
「思い出した………!!」
「あのぅ、、、」
「完全に……………!!」
あの切る様な歌い上げ、ドライな声質、攻撃的で唯我独尊な節の付け方……………
完っ全に思い出した、、、、、
「あのぅ、、、」
投影画面をシフトモードに切り替えた鬼道丸さんがこちらに向き直っている。
「何ですか」
「〝どうかしらん?〟ってどういう意味ですか?」
「はい?」
「〝どうかしらん?〟です。」「古代語?」
「何?何が?」
「いや、」「〝パイパイ仮面でどうかしらん?〟ってどういう意味かなって」
「……………知りません、」「誤訳でしょう」「それより、思い出しました」
「え!!!!!」「パイパイ仮面!?」
「なわけねーだろ」「〝びびでつばびでつ〟の基になった曲ですよ」「歌詞もメロディも完全に思い出しました」
「うんうん」
「いやうんうんじゃなくて」
「何だっけ?」
「は?」
「それが分かると、どうなるんだっけ?」
こいつ、どういう………!?
「忘れちったよ、〝パイパイ仮面〟観ちゃったせいで」
「だからぁ!!〝秘匿鬼祇術〟の正しい詠唱文が分かったっつってんの!」
「え!?大変じゃん!!」
「そーだよ!」
「え、え、どんなの?〝秘匿鬼祇術〟の正しい詠唱」
「えーっとだから……………」
目をらんらんと輝かせこちらを見つめる、ハゲの鬼道丸さん…………
「(やり辛い…………)」
「え、何?」
「いや、あのちょっと…………」「定位置の方に……」「移動しますね……」
「え、うん」
鬼道丸さんが〝びびでつばびでつ〟を披露した場所まで片手で〝ごめんごめん〟とやりながら移動する。
「じゃ、じゃあ」「いきますね」
「はい」「どうぞ」
えーっと、
ゴショーゥワ♪あ・れ
「BIBBIDI BOBBIDI BOOWA」「BIBBIDI BOBBIDI BOOWA」「Yeah~♪」
「おぉ~」
「混絡がっても仕様が無い」「ガラスシューズで踊るTONIGHT♪」
「うん……」「うん?」「歌詞全然違う」
「BIBBIDI BOBBIDI BOOWA」「BIBBIDI BOBBIDI BOOWA」「Yeah~♪」
「ウマいウマい」「上手いな、歌」
「今夜に明日など無い」「ならば自由に踊った者勝ち」「でしょう♪」
「おぉ~、凄い」「教えてないところまで」
歌上手いじゃないですかァ~と鬼道丸さんがこちらに歩み寄ろうとした。
「来ないで!!」
「えっ!?」
「その場にいて下さい」
「えっ…………えっ?」
詳細が分からないだけに、〝失われた鬼道〟は最初に復元したその時が一番恐い。術者本人には発動した術への耐性が付与される事がほとんどだけど、周囲にいる人はその限りじゃない。──────特に〝秘匿鬼祇術〟ともなればその威力は計り知れない。最低で黒棺級だとしても霊力の注入は最小限に抑えて、控え目に発動しないと……………
「そこにいて見てて下さい。段階的に発動していきます」
「………………は、はははぃ……」
「大体こういう短めの節が連なってるような詠唱の場合〝逆瓶子型〟で…………」
脇をしめて両肘を曲げ掌を肩の高さまで持ってきて自分側に向け、逆さにした〝瓶子〟を下から支えて持つ形に整える。
「何やってるんです?」
「しっ!ちょっと黙って」「…………………フゥー…..」
両腕に慎重に霊力を送り込み呼吸を整え、正中線を軸に循環させていく。
「…………………結構かかります?」
「シッ!!!!」
………………………
………………………
………………………行ける!!!!
「BIBBIDI BOBBIDI BOOWA♪」
「BIBBIDI BOBBIDI BOOWA♪」
〝Yea……〟と言いかけた時に胸の前で〝ベギッ〟と、枯れ枝を折るような音がした。
「うーーっわ」「何です?今の音?」
「……………………出来た」
「へっ!?」
「発動………………した………………」
〝逆瓶子型〟を両手で作った丁度真ん中、胸の前の何も無い空間に人の掌大の〝ひび〟が入っていた。