【ホロライブ・アナザーライン】03-00《一人二期生⓪春、西麻布にて》include:[大空スバル]/時は、アイちゃんもまだいない時代に遡ります……/トロい男と利口な女/黒を着こなす長身女性は、好きですか/事故現場で「見ちゃダメ!」って聞こえたら、見ちゃダメなんだ本当に/Vの怖い話

VTuber


《一人二期生⓪春、西麻布にて》2/2「2016年、春」





「大丈夫、だった?何か」「お邪魔しちゃったみたいだけど………」

「いいんです、とにかく」「座って…………」

〝待ち合わせなのにお邪魔っていうのもおかしいか〟〝ハハ、〟と言って男は向かいの席に座った。

男はこの近くの勤め先から昼休みを利用して来ていて、小洒落た高そうなスーツの上にさらに高そうなベージュの外套を羽織っていた。

「今日、なんか嬉しいよ。君から呼び出してくれることって、あまりないから。」

「………………………」「………………………」

「たまたま近くに来てただけ?」「それとも、」

「………………………」「………………………」

「単に僕に会いたくなっただけ…………」「とか。」「ハハ…………」

「………………………」「………………………」

さとる〟。

みたいな名前だった気がする。

それか〝じゅん〟か〝純次じゅんじ〟か……………

〝達也〟とか〝竜二〟みたいなオラオラ系ではなかったし、

〝〇〟とか〝〇〟みたいな最近ありがちな新しいタイプのさわやかネームでもなかった。

どちらかと言えば古風で真面目系の名前…………

名字が片倉なのは覚えていた。

父の昔からの友人としてよく名前を聞かされていたから。

「僕の今までの努力が少しは実を結んだって、ことかな。」「ハハ…………」

「………………………」「………………………」

「ねぇ?」「ハハ…………」

「………………………」「………………………」

「………………………」「………………………」

男は、妙齢になってもなかなか結婚しない私に業を煮やした両親が数ヵ月前に宛てがった、古い友人の息子だった。平成も終わりに差し掛かった今時分に〝お見合い〟とかいう信じられない形式を用いて…………

「………………………」「………………………」

「あの、今度良ければ僕のうちに」

「別れましょう」

「………………」「………………」「っは!?」

「終わりにしましょう、もう」

見合いに同席した両家の両親は〝まるでらんま1/2だなぁ、〟と言って4人でガハハ、と笑っていた。

〝知らないなぁ、なんだろうそれ〟と、

自分が何故そこにいるのかも知らない私は思った。

「え、いやいや。」

「………………………」「………………………」

「いやいやいや、」「…………………」「なし。」

「………………………」「………………………」

「なし、家はなしで大丈夫。」

「………………………」「………………………」

「急……………」「だったよね?」「ごめんね、びっくりさせちゃって…………」

「………………………」「………………………」

「ねぇ?」「ハハ…………」

「うっとうしくて。」

「………………」「っえ!?」

男女のこういった関係自体が初めてだった私は、この男を切るに当たって事前に〝恋人 別れ方〟でネット検索をかけてきていた。

重要なのは〝別れたい具体的な理由を明確に伝える〟〝いけるかも?という可能性を残さない〟〝感情的にならずに冷静に〟の三点、とあった。

「え、うっと…………」「え?」

「うっとうしくて、前から」「面白くも面白くなくもないことをさも意味あり気に半笑いで話すところが」

「………………………」「え、」「面白く……………?」

「あと顔も、服も」「声も」「全体的に嫌いで」

「………………………」「………………………」

「近くにいると自分が死んでいくような感覚を覚えました。」「だからもう、終わりにしましょう」

「………………………」「………………………」

「短い間でしたが今までありがとうございました」「さようなら。」

「………………………」「………………………」

「………………………」「………………………」

男は、用件を全て話し終えた私をただ

口半開きの呆気にとられた顔で見返していた。

「………………………」「………………………」

「………………………」「……………………えっ?」

ものの数秒だった筈のその時間を永遠に感じた私は

〝遅ぇんだよなぁ、一般の人は何やっても〟と思いつつ、

通りの向かいを歩いていく

いいとこの学校の制服を着た小学生の一団を眺めながら珈琲を一口すすった。

「………………………」「………………………」

「………………………」「え、」「……………えっ?」

男とは、この数ヵ月で結構色んなところに出かけた。

勤め先の職場が近いから、ということで西麻布ここにも数回食事に来たけど、面白いことは何もなかった。

別に悪い人じゃないし、嫌なことをされたり言われたりしたわけでもないけどとにかく人として反りが合わなくて、ただただ両親の顔を立てるためだけに数週間に一度の会食ノルマをこなした。

