【 ⑧ぽこピー:92点 】- VTuberは、ぽこピーだけ見てればいい vol.8 –

【 ⑧ぽこピー:92点 】

【 YouTubeチャンネル→https://www.youtube.com/channel/UC1EB8moGYdkoZQfWHjh7Ivw
【 活動開始:2018年2月2日 】
【 チャンネル登録者数:26.1万人 】
【 直近再生回数(平均):11.98万回 】


【 ◆◆ 長所・視聴するメリット ◆◆ 】
【①動画の頻度・質共に業界トップクラス】
【➁コミュニケーション能力に長け、業界の各方面に人脈を築いている】
【③V界トップクラスのお笑い・バラエティ・トークスキル】
【④リアルな兄妹萌えを楽しめる】
【⑤強烈な仕事量・業界研究量・成長率】
【⑥仕事に対するモチベーションが強く、今後更なる成長が見込める】
【⑦庶民的な趣味嗜好・金銭感覚を持ち、幅広い視聴者が楽しめる】
【⑧他Vや視聴者を絶対に傷つけない、優しく安全なキャラクター】
【⑨個人勢とは思えない技術力】


【 ◆◆ 短所 ◆◆ 】
【①ぽんぽこが調子を崩せばユニットごと崩壊する】
【➁VTuberの中では地味。ファーストインパクトに欠ける】
【③コラボ先では仕事を優先する余り本質的な売りを出し損ねる。営業・アピール下手】
【④声優の訓練を積んだVTuber達に声や歌、芸で負ける】


【 ◆◆ 本文の要約 ◆◆ 】
 ぽこピーは少々地味で爆発力に欠けるVTuberユニットだが、若さや、一過性のネタを売りにしない事から先々まで需要が見込め、活動を続ける限り未来は明るい。ユニットをチーム化し、ぽんぽこに依存し過ぎな活動形態を改める事が急務だが、それを実行出来るのはピーナッツくんしかいない。


【 概要 】
 ぽこピーは、「ぽんぽこちゃんねる」にて活動するぽんぽこ(妹)・ピーナッツくん(兄)で構成されたVTuberユニット。コミュニケーション能力に長け、強烈な仕事量をこなすおバカな妹と、コミュ障で打たれ弱いが、視野が広く強いセンスを持ち、サポート能力に秀でる兄で構成されている。前衛のぽんぽこ、後衛のピーナッツくんといった具合にお互いの弱点をお互いの長所で補い合っており、非常にバランスのいい二人組。

2018年初頭にデビューした先行・中堅ユニットだが、同時期に活動を開始したVTuber達と比べて登録者数がかなり伸び悩んだ。2021年7月に悲願の登録者数20万人を突破してから勢いに乗り、現在は半年に5万人ペースで登録者を得ている。

チャンネルに上げている動画は活動初期から良質だったが、微妙なルックスのタヌキ女子と、攻め過ぎたデザインの黄色い生き物がジャンルを絞らずに動画を上げるという、初見では食指が動かない活動形態が登録者数の増加を阻んだと思われる。現在でも他所にコラボで出向いた際は、一体どういう関係の二人がやっている、どんな方向性のユニットなのか初見では到底分からない有様だ。ぽんぽこは初見ではガラの悪い東京の女にしか見えないし、ピーナッツくんは捻くれた根暗男・・は割とそのままかも知れないが、つまりアピール下手で営業能力に乏しく、他所から人を引っ張って来る事が苦手と言える。

私個人はおめシスを視聴していてぽこピーに辿り着いたのだが、初期のコラボを何回観ても、「声優を志すも花開かず、扱いに困った所属事務所が適当なキャラデザで無理に組ませ、低予算でデビューさせたやる気のない二人組(男の方は相方を女としてアリだと思っている)」にしか彼らの事が見えず、どうにも興味が湧かなかったものだ。

登録者数が伸び悩んでも腐らずコツコツと活動を続け、V界の各所に人脈を築いて顔を出し、蒔いた種が活動開始から足掛け4年でようやく花開いたのだと思うと非常に感慨深い。

彼らは元々滋賀の田舎で実家暮らしをしていた、しがないサラリーマンとフリーターの兄妹で、おめシスのような技術力や大手所属Vのような声優並の声、資金力も持たず、V界に先行出来た事以外これといって恵まれた点は無かった訳である。社会的に見ればどちらかと言えば負け組に属する二人が真っ当な努力を重ねて大成する、これは弱者のサクセスストーリーだ。主人公は歳を重ねてもどこか大人になりきれなかった二人、頼れる者は兄妹しかおらず支え合ってここまで来た、と考えると泣ける。ネット民から愛されるのもよく分かる。

