✔ 3:24~ おバカにしては随分とまともな言葉遣いで安定したトークを広げていくさくらみこ。観慣れた背景を背にいつもの調子で喋るお馴染みの光景だが、その慣れの感覚を一旦封じてよく見て欲しい。──このライバー、可愛いだろうか。
ピンク髪×ロリタイプ×アニメ声と言えば今の環境で可愛いとされるベタな組み合わせだが、髪色はピンクと言ってもベタリと濃くどぎついカラーリングで体形はロリ・小柄と言うより寸胴で肉付きのいい成人女性といった趣、赤ちゃんともよく言われるロリボイスは喉に詰まったような苦しい発声で聴き取り辛いし通らないし……なんかちょっとこれじゃない感を感じないだろうか。
同じピンク髪×ロリ×アニメ声の組み合わせをしたVには姫森ルーナ、湊あくあ、外部にはみけねこなんていうのもいるがその全員と比べてもさくらみこは圧倒的に可愛くないし、華もない。VTuberはモデルや声等のガワの部分が全てな訳ではないがどうでもいい訳でもやはりなく、このなりで業界最大手の事務所で2位に着けるのは本来到底無理な話だ。
✔ お笑い特化のVの筈が待ち属性の立ち回りで笑い所は少なく、上手くて聴かせる訳でも下手過ぎて笑える訳でもないトークスタイル、微妙な声に微妙な容姿で華は皆無で、おバカが最たる売りにして考えた上で空気も読んで大人の態度もそれなりにとれてしまうさくらみこはことホロライブ基準で見れば非常に微妙なVなのだが、そのスペックにして事務所で2位の地位にまで運んで貰える程多数のリスナーや同僚を味方に付けるに至った、他のホロメンと一線を画す理由はちゃんとある。──それはおバカなのが可愛くて放っとけないからとかいうライトなものではなく非常に泥臭いものだし、何なら血の臭いが混じる程汗臭かったりもする。
ホロメンがホロライブで成功するために特殊な才能やセンスを用いず、つまり後天的に意識・努力する事で踏襲していける条件というのはいくつかあって、さくらみこはホロライブでそれを最多で取り揃えている。前記事でさくらみこ以外のホロライブ五強が持つ先天的な部分に由来する長所や才能について少し触れたが、そのどれをも持たない代わりに凡人でも突き詰められる部分を余すことなく努力で補った、簡単に言えばさくらみこの成功の秘訣はそれに尽きる。
例えばホロライブには「①虐」というライバーが用いる発展的なスキルがあって、「➁可哀想は可愛い」という変な価値基準に基き同僚や、場合に依ってはリスナーから攻撃的なイジりを受けているライバーは可愛いと取られキャラ付けが得られる・切り抜きが作成される・同僚から親しみを覚えられ仕事がし易くなる・リスナーの庇護欲を掻き立てる、等といった形でポイントが稼げる。
「みこ虐」は「ス虐」と並んでホロライブの二大虐だと思うが、これを達成するのにさくらみこは特殊な才能を用いていない。あのキャラだからこれだけイジられていると思いそうになるが脇ガバガバでおバカでPONなホロメンなど他にもいる訳で、夜空メルや百鬼あやめ、さらには兎田、ときのそらなどと違いさくらみこだけがその中で突出して虐られるのにはちゃんと理由がある。大空と並んで突出している事が最大のヒントだが、二人に共通しているのは同僚にもリスナーにもガードの姿勢をとらず活動に対して捨て身である事だ。保身の意識やプライドより活動への意欲・仕事の質へのこだわりが勝っている訳だが、二つの虐に次ぐのが「マリ虐」である事がその裏付けと言える。
ホロメンが成功する為に最重要な条件の一つに「③事務所の中心部に自発的に出て来てそこに身を置き」、「④中心メンバー達と一人でも多く、少しでも深い関係を結びそれを仕事に反映していく」というものがあるが、さくらみこは他のホロライブ五強の誰より事務所の中心に根を張り、また誰よりも満遍なく多くのホロメンと良好な協力関係を築いている。
兎田を除く他の五強も一見同等にそれを達成しているように思えるが、大空は成績下位や事務所の気風と合わずはぐれているホロメン達を寄せ集める事で事務所の中心からかなり外れた場所に独自の牙城を築いていて万遍ないとはとても言えず、星街は目先の利害を意識する余り誰との関係にもどっぷりとは浸からず選り好みも激しく、宝鐘は文化系や常識人系とは最低限のコミュニケーションも行えない。DQN・まとも系、成績上位・成績不振、期生の上下に関係なく最も広く安定したホロメン達との関係を築いているのは明らかにさくらみこで、これは他の五強と比べても突出している点だ。
それぞれの五強が他の五強と築いている関係の数もさくらみこが明らかに最多で、唯一気まずい兎田との関係も揉めた原因はどう考えても向こうにあるので(根拠やソースは一切ないが絶対にそう)さくらみこに非があって成立していない五強との関係、つまり活動上最も有利に働く人間関係は一つもない。これは人間関係を築く事に関してさくらみこが他のホロメンと全く違うスタンスをとった上で臨んでいなければ成立しない話で、それこそがさしたる才能も持たずして事務所で2位に就いた快挙の秘訣になる。
①~④の特殊な才能を必要としない条件をより高い次元で満たそうとした場合、そこにはそれ相応のリスクが発生する。
①に関しては冗談めかして他人から虐められる訳なので当然と言えば当然なのだが、それを行うのが同僚ではなくリスナーである場合が本当に危ない。しつけの悪いガキから無敵の人までありとあらゆる人間が最低でも数千人はリアルタイムで同時に、一方的にこちらを覗き込んでいる状況で我が身を晒して攻撃を受け集団心理が加速する恐怖とも戦うというのは生半な覚悟で出来る事ではない。
ホロメン達を観ていると運営のサポートあってかその恐怖心にはどうやらいつしか慣れる事が出来るようだが精神的な消耗はやはりいつまでも続くらしく、活動へのモチベが低い者から順に【A.キレる・叱る・注意する・苦言を呈す等の体をとってファンによる吊るし上げを誘発し、制圧にかかる】【B.テンションを下げて意図的にノリを悪くする事で気安く発言出来ない空気を作る】等の方法でリスナーの発言の自由度を縛る傾向が強い。同じおバカ属性でありながらさくらみことは対照的に虐を受けない面々がいるのは要するにそういう事なのだが、それをやってしまうと➁が満たせなくなってしまい、ライバーとしての質を損ない大抵の場合成績不振に陥る。気力を振り絞って①を受け止め➁を達成して高みを目指すか①を嫌って➁を諦め低迷するか、程度の差こそあれその二択をホロメンは常々全員が迫られている。