「………………………」「………………………」

「………………………」「…………………え、」「……………えぇ?笑」

「………………………」「………………………」

「…………………」「そん、」「…………………」

「………………………」「………………………」

「………………………」「………………………」「……………えぇ?笑」

「(遅いんだよなぁ、何をやっても……………)」

「ご注文お決まりですかー?」

と、耐え難い空気を割ってウェイトレスの子が注文を聞きに来てくれた。

男を待っている間に何となく目を付けていた、三人いるホールスタッフのうち一番可愛い子だった。

震える手の親指と人差し指で下唇を挟んで止まっている男から〝どうしたのこの人?〟という意味合いの視線を私に移す。

「………………………」「あのぅ………」

「あ、大丈夫。もう帰ると思うから」

「あ、」「そうなんですね」

と言って笑った顔は、まるで子供だった。

様子のおかしい男の連れの方はまともだったことに安堵したような笑顔…………

に上乗せされた余剰の何かを感じ取った私は、男を待っている間にちらちらと目を遣りながら何度か思ったことをストレートにぶつけてみることにした。

「可愛いね、その制服」

「あ、そうですか?」

「うん、なんか」「映えると言うか」「すごい可愛いなって思って、」「見てた笑」

「そうなんですよー」「実は私もこの制服が好きでここのバイト受けたんです」

「へぇー………」「あ、でも」「分かる」

ウェイトレスの子が着ている制服は西麻布という土地を考えると少々不釣り合いなもので、結構エッチだった。スカートのウエスト部分が腹を覆い隠す程上に幅広く、窮屈そうな肩紐まで付いているのでおっぱ胸がこれでもかと言う程に強調される作りをしていて、近くで見ると女の私でも目のやり場に困る程だった。

私は別に巨乳が好きというわけではなかったけれど、それでも明らかに巨乳なその子の暴力的なまでに突き出した純白ブラウスの胸元にはフェチズムを感じずにはいられなかった。

「めっちゃ似合ってるもんね」

「………………えっ?」

「制服、特に似合ってると思う」「めちゃくちゃ可愛い子がいるなって思ってずっと見てたもん」

「え、」「…………………」「………………嘘。」

「嘘じゃないよ笑」

「え、違う」「あの、」「…………………」

「?」「うん。」

「…………………」「ズルいよ…………」

「え、何が………?笑」

女の子はそれが癖なのか、もったりとして重そうな左おっぱい胸を右手で逆手にわっし、と掴んで根元からごそり、と引き出し、スカートの締め付け部分の上に乗せ直した。

俯いてテーブルに目を落としていた男の黒目がそれに連動してぎょろり、と動いたのを私は視界の端で捉えていた。

「その容姿感じでそんなことさらっと言っちゃうの、」「ズルいです…………」

「え、何?」「好き?あたし」

「…………………」「うーーーーん………………」

「何?笑」

困ってる風の表情をした思わせぶりな態度は、誰が見ても分かる恋する乙女だった。

「えー?」「でも……………」

「何だよ、」「言いなよ笑」

「…………私も」「ずっと、思ってました…………」

「うん」

「黒をこんなに着こなす人、いないなって…………」

と言ってモノトーン調で統一された私の首から下と隣の椅子にかけた黒のコートに交互に視線を送る。

「あそう」

「………………………」「……………はぁい、」

「じゃあー……………」

「………………………」「………………………」

「両想いだ?」

「…………はぁ、」「やばぁい…………」

と言って軽くふらついた女の子の腰に手を添えると、女の子は右手を軽く私の肩に置いて体を支えた。

「大丈夫?笑」

「…………………はい、」

「出来る?ちゃんと仕事」

「はい、」「はい……………」

「じゃあもうお会計するから、一緒に持って来てね」

「はい、」「………………はい?」

「連絡先」

「……………嫌、」「やだ、もう」

「すぐしようね、デート」

「………………もう、」「やめて下さいそうやって次から次に」「さらさら言うの…………」

顔を限界まで紅潮させた女の子は、絶対に今の出来事よりずっと恥ずかしいことになっているふわっふわのマシュマロボディーをむちむち、と弾ませながら足早に店の奥に引っ込んで行った。