いくら活動期間を重ねても、どちらからも毒気のような物が一切出ず、二人はどれだけ見ても田舎の純朴な若者二人である。正直YouTuberの事なんて、誰も信用していない。
詐欺のようなタイトルと下品なネタで視聴者を釣って、ある程度売れたら収入を維持する為に手抜き動画を延々と上げ続ける、それが大方のYouTuberの生態である。約4年の活動を経た今でもそういった臭いを一切感じさせないぽこピーは、YouTubeにおいて特異な存在と言える。


【 兄妹属性 】
 ぽこピーの動画の面白さは、「二人は兄妹である」という前提を持って完成する。
コメント欄でも毎回のように言及されている事だが、動画頭でピーナッツくんの挨拶にぽんぽこが合いの手を入れる事に始まり、大食い企画では兄弟でたくさんの食べ物を分け合い、グランピングでは仲良くアウトドア、ドッキリでは兄妹でイタズラを仕掛け合っていて、どこに遠出するにもいつだって兄妹一緒で、時に兄妹喧嘩をし、時には助け合い、口癖や食べ物の好き嫌いの方向性、同性に対して恋愛のニュアンスを含めて迫ってしまう所まで二人はそっくりだ。そういった一つ一つが視聴者にとってたまらなく「てぇてぇ」訳である。ガチ恋系の企画では、「妹全力のぶりっ子を間近に見続けなければならない兄」という意識で見ると非常に面白い。私にも妹がいるが、自分の身に当てはめて想像するとあんな状況は生き地獄である。

しっかり者でサバサバしているが少々おバカな妹と、ナイーブで打たれ弱く、やられ役に回る事の多い兄、というのも非常にいい構成で、これが兄妹で逆転していたらここまで面白くは観られないだろうと思う。いい歳をして田舎で実家住まいをしている社会的弱者二人、というのもまた良く、正直設定に関してぽこピーは出来過ぎているぐらいである。活動開始当初、発起人であるピーナッツくんがどの程度この「兄妹設定」を意識していたかは分からないが、当時ブルーオーシャンだったV業界に誘う相手に妹を選んだのは、結果的に大正解だった訳だ。

動画を見返してみると、モデルが現在の物になる少し前、二人が少々不仲だった期間があるように見える。基本的に相方を腐すのはぽんぽこがやる事なのだが、最近は仕事を通して兄への敬意が芽生えたのか接し方が優しくなっており、円満な熟年夫婦のようでもある。そういった兄妹の関係性の変化を見ていて楽しめるのも、業界でぽこピーのみなのだ。

家族ぐるみの実生活を動画を通して紹介するせいで、視聴者はすっかり二人の血縁者気分である。二人が先々までどんな人生を歩むのか追い続けたい筈であり、ぽんぽこが家族を持って子を設けたなら是が非にでも一目見たいし、反抗期の娘に、妹にされたのと同じように邪見に扱われるピーナッツくんや、子供が手を離れてこれからは自分達の時間ですわ、とか言っている二人等、需要はいつまでも尽きないだろう。
にじさんじやホロライブの、若さやアイドル的な魅力を売りにしているライバー達にその需要があるかと言えば怪しく、おじさんおばさんになった彼らに興味を示す者はなかなかいない。少々地味で爆発力に欠けるものの、先々までしっかりとした需要が見込めるVTuberというのも珍しい物だ。


【 ブレーンに求められる、長期的な視点 】
 ぽこピーは現状、ぽんぽこの仕事ぶりによって支えられている。ほぼ毎日ペースで上がる動画の大半がぽんぽこによって企画・構成され、撮影の準備や編集も彼女が行っている。
「おめがシスターズ」の記事で触れた事だが、個人勢VTuberは活動の根幹を担っている方が倒れたら終わりである。おめシスはブレーンであるレイが調子を崩して活動の質が低下したが、ぽこピーはぽんぽこが動けなくなったら立ち行かなくなる。
ピーナッツくんはこの先10年でも20年でも今と同じ生活を続けていそうだが、ぽんぽこはそういう訳にいかない。結婚を経て子育ての期間に入れば、とても今と同じ仕事量はこなせなくなる。ぽんぽこの頑張りこそがユニットの強みであるのに、それが機能しない5年~10年が、早ければ数年以内に訪れるのだ。

ぽこピーