【 THE BATMAN -ザ・バットマン- 】28点 – 批評 –

映画


【 ♦ 鑑賞時にチェックしたいポイント ♦ 】
【①主人公は映画「トワイライト」シリーズでヒロインの彼氏役を務めた吸血鬼君。色白で線が細く、闇深いバットマンに注目。】
【➁敵・味方キャラクターの人種と性別を確認しよう。アメリカ映画が今どんな人々を賛美する傾向にあるのかが分かる。】
【③メインヴィラン(悪役のラスボス)が誕生した経緯に注目し、ヒーローという存在が生み出す副産物とは何なのか考えてみよう。】


※以後ネタバレを含みます※


【 ◆◆長所◆◆ 】
【①リアル志向でキレのあるアクション】
【➁映画各所の山場がアクションシークエンスを軸によく作り込まれており、見応え十分】

【 ◆◆短所・問題点◆◆ 】
【①全体的に暗く、重々しい割に内容は薄っぺらい】
【➁大袈裟な演技やBGMと共にダラダラと進行するつまらないストーリー】
【③どうでもいいプロットに重点を置くナンセンスな脚本】
【④ミステリー作品だが謎解き部分がつまらない】


【 本文の要約 】
 今回のバットマンはアクション要素ありのミステリー映画。ただし謎解き部分はつまらない。シリーズのどうでもいい部分に焦点を当てて作られた脚本には引きがなく、敵も味方も地味なキャラばかりで全く盛り上がらない。アクションシーンはかなり質がいいが、全体的に面白くない上に上映時間が無駄に長いので映画館での鑑賞は全くオススメできない。


【 本文 】
 「THE BATMAN-ザ・バットマン-」は映画「トワイライト」シリーズでヒロインの彼氏役を務めたロバート・パティンソンを主演に据えたベーシックなバットマン映画。他のバットマン映画ならサラっと流す主人公の父トーマス・ウェインの死にまつわる謎を追い、ゴッサムに内在する悪しき遺産と戦うストーリー。メインヴィランは謎々怪人リドラー。

もう10年程も前、「ダークナイト ライジング(2012)」の予告編が公開される前に「(ダークナイトの)次回作はリドラーを悪役にしてセブンみたいなサイコミステリー仕立てにして欲しい」という意見をネットで見かけた記憶があるのだが、本作はそれを見てか見ずか素人が独り言のつもりで書き込んだアイデアと同レベルのコンセプトで作られたようだ。全バットマン映画中最も恐ろしいヴィランヒース・ジョーカーと戦いスーパーマンと殴り合い、ヒーローチームを結成して地球の危機を救った後の作品としてはどうしても見劣りしてしまう。

メインヴィランリドラーにはポール・ダノという変態ナード君をやらせたら右に出る者はいないようなキワ者俳優を採用しているが、作中覆面で顔を隠して意気揚々とライブ配信をする彼はイキりオタクでしかなく、恐さも凄みもない。ヒーロー映画は悪役を恐く、強く魅力的にするだけでかなり盛り上がるのだが今回は序盤でその望みが絶たれる。「こんなヤバい奴にバットマンはどうやって打ち勝つんだろう」と思いを巡らせながら展開を追う楽しみを本作の監督マット・リーヴスは知らないらしい。


マット・リーヴスという人は「クローバーフィールド/HAKAISHA(2008)」や「猿の惑星: 聖戦記(2017)」を手掛けた監督なのだが、こんな微妙な作品ばかり作る人がよく本作のような大作を任せて貰えるものだと思う。さしずめ業界でのポジショニングや対人関係の構築でも上手い人なのだろう。

本作はこの10年程の、アクションシーンを多めに取り入れたバットマン映画とは違い計算高く決して尻尾を掴ませないシリアルキラーをバットマンが地道な捜査と推理で追い詰める探偵映画のような作りになっている。コスチュームに身を包んだまま制服警官達に交じって現場検証をするバットマンはシュールで何だか可愛らしいが、率直に言ってしまうと滑稽だろう。バットマンと言えばバットシグナルを灯せばどこからともなく姿を現し話が終わればその場で消える、というのがお決まりのスタイルだったが今回のバットマンはゴードン警部補に付き従って捜査に当たり、非常時には息を切らしながら地べたをバタバタと走る。あまりの垢抜けなさに邦題は「名探偵バットマン」ぐらいでよかったのではないかと思ってしまう。

本作は色んな意味でダサいのだ。前述のように鈍臭いバットマンはムササビスーツで空を飛び、ヴィランはリドラーにペンギン等といった三下、ヒロインのキャットウーマンに至ってはコロナ禍のセクシー女優みたいなマスクを被って決めポーズをかましてくる始末でどうにも反応に困る。彼女とバットマンが恋に落ちる流れも丁寧に脚本が組まれていないので頭が付いていかない。まだ出会って間もなく、正体も分からないバットマンにあまりに唐突に迫る様子は男に相当飢えている先走り系女子にしか見えない。

ストーリーの大枠はバットマンやキャットウーマンが彼らの親世代が残した負の遺産と戦うという物だが、これまでバットマン関連の作品でサラっと触れるだけで済まされてきた要素にスポットを当てて喜ぶ人などいるのだろうか。過去話の登場人物はトーマス・ウェイン、ファルコーネ、マローニ、アルフレッド等だが全員これまでのバットマンシリーズで影の薄かったキャラで、似たようなおじさん達が争ったり駆け引きしたりする話はパッとしない。バットマンやキャットウーマン、リドラーの人間ドラマや過去のトラウマと戦う葛藤を大袈裟に演出して見せようとしているが話自体がつまらない上に進行が緩慢なので退屈極まりない。大衆演劇の如くオーバーな芝居を大袈裟なBGMで盛り上げようとする寒い演出にも辟易させられる。

「THE BATMAN-ザ・バットマン-」はバットマンシリーズのつまらない部分に焦点を当て、引きのないストーリーを暗くて大袈裟な演出で盛り上げようとする残念な作品だ。映画中盤のカーチェイスやクライマックスのアクションシーンは完成度が高く見応えがあるが、それ以外は特にいい所なしで、歴代バットマン映画の中でもかなり出来の悪い部類に入る。とにかく退屈で面白くないので映画館で鑑賞すると地獄を見るだろう。レンタルや配信が開始されてから視聴する事をお勧めしたい。



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