どうやらまだいたらしい神ナンパの傍観者が口を開いた。

「………………………」「君、」

「………………………」「………………………」

「そんな風に喋るんだね。知らなかった…………」

「………………………」「………………………」

「僕、何か怒らせるようなことしてたのかな」「だとしたら謝りたい、」

「用件は、分かりましたか?」

「え?」「……………………」「はい、」

「………………………」「………………………」

「分かり、ました……………」

「では持ち帰ってご検討下さい。」「仕事の途中だと思うので今日はこれでお帰り下さい」

「………………………」「………………………」

「お帰り下さい。」

「…………………はい、」「分かり、ました…………………」

男はよろよろと椅子から立ち上がると、今自分がかけていた椅子に蹴躓いて一度ガガ、と大きな音をさせてからふらふら、とテラス席から直接道路に出て行った。

「………………………」「………………………」

〝別れたい具体的な理由を明確に伝える〟〝いけるかも?という可能性を残さない〟〝感情的にならずに冷静に〟の三点は、完全にクリアできていた……………

筈。

〝名前を覚えていないことを悟らせない〟というエクストラ・ミッションもクリアできた。

あとは〝親にどう説明するか〟という難関が待ち受けているわけだけど……………

まあうちの親は私のことが大好きだから、きっと大丈夫。

短大を中退した時も、その後地下アイドルになりたいと言った時も何も言わなかったんだから、きっと今回だって……………

「あの、」

と言って巨乳の子が伝票と、その下に隠したラインIDを書いたメモをチラチラと見せながら持って来てくれた。

「うん、ありがと」

「………………………」「………………………」

「ごめんね?仕事中に、急に」

「………………………」「…………………いえ、」

さっきと比べて少し態度を硬化させた青臭い変化が可愛くて、少し意地悪がしたくなった私は椅子に座って見上げるキラー・スマイルをキープしたまま真っ直ぐに立ち上がって至近距離から見下ろし、身長の高さを見せつけた。

「………………………」「………………………」

「………………………」「………………はぁ、」

素が出ると、本当に赤ちゃんみたいな顔だった。

もちろん親子程は離れてないけど叔母と姪ぐらいの年の差は優にあるような、

そんな年下の子をこんな風に弄ぶことに何の迷いも感じない私は、やっぱりどこか普通じゃないんだろうなとしみじみ思った。

これまたむっちむちのボリューミーな下半身に手を回して軽くぎゅ、と締め付け、女の子が〝うぅーーーーー/////〟と軽く唸ったところでさっき男が出て行った方向の、もっと遠い場所で〝キキーーーーーーッ、〟〝ドンッ、〟という轟音が鳴り響いた。

その音が周りを取り囲む高い建物の数々に反響し終えるか終えないかというタイミングで続けて〝大変だーーーーっ!〟〝救急車!救急車誰かーーーーー!!!!!〟と老若男女が口々に叫ぶ声が聞こえ始めた。

「………………………」「………………………」

「……………………?」「何だろう…………?」

店にいた人たちが野次馬化して店の敷地ギリギリの場所に集まり始めた騒ぎを利用して女の子の額にキスをしたら、

女の子は反射で軽く目を閉じた後潤んだ瞳で真っ直ぐにこちらを見返してきた。

「………………………」「………………………」

「………………………」「………………………」

〝動かすなバカ!近寄るな!〟〝キャーッ!見ちゃだめ!見ちゃだめー!〟といった声が薄っすらと反響する中、

「(あーあ、)」「(新しい生活に持って行くものが一個、)」「(増えちゃったな……………)」

と思った。




→【ホロライブ・アナザーライン】03-01 に続く

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