【 不定期VTuberレビュー vol.4 】①「ぽんぽこはPCを捨てやがれ」:Ⅳ(include:樋口楓、文野環

VTuber



雑なキャスティング

✔ 前回の記事では全くタイプの違うVTuber同士を引き合わせてデメリットを生み出してしまうぽんぽこの雑な采配について触れたが、「ぽんぽこ24 vol.6」のキャスティングについてもそれは表れている。

例えば三人のゲスト+ぽんぽこでそれぞれが過去に犯した「やらかしエピソード」を出し合うやらかし大百科についてだが、まず文野環を平場で複数人のゲストに混ぜて使うなどどうかしている。世界でたった一人の「脱〇配信」を行ったVタレント、というエピソードに代表されるように文野は制御不能の爆弾で、独走させて周りの人間全員でそれに振り回されるという形以外に使い道などない。以前文野をゲストに呼んだ際にはこれを踏襲出来ていたのでそのコーナーは成功していたが、今回文野は関係性のない三人の中に混ぜられていて、その持ち味は完全に死んでいる。下手くそに共演者の輪に入ろうとする様子は見ていて辛く、「文野が可哀想」という彼女のブランディング的には営業妨害に相当する感情が湧いてしまう。

剣持と同じくにじさんじ二期生としてデビューしたものの同期とほぼ喋れないまま長い時間を過ごした、というエピソードがあるように文野はガチの社会不適合者で、いついかなる時も自分のペースでしか動けない。二期生とのエピソードなど知らなくても文野を見ていれば平場で知らない人と混ぜて上手く絡めるタイプでない事は容易に想像出来る。

また文野の他に招いたゲストは多くのVTuber視聴者にとって馴染みのない二人だ。どちらも作家だがその作品は誰でも知っていると言えるほど有名な訳ではなく、その作り手となるとさらに引きは弱い。ゲスト出演と言ってもDiscordで通話しているだけなのでまずどちらが喋っているのかが分かり難いしどちらのエピソードだとしても興味が湧かないし、知らないおじさん二人が「私以前こんな事やらかしちゃいましてね」と語る形式は正直キツい。こういうのは文野環に対する夕陽リリ、ぽんぽこに対するピーナッツくんみたいな被害者兼飼い主みたいなのが付き添ってそちらが糾弾していくのが適当だろう。

このコーナーはシステムも雑ならキャスティングも雑だ。ダメな時のぽんぽこの仕事だなぁという感じで、可哀想に!に雑に発注して製作した「DON PA PPO」が思い出される。コーナーが面白くなくなるだけならまだいいが「やらかしと言えば」の脊髄反射で数合わせのように投入しては文野に対してでもさすがに失礼だろう。最近ではすっかり埋もれて再生回数も回らなくなってきている上にこれでは踏んだり蹴ったりだ。

毎年のぽんぽこ24でやたらに知らない人がゲストで連発されるのは、多分ぽんぽこが日々の情報集めをTwitterで行っているせいだろう。言うまでもなくVTuberはVTuberの中から重点的に、シナジーと将来性を意識した上でキャスティングを行うべきだ。全く違う業界から実写のおじさんを呼ぶのはスパイス程度には面白いかも知れないがここまで連発されるとさすがに訳が分からない。

実写、オワコンVTuber、何かの作家、実写、知らないVTuber、興味ない分野のYouTuber、実写、知らないVTuber、何かの作家、みたいなキャスティングで盛り上がる訳が無い。VTuberの24時間企画を観に来ているのはVタレント好きの視聴者に決まっているのだから八割方をVタレントで埋めて、さらにそれぞれを適材適所に割り振るキャスティングにも尽力しなければ番組自体の質が大きく低下してしまう。



秀逸なキャスティング

一方で「ピーナッツくん、ねる」のように秀逸な出来のコーナーもある。広く「ASMRと言えば」で知られている周防をフリとして出し、最高にヤバくて最高に面白い「魔」ASMRを聴かせてくれるに違いない樋口への期待感を高め、特にぽこピー界隈をよく見ている視聴者にとって最高のゲストであるキクノジョーをシークレットで投入してダメ押し、という流れは完璧だ。

これぞ模範的なキャスティングと言える。企画を構成する側と視聴者両方共がよく知っている人物を、その長所を十二分に発揮できる位置へと配置する事が出来ていればこんなにもシンプルでベタな構成でも大いに盛り上がるのだ。そして例年に続き今年も1000点満点の働きを見せた樋口を見ていると、「適材適所が肝」というのは何も番組のキャスティングに限った話ではないなと考えさせられる。


一人で戦った女、樋口楓

「ぽんぽこ24」でのみ樋口楓を見ている視聴者は「芸達者で面白過ぎる」という意味で樋口を「ヤバい人」と捉えていると思うが、樋口は所属しているにじさんじの中でも「ヤバい人」という位置付けだ。しかしそれは「怒らせたら反社のようなキレ方をする恐い人」という意味で、前者の「ヤバい」とは全く違う。樋口は事務所内ではちょっとした刺激で怒声を上げて暴れるようなキレキャラで通っているのだ。

企画のサムネでシルエットが公開された時点で高まった期待をはるかに超えるASMRを披露し、ガチ恋ぽんぽこ系の企画に呼ばれればぶりっ子芸で本家のガチ恋さんを食い、教養のないおバカとしても満点、声真似や雑談も非常に上手い多芸な樋口がにじさんじでは何故一面的で芸の無い「キレキャラ」などを振り回しているのかと言えば、それは樋口の高次元な上に関西色である笑いを受け止めて処理出来るにじライバーが事務所内に一人もいないからだ。

樋口は2018年初頭デビューの、現環境における最古参と言ってもいいライバーで、にじさんじの「一期生」に当たる。同期デビューで同じユニットでもあり、関係性もある月ノは一方的にボケると強いが受けの能力は弱い。今回のぽんぽこ24でピーナッツくんが樋口にやったようにボケを引き立てるように処理したりボケ色のつっ込みで返したり、援護射撃を上手くやれているのは一度も見た事が無い。また月ノは東京出身で、関西ローカルとも言えるようなシュールな笑いが分からない。今回樋口はASMRを何故か終始うっとりとしたおっさんのような声色でやっていたが、この雰囲気を脚色してニュアンスで笑わせるタイプの、明確な答えが無い笑いは月ノには理解不能だろう。ピーナッツくんやぽんぽこは完全に理解して的確に処理していたが彼らだって何故樋口のあれが面白いのか明確に分かっている訳ではない。関西にはああいった笑いが蔓延していて、それを肌で感じて育ったから分かるようになった、というのが実際の所だ。

一期生の僅か一カ月後にデビューした二期生には剣持というバラエティ系のライバーがいるが彼も月ノと同様の理屈で樋口の本領を受け切れない。その下には本間笹木椎名と関西出身のライバーが続くがこの辺は笑いとかではない。関西出身の人間になら分かるかも知れないが彼女らは関西ではごく一般のJDに近いようなキャラクターだ。バカだとか感情的だとかクズだとかそういう人格の粗に根差したキャラの面白さは別として、笑いのスキルのような物はほとんどない。だからこそ東京系のにじライバー達と齟齬が生まれず却って上手く付き合えるという面もあったりするのだが、樋口の全力を受け止める事はやはり無理なのだ。

その下は花畑舞元ジョー等が続くがこの辺は地獄だろう。ボケもツッコミも「とりあえずやってみてるだけ」な東京の面白くないおじさん達にも迎合していかなければならない苦しみは想像に余りある。にじさんじはここから上の世代と下の世代で断裂しているような所があるので樋口は主にここで挙げた者達が受け取れるような立ち回りに終始する他なく、それが今定着している「キレキャラ」だったのだ。

2019年初頭、樋口が全力でボケても適切に処理が出来そうなアンジュ戌亥がやっと加入して来るが、この頃には「樋口は恐い人」が定着してしまっていて、この二人もそれ以降の者も皆そのマニュアルに従っている。これは「にじライバー全員で樋口にキレキャラを押し付けている」事と同義で、いくら実力のある樋口でもこれはひっくり返し様がない。

「音割れする程の怒声」も「下の者に対する威圧・マウント」も「沸点の異常な低さ」も全部東京の笑いで、関西では面白い人間も面白くない人間もこんな事はやらない。デビュー以来にじさんじ内で色々やってまともに受け取って貰えたのがこれだけだったのだろう。樋口はなかなか本音を出さない人なので実際どう考えているのかは分からないが、2018年のデビュー以降仲間の誰にも理解されないままずっとこの孤独な闘いを続けてきた事を思うとさすがに胸が痛い。たまにゲーム配信でオラオラ言ってるのを見るがお前はそうじゃないだろうの一言だ。

やたらめったら狂ったようにキレるキャラなどその場では面白がられても視聴者に本当の意味で愛される訳も無く、今ではすっかり落ちぶれてしまっていて、「周りの要望に合わせて自分を抑え続けた挙句飽きられ見捨てられた」という活動遍歴は考えれば考える程悲惨だ。配信の中で相当やさぐれた、投げやりな態度をとるようになってきているがこれはさすがに仕方がない。



人材だって適材適所

樋口が本領を発揮して輝けるのは一年に一度、ぽんぽこ24に呼ばれた時のみだ。業界で樋口という逸材の相手を出来るのがぽこピーだけなのだから、樋口の事はぽこピーが引き取るのが一番いい。単体で何の配信をやってもせいぜい3万再生程が関の山で、時には1万を切る事もある。にじさんじにとって樋口は最早どうでもいいライバーだろうし、樋口からしてもにじさんじに思い残す事などないだろう。数字の面で見れば早瀬健屋と変わらないが彼女らと違って適所に置いて正しい相手と絡ませれば何の企画を振っても業界トップの実力が発揮出来るのが樋口だ。「ご自由に」という張り紙の付いているPS5がにじさんじの裏に捨ててあるような状態なので本格的に使い物にならなくなる前にさっさと行って取って来た方がいい。

何事も適材適所だ。上手くいっていない事を環境のせいにするのは最低と相場は決まっているが中には樋口のように本当に環境のせいなケースもある。昔から関係性のあった仲の良い相手なのだから人知れず苦しんでる事にぐらい気付いてやれよぽんぽこ、といった感じだ。



タイトルとURLをコピーしました