だ。ナースの3Dモデルを着て「本職は医療従事者」だと言うのでそのまま看護師なのだと思ってしまうが、豊富過ぎる医学系の知識や学生時代の勉学における優秀さを鑑みるとナースではなくドクターの可能性がある。少なくとも学歴が必要なタイプの医療職に就いているのは確かだろう。

この記事では高学歴の医療従事者でありながらにじライバーとしても活動するという異色のVタレント健屋花那を取り上げていきたい。

豪華過ぎる基本スペック

2019年以降デビューの、後発組のにじライバーに与えられたキャラ設定は極めて雑多だ。月ノ剣持リゼのような分かり易いキャラクター案を先に消費してしまったにじさんじ運営は今ネタ切れの状態で苦しい大喜利に挑んでいるような状態で、「人々が司会を求めたとき、どこからともなく現れるエルフの司会者」などはその産物の最たる例だろう。今をときめくにじさんじと言えどここまで訳の分からないキャラを割り振られたら辞退する面接通過者もそこそこに出ていそうだ。

健屋は2019年後期という遅めのデビューでありながらナースという比較的分かり易いキャラを与えられている。映画「キル・ビル」やハーレイ・クインを彷彿とさせるような外連味を孕んだ美しいデザインは秀逸で、中の人のクセが強くてインパクトは大だがかなり可愛いロリ系の声優声とよくマッチしている。よく聞くとでびでび・でびるとほぼ同じ声だが被っているモデルが違うだけでここまで可愛く聞こえてしまうのは男の性だろうか。

初見では幼く癖の強い話し方からおバカ系のキャラでいい加減な私生活を送っている崩れた若者なのかと思ってしまうが、実は高学歴で普段はお堅い職に就くエリート社会人なのは良過ぎるギャップだ。しばらく配信を観ているとかなりちゃんとした育ちのまともな若者である事が伝わって来るが、いいタイミングで片付けが苦手で部屋が汚いという外しを加えてくるのがまたいい。良質なキャラデザにマッチした魅力的な声、加えてギャップを幾重にも重ねる奥行きのあるキャラクターを併せ持つ健屋はパッと見で分かる素質ありのライバーだ。遅出のライバーとしてこれ以上の基本スペックは望めないと言える程にいい。

畑違いの代償

2019年以降に輩出されたにじライバーの中で実況等のサブカル畑や、声優系出身でない者は皆苦戦を強いられている。例えばにじライバー最後の成功者であるさんばかのリゼやアンジュはどちらもゲーム実況出身で、若い頃は真っ当に勉学に励んで進学校に通っていた経歴がありながらも20歳周辺の多感な時期を漫画・アニメ・ゲーム・ニコニコ動画等のサブカルチャーに首まで浸かった状態で過ごしている。そこで培われたサブカル分野のネタやノリを現在の活動に活かす事で二人は成功しており、それに加えて関西系の笑いのスキルまで併せ持つアンジュの配信は高品質極まり最近ではチャンネル登録者数でリゼを追い越している程だ。

「大阪のおばちゃんキャラのライバーって面白いかも」というコンセプトで生み出された早瀬はステータスが現実社会でのコミュニケーション能力に多めに振られており、笑いやバラエティに関するセンスが皆無だ。オタク系の知識は豊富でもサブカル系タレントとして好まれるトークがどんな物なのか根本的に理解しておらず、Vタレントとして成功のしようがない。



浮世離れした金持ちという変わった属性を持つイブラヒムはタレントとしてはどうしようもない。一般人の中でもかなりつまらない部類の人間で、モデルは詐欺だしあらゆるセンスがゼロどころかマイナスで、そこそこ見て貰えているのも何も無さ過ぎるのが逆に新しいからだろう。葛葉と良好な関係が築けていなかったらやって行き様のなかった存在だ。

そして青春時代を勉学に捧げ、真っ当な学生時代を送った健屋はサブカル系の文化や笑いを吸収する機会を逃しており、早瀬と同様サブカル系のタレントとしての立ち回りが全く分かっていない。早瀬のようにダメな方向にアクセルを踏み込んでいる訳ではないが、何の企画に臨んでいても一挙手一投足が薄味でズレている。地頭が良くてセンスもそこそこにはあるので見切り発車の素人ボケをフルスイングでかましたりコラボ相手に明確な迷惑をかけるような派手な事故は起こさないのだが、例えばある日の配信の頭で「最近カルピスソーダ自作するのハマってる。作るの面倒だから欲しい時に作ってくれるサービスないかな」と話した時に「なんかダメそうだなこいつ」と臭う感じの、跳ね所のないタイプのつまらなさだ。

