✔ 上手のホロメンのいい所を盗む事に意欲的な天音。大空の「人間関係構築」、星街の「鋭い歌唱」、さくらみこの「脱力系ブサカワ喋り」──しかしそれは凡人が手にしたところで到底扱う事の叶わぬ「怪物装備」なのであった……
どの分野においても鉄板努力な「上手の人から盗む」だが、その意味を根本的に履き違えている天音は分かり易く「手段が目的にすり替わってしまっている」状態。「手段が目的にすり替わる」は生真面目人間が陥り易い罠で、その精神を摩耗させ時間だけをいたずらに奪っていく。同じ轍を踏んで人生を無駄にしたくない人は今の天音を見よう、そんな批評記事。
✔ 大抵のホロメンにはその言動が逸脱してしまった時、忠言して止めてくれる誰かがいる。大空がおかしな事を始めれば大神が「それどうしたの」と母の目線から気にかけるだろうし、宝鐘がおかしければ雪花辺りが「マリン先輩最近おかしい」とあてつけがましく雑談で話し、切り抜きや鳩を通して間接的な進言を行うだろう。同じ感じでさくらみこには星街がいるし、湊には紫咲や猫又がいる。
でも天音がおかしくなった時に直接的にでも、間接的にでもその旨進言して止めてくれるホロメンは一人も居ない。宝鐘や不知火、大空辺りは皆天音を気にしているが、天音が壁を作っているせいでストレートな意見など言えない。そして精神の根幹部分が繊細でややこしくて、何なら可哀想な人である事も箱全体にとっくにバレているので「あの人はああいう人として、もうそっとしておこう」というカテゴライズが成されている。簡単に言えば「優しく見捨てられている」ような状態だが、これはアンジュもにじさんじの中で同僚達から大体同じ処理のされ方をしている。天音と大きく違うのは変態で性犯罪者気質な為半ば化け物として忌避されている所だがそれ以外の大枠はほとんど変わらず、やはりアンジュと天音はよく似ている。
もし桐生が今もホロライブに残っていた場合、桐生だけは天音のややこしさとか箱の空気など関係なく「なんだお前その喋り気持ちわりぃなーww」と直で教えてくれた筈。箱内での拡散力の為にホロメンにとって同僚との友達以上の関係性はとかく重要だが、同僚とのそんな関係性はそれ以外にも「互いが互いに見守り合う」という重要な役割も担う。
腐りホロメンA~Dで挙げたホロメン達の奇行も、詰まる所天音と同じ経緯を辿って出来上がっている。姫森の事務所内での太い人間関係は大空唯一つだし、白銀に上から忠言して奇行を止めさせる事が出来る人間も事務所の中に大空唯一人だが大空は馴れ合い至上主義な為同僚に苦言を呈したりは絶対にしない。夏色は天音と同じ人との間に壁を作るタイプで忌憚のない意見を言い合えるような仕事以上の関係性の人間が事務所の中に一人も居ないし、アキロゼも大体同じ感じだ。皆が皆「ストレートに意見を言ってくれる同僚の一人も居ない」状況に負けて逸脱し、事務所における「無敵の人」の如く様子がおかしくなり、歩く…喋る実害製造機と化してしまう。
私のように頭が良くて顔も良くて、おまけに人間も出来ていて各種センスに溢れる激モテイケメンのPERFECT☆HUMANなら忌憚なき意見を聞かせてくれる仲間など必要無いのだが、ホロライブとかいうどうせ今だけの怪しげな新興企業に属してVTuberとかいうアホな職に就いているメスガキ共の中にそんな完成度の人間は一人も居ない。「忌憚なき意見を迷いなく投げてくれる程の親密な人間関係を同僚と築く」事は全てのホロメンにとって最も重要な、「努力」などではなく「職務」の一つと言っても過言ではないだろう。
✔ 直接的に忠言してくれる同僚も居ない事でどんどん様子がおかしくなっている天音だが、同僚との関係値を高めてそういう関係性を作らなければならない事を天音はもうずっと前から分かっている。だからこそ姫森や沙花叉みたいな窓際の、「自分なんかが絡みに行ってもいい」ザコとちまちま絡んだり「沙花叉×AZKi」などという無理な組み合わせを呼び出してかな建なんかを作ったりしていた訳だが、「①自分より地位や価値が低い人間にしか絡みに行ってはいけない(自分がお役に立てない人間関係は相手にとって害でしかないという思想」「➁相手から強く求めて貰えないと誰とも友達になれない(同じ思想」「③そしてそもそも人と居る状況(特に大人数と一緒に居る状況)をそこまで楽しめない」等の縛りに邪魔されて、特に今年に入ってから行った「人間関係の構築」を念頭に置いたアクションは全部空振りに終わっている。
無駄な努力を少なくとも半年以上は続けたところでこんな話をするのは空気が読めなさ過ぎるのかも知れないのだが、そもそも「ホロメンと友達にならなければならない」必要がどこにあるのだろうか。私は確かに「ホロメンは同僚と友達以上の親密な関係を築く事が必要」とか「大空とか宝鐘とかは多数のホロメンと友達以上の関係で結ばれているのに天音ときたら……」などとこのブログで散々言っているのだが、「ホロメンは同僚と友達にならなければならない」とは一言も言っていない。
そもそも論、天音が「同僚と友達になろうと必死こいている」のは何の為だったのか考えてみるとそれは「①ホロライブの中でいい調子の活動を行っていく為には同僚達と密接に結び付いて活動し、互いに拡散し合う関係を作る事が重要」「➁ホロライブには他の箱・領域より質の良いライバーが揃っていて、いい物を作る為にも息の合った協力関係を作っておく方がいい」「③中でも実力・拡散力共に秀でた【五大ホロメン】や同僚を魅力的に拡散する事に意欲的な【人間関係三大ホロメン】と繋がる事が重要」等の条件を踏まえる為だったのだが、それを叶える為に採れる選択肢は彼女達と「友達や親友になる」だけではない。普通はそうするのが一番手っ取り早いし、自然でもあるので大多数のホロメンはそうしているのだが、人格の根本がややこしい事になっていて「自然と人と友達になる」という人としての基本的な機能が破綻している天音にこの選択肢は選べないし、他の選択肢がある以上無理してこちらを採る必要も無い。
✔ 3:18~ 裏で沙花叉と雑談するうちに「相性が良いのかなと思った」エピソードを話す天音。
数カ月の間仕事の裏表で何度となく絡んでDMでのやり取りもそれなりにしている相手に関して「相性が良いのかなと思った」と言い表すならその相手との相性は悪い。桐生が天音を見初めた時がいい例だし、宝鐘が雪花に対して初動からDQN式のマウント姿勢をとって迫っていったのもそうだし、鷹嶺と百鬼が期生や年齢の壁を越えていつの間にかくっ付いていた事に関してもそうだが相性のいい者同士は「相性良いのかな」とか言う間もなく初手から吸い付き合って独特なシナジーを発生させる。あえて言うならその様子こそが相性が良い事の証明になるし、当人達が言葉にして言うなら「相性良いのかな」ではなく「相性良いよ」になる。人付き合いの経験が無さ過ぎるせいかも知れないが自分で言っていて違和感を覚えないのはなかなかにヤバい。そもそも天音が人と友達になる経緯の第一ステップは100%「相手が天音の事を強く求めて来る」で、沙花叉が紫咲にやっているようなアレを天音にしてきていない以上友達になどなれる訳がないだろうがという話もある。
「相性が良いのかな」と言ったこのシーンを観るまでもなく天音と沙花叉の相性はずっと前から悪かったのだが、関係が全く軌道に乗っていない所を無理矢理軌道に乗っている事にしたくて「相性が良いのかな」とアピールしている事から「ホロメンとの人間関係は相性の良し悪しを下敷きにした友達関係以外あり得ない」という天音の思い込みが知れる。
相性の悪い相手を掴まえて来て「相性が良い事にしようとする」とか「友達関係が上手くいっている事にしようとする」という天音の行動に、その子供じみた精神が大きく反映されている事が30以上ぐらいの大人になら分かるのではないだろうか。これは幼稚園児ぐらいの子供に「静かにしなさい!」と言えば口を抑えて辺りをバタバタと走り回るやつだとか、ゲームを買って欲しい小学生が親に「みんな持ってるよ」と嘯いて親が「みんなって誰よ」としゃあなしに問い返さなければならない不毛なアレだとか、JC・JKの「ウチらサイキョーww」だとかザコヤンキー同士の腹パンのやり合いだとか、そういうガキしかやらないくっだらねぇ虚無行動の一種なのだが、30前にして「しゃかまたぼきゅの事しゅきしゅぎぃ?///(湊の真似してる殺したい」などと言ってガチで真実味を持たせようとしている様を見ると本気で頭が痛くなる。自己肯定感が死んでいる人間は頭で考えて肉迫していく以外まともな人間とやり合う方法は無いのだが、今後もこの有様だと活動を上向きの軌道に乗せる為に天音に出来る事はほとんど無い。
✔ 大空辺りを意識して「相性が良い事を下敷きにした友人関係」を沙花叉相手に無理矢理作ろうとした事や「かな建」というMinecraft内チームを作って「不知火建設」よろしくホロメンとの交友関係の切っ掛けにしようとした事、さくらみこみたいな喋りや星街みたいな歌い方にしても天音は上手の成功例から何かをパクる事を信条として今年は色々やっていて、それはもう全部が全部失敗してしまっている訳なのだが、「上手の成功例からパクる」方向性のテコ入れ自体は実は正しい。自由業に従事する若者はむしろ同じ道の先にいる成功例からその強化パーツを盗んで自分に装着するように「パクっていく」事が何よりも重要な努力だったりするのだが、今回天音が駄目だったのは選んだパクり元が「自分と同じ道の先にいる成功例」ではなかった事、ただそれに尽きる。宝鐘や兎田からは何も盗んでいない所から「あの辺りは参考にしても無駄(自分に取り入れる事は無理」という判断が出来ているようだが、実際にパクった先も結局はそれと同じだったという事だ。
