【 JUNK HEAD 】21点 – 批評 –

映画



※ネタバレを含みます


【 ◆◆長所・視聴するメリット◆◆ 】
【①H・R・ギーガー(エイリアンシリーズ)や弐瓶勉の流れを汲む、独創的な世界観】
【➁ハイクオリティなストップモーションアニメ】

【 ◆◆短所・問題点◆◆ 】
【①ストーリーがスカスカ。本筋に肉付けされた部分の脚本が低レベル過ぎる】
【➁全体の構成やセリフ、ギャグやアクションプロットに全くセンスが感じられない】


【 本文の要約 】
 こだわりのストップモーションアニメと独創的な世界観は「個人で作ったにしては」高品質だが脚本があまりに低レベルで、総合的に見ると映画としてギリギリ成立しているか否かというレベルの駄作。狂気的かつスチームパンクなデザイン性やストップモーションアニメというジャンル自体に興味を持てる人以外には全くオススメ出来ない。


【 本文 】
 会社員の一般男性がたった一人で製作を開始し、10年以上の歳月を経て長編を公開するに至った異色作。映画「エイリアンシリーズ」でクリーチャーデザインを担当したH・R・ギーガーや漫画家弐瓶勉の流れを汲むようなデザインのパペットを使用し、荒廃した近未来を舞台にストップモーションアニメの形式で展開されていく。

その昔ニコニコ動画で本作のパイロット版を観た時は個人で製作したとは思えないクオリティに強く驚かされたものだ。当時はYouTubeというプラットフォームが軌道に乗る前で「動画配信で食っていく」という発想自体が世間になく、プロの手掛けた動画がまだネット上に少なかったせいもあるだろう。本作は10年近く前にネット上で公開されたパイロット版に、その倍程尺のある続編を付け足した長編・完結版となっている。


セットやキャラクターの独創的なデザインや強く拘って撮影された被写体の動きは「個人で作った」という前置きがあればやはり驚異的だが、正直それだけの作品である。ストップモーションアニメとしてのクオリティは高くても物語としてはあまりにお粗末で、ギュッと纏めれば30分でも長過ぎる程にスカスカなストーリーだ。「どこかへ向かう → 一面コンクリの地下通路みたいな道を延々歩く → 迷うかバケモノに襲われる → ワーキャー言いながら走り回る → 捕まる → 最下層まで落ちる」というテンプレを何回も繰り返してストーリーとするのはいくら個人勢と言えど程度が低すぎる。その辺の美大生でも連れて来た方がよほどマシな話を作るだろう。

シリアスでシックな世界を舞台に何度も血が流れるバイオレンスな作品だが基本はギャグベースで進められていく。そしてそのギャグが逐一面白くない。キャラ同士の何気ないセリフの一つ一つ、会話の間やストーリーを展開させる方向性に関しても全部ズレていて全くセンスがない。創作物のストーリー部分の機微を理解出来ない人がそれらしいシーンを闇雲に詰め込んでいる様子は、監督が正にそういうタイプな「えんとつ町のプペル」に通ずる物がある。こんな駄作に10年もの歳月を費やすのはせっかく授かったクリエイターとしての人生を自ら削ってドブに捨てている事に他ならない。


物語上何ら重要性のないモブのようなキャラクターの造形にまで細かく拘り、大事なシーンではなく画になるシーンを重点的にヌルヌル動かして撮影したのは監督がストーリーの完成度を上げる事ではなくストップモーションアニメとして映える映像を作る事に意欲を持っている事の表れで、本作を製作した堀監督は本質的に映画監督や脚本家ではなく、特技監督で映像作家なのだ。そんな人が長編映画の脚本を担当する事自体がおかしい。庵野秀明監督とタッグを組んで「シン・ゴジラ(2016)」という名作を生み出した日本有数の特技監督樋口真嗣が単体で映画を作るとどんな有様になるか知らぬ訳ではあるまい。

数人のスタッフを雇っている時点で「一人で」という前置きは既に崩れているのだからまともな脚本を作れる人を雇い入れるとか自分の作風と噛み合いそうな原作を描いている人をネット上で見つけて来るとかやりようはいくらでもある。「個人」で「独学」である事を映画としての完成度を突き詰めない事の言い訳にしているような節があるが、それは金を受け取って物を作る人の姿勢としては最低だ。


話を組む事より「映像としてのストップモーションアニメ」に拘りたいのなら、YouTubeに本気で作った5分以下のショートアニメや1分以下の「shorts動画」を高頻度で上げ続けるのが適切な活動方針だろう。現在YouTubeはゴリゴリのレッドオーシャンだがどのジャンルの新規参入者でもプロ並の才能を持つ人はちゃんと拡散されて多額の収益を得ている。「ショートアニメ」というジャンルは飽和状態にあるが「ストップモーションアニメ」はまだ空いている状態で、再生回数の多い作品でも微妙な出来の物が多い。「個人クリエイターならではの資金難」「誰にも左右されずに好きな物を作りたい」「脚本を組む能力が無い」という三つの問題を同時にクリア出来るのはYouTubeでの活動をおいて他にない。

監督は既に50代に突入していて、クリエイターとしての残り時間が少ない事にもっと危機感を覚えるべきだ。あと20年もしないうちに高齢者になってしまう人が本作のような微妙な作品一つに10年近い年月を割いてしまうのは呑気でボケているとしか言いようがない。パイロット版の公開から長編の完成までに時間をかけ過ぎたせいで当時は斬新だった作風もありふれた物になり、世に出ている同ジャンルの作品の質が上がったせいで本作の質は相対的に下がっている。作品のサイズを小さめに区切ってかける時間は長くても数カ月、断続的に世に放って反応を確かめて次作では問題点を解決して、という活動にシフトしなければまともな作品を作るより先に監督の寿命が尽きてしまう。

微妙に時代遅れな世界観と「個人で作ったにしては」高品質なストップモーションアニメ、「えんとつ町のプペル」を想起させるセンスのない脚本で出来ている本作は完全に駄作の部類だ。監督の物作りにかける情熱と拘りを感じ取れる以外に視聴するメリットはないだろう。

タイトルとURLをコピーしました