「一ヶ月に一度は理由もなく大泣きする夜がある」とか「医療系はちょっと勉強が出来るからって軽い気持ちで来ない方がいい」とかも自信満々で喋っているがどれもVライバーが配信でする話としては微妙だし、話している時のアツくてマジな温度感が寒々しくて痛々しい。現環境のVライバーの誰からもズレてかけ離れたトークスタイルは健屋の中にその方面の知識とセンスが培われていない事と、自分が身を置いている業界を研究していない事を表している。

言ってみればアイドルか読モでも志望している素人女子大生のSHOWROOM配信に近いようなテイストで、そんな普通の女子の薄味な配信はV界隈では求められない。月ノ、剣持、リゼ、アンジュ、フレン等どの成功例を挙げても誰もそんな立ち回りはしていない。

Crossickについて

健屋と白雪 巴の百合ユニットCrossickの活動は本当に面白くなかった。百合絡みというのはV界の各所で非常に重宝されている鉄板デッキだが、笑いやバラエティの意味でこれ程見所のない百合コンビも珍しい。

白雪というのはVタレントとしての素養を声以外本当に何も持ち合わせていない人で、やはりVタレの百合絡みについて何も分かっていない健屋と一緒にしても二人して「綺麗なお姉さんのタチと無邪気な妹系のネコ」を演じる以上何をしていいのか分かっていない印象だった。

Vタレの百合絡みというのはキャラと役割を作ってからが勝負だ。反射的に独占欲が出たり平時ウザがっている方が急にデレたり、他Vと相手を取り合ったりそういう手練手管が必要になってくる。Crossickのように「もう、可愛いんだから」「くすぐっちゃお~っと」「浮気者!」みたいな取って付けたセリフを投げ合うだけでは真に迫る物がないし、伸びが無くてエンタメとして面白くない。これは健屋が度々持ち出すコアな特殊性癖や同人誌系のネタにしても同じ事だ。

同じくそういった話題を持ち出す鈴鹿が健屋と違ってあんなにも面白いのは、そのネタを引き合いに出している時の彼女からリアルな狂気と倒錯した感情、それに伴う異常なエピソードが紡ぎ出されるからで、それこそがニコ動を源流とするようなサブカル文化における出役としての正しい立ち回りなのだ。

ガワの良さが功を奏してCrossickは一時期恋愛対象が女性な女性リスナーの憧れだったりランドマークのようにはなっていたようだが、それでも健屋の休止期間でいとも簡単に関係が解消されてしまったのは初めから二人の人としての反りが全く合っていなかったせいだろう。関係解消に関して二人はファンが互いの配信でユニットや相手の名前を出し過ぎるせいだとかCrossickというユニット自体が自分達の手に負えなくなったせいだとか回りくどい説明をしていたがどちらの言っている事も普通に嘘だ。

にじさんじで言うなら例えば戌亥とフレンのカップリングがリスナー達に大ウケして、この二人が頻繁にコラボを要求されて重荷に感じる事があるだろうか。別に剣持・伏見でもさくゆいでも、ホロライブの猫又戌神かなココぽんぽこもちひよこでもいいのだが本当に馬が合う者同士が二人でいる事を求められて嫌気を覚える事などあり得るだろうか。

Crossickは打算と保身のユニットだったのだ。2019年後期以降の遅出のライバー、大手に属せたはいいものの事務所内に頼れる先輩を作る事も出来ず、たまたま一緒にいたらお互いの為になるかなと思う相手を見つけたから弦んでいただけの事だ。二人のコラボ配信のアーカイブを見てもずっと芝居がかっているしどちらも態度に緩みがなく、気を許せる者同士でいる時特有のリラックスした雰囲気も感じられない。健屋が明確に「絡み辛ぇなコイツ」と口をつぐんでいるシーンもあり、そういう根本的な相性の悪さも手伝ってCrossickは面白くなかったのだ。

健屋の資格試験の為の活動休止をきっかけに二人は疎遠になったという体だが、たった一人で挑む資格試験の時こそ癒しと安心感を求めて仲の良い相手とは連絡をとるものだろう。健屋がそれを白雪に望まなかったという事は彼女にとって白雪が仕事以外で絡みたい相手ではなかったという事だし、活動休止を利用して面倒臭くなっていた白雪との関係を解消したいという思いもあったと見るのが妥当だ。



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