【無理でしょこんなん①:馴れ合いエクスタシー】
✔ 31:28~ 大神から冗談半分の賞賛を得て「ミオシャぁぁーー!!」とオホ声を上げる大空。その後も悦に入ってトロトロな様子だが、そんなに気持ちいいんなら多分オホ声と同時に脳内に何か気持ち良くなっちゃう物質……「脳内カウパー」みたいな物でも出ていたのではないだろうか。
仲の良いホロメンとのこういう薄っぺらい馴れ合いで大空がオホ声を上げて喜ぶのは、その様子に反して全然冗談ではない。大空はこういう瞬間が人生で指折りに楽しいし、これの為に日夜ホロメンとの繋がりを大事に守り続けている。大空が事務所で一番人間関係の構築に積極的なのは「活動上有利に働く為」ではなく「それ自体が好きで堪らない為」だ。人間好きな事でないと他より突出してやり込む事は出来ないし、それによって大きな効果を上げる事も出来ない。
「ホロメンとの広大な、友情を基盤とした密接な人間関係」という天音が見様見真似でパクろうとした「強化パーツ」は友達が冗談のつもりで発した賞賛を受けて脳内カウパーを飛び散らせてしまうようなバケモノが装備していた物なのだが、お前それ本気で使いこなせるつもりか?という話。可視化しないと分からないと言うなら「ハルクのパンツ」だ。膂力だけで全てを片付けてしまう、上げる吠え声の全てが意味不明なパワータイプのバケモノの装備を、天音は今回体よくパクろうとしていたと言えば少しは分かり易いだろうか。
【無理でしょこんなん➁:ガワだけバリバリ】
✔ 22:22~ 2023年度「男の腕力でぶっ殺してやりたくなるホロライブ関連の配信」ナンバー1に輝く激キモ配信「コメットちゃん」。ぶりっ子キャラを演じる時に使うバカの一つ覚えのあの裏声で星街が寝言を垂れ流すだけの配信。78歳の船長とか天音の「凸にだけ現れる大阪のおばちゃん」と同種の企画だがそこと比べると演じる技術はもちろん発想力と創造性の乏しさが殊更際立つ。
センスとテンポ感でカリスマへの道を切り開いた星街だが、考えて練って完成度の高い物を一つ上げる類の動きは須く苦手だ。「歌」「テトリス」「広く浅く、小器用な人付き合い」が星街の得手だがその全てが「表面的な部分をセンスとテンポ感で強力に攻略していく」種類の物ばかり。そこに特化した代わりにそれ以外の全ての、人としての引き出しの多さや内面的な本質を問われるような何もかもに関して星街は極めて弱い。
鋭く発声して鼻に抜け、いい所でぐるりと裏返す歌唱法を星街からパクった天音だが「表面だけ突き抜けて中身はスカスカ」なんて人間の得物、本当に扱っていきたいものだろうか。情緒や風合い、優しさなんかを混ぜる事も、ポップでコミカルな世界観を表現する事も「歌」という文化でなら可能なのだが、それらを全部捨てて「キレキレバリバリ全特化」な人間に寄せて手にしたい未来とは一体何なのだろうか。
宝鐘~大空までの「五大ホロメン」の中で、星街は一番利己的で実益主義で、他人に対して優しく在れない人間で、簡単に言うと一番性格が悪い。天音の利他的で優しい性格を気に入っている平民は「天音が星街に寄る」事を果たして喜んでくれるだろうか。
ガワの攻略だけに特化した星街の持ち武器「鋭い歌唱」は例えるならソーの電撃ハンマー「ムジョルニア」に似ている。見栄えが良くてバリバリと派手な演出で衆目を集めるところが共通しているが「奥深く、高尚な人柄」という王の資質を備えていなければ持ち上げる事も叶わないムジョルニアに対して星街の「鋭い歌唱」は「自分の事しか考えられない性格ブスのクソヤロー」にしか扱えない。音楽関係者にクスリや不貞で世を賑わす人間が多いのはそういう事だ。
✔ 0:10~ ロボ子の「リルビ」。序盤の歌い上げが星街にそっくりだがこちらは天音と違ってすごくいい出来。事務所規模で見ても上質で、汎用性が高くもある声と歌や声芸に関する器用さを併せ持つロボ子だからこそ成せた業だが、どちら共がロボ子に数段劣る天音に同じ芸当はとても無理だ。
そして冷静に考えるとロボ子がこの「星街路線」で歌を頑張ったとしてもやはり売れはしないだろう。似た歌い手が同じ箱に二人いた場合二人共が同時に売れる事はあり得ず、この場合やはり上手である星街だけが突出していく。声質や器用さが勝って上手の誰かを完全にコピーする事が出来たとしてもそれで成功する可能性はやはり絶望的だ。これだけ良い物を持っている訳だし星街と差別化してボカロ系の曲ばかり歌う方針はどうか(「ロボット」というプロットとも噛み合う)等とも考えてしまうが、それでもやはり相当に無理があるだろう。