
「はァーーーー………………」「水町の、」「ボケ………」
水町さんとの電話を切ってから、〝デビュー〟の件に関するあまりの手応えのなさに、私は椅子の背にもたれてしばし呆然とした。
もう半年…………地下アイドル時代でもとっくにステージに上げてもらえてた期間なのに、この手応えのなさはどうだろう。
ガキ共が〝飽きたァwwwwww〟と言い出す日に、ヤンキーが結婚、もしくは出来婚を報告してくる日に、怯えながら戦々恐々と過ごす日々はもう嫌だ。
本社付きで本デビュー出来れば奴らの不安定さを結束する力も増す筈。
本デビューさえ、本デビューさえ叶えば……………
「はァーーーー………………」「社長の、」「ボケ………」
「…………………」「…………………」
配信机に座った目の前には、頑張ればその机をくぐらせて運び出せそうなサイズの大きな窓があって、この半年昼夜配信漬けだった私はその窓から見る外の具合で時間を測る癖がついていた。
(この部屋がある)五階の高さからは結構色んなものが見えて、例えば通りを挟んだすぐ向かいにある一戸建ては、誰かが門を出入りする度ガシャーン、というかなり大きな音がする。
多分何人か子供がいるような家族住まいなので昼間はガシャンガシャンと頻繁によく鳴るけど、夜遅くにガシャーン、と鳴ったらそれはお父さんが仕事から帰って来た合図で、毎日深夜12時半前と必ず決まっている。
今丁度鳴ったので、時計を見ると───────12時26分。やっぱりこの〝時報〟は正確だ。
〝はじめから時計を見ろよ〟という話だけど、
なんかいいじゃん、時報って。〝もうこんな時間か〟〝今日も一日頑張ったな〟とか、色々思う切っ掛けになって。
あと暇なんだよ。ずっと忙しかったけど、毎日家に籠り切りの日々はどこかしら暇でもあった。
窓から外見るぐらいしか憂さ晴らしの方法がないんだよ、許してくれ。
「…………………」「…………………あ、」「そう言や…………」
「…………………」「…………………」
実家の母ちゃんが次の日の仕事に備えて寝ることにしてるのも毎日決まって夜12時半前だった。
私が子供の頃からざっと30年近くはずっと……………
今この時も、母ちゃんはどこか遠くの空の下で明日の仕事に備えて寝る準備をしているわけで……………
「…………………」「…………………元気かなぁ、」「母ちゃん…………」
「…………………」「…………………」「気まず…………」
「…………………」「ん?」
「…………………」「え?」
「ワァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!」
「ヒャァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!!」
反射で絶叫しつつも眼だけでちらりとPC画面を確認すると、
いつの間にか誰かとの通話がONになっていた。
→【ホロライブ・アナザーライン】03-02 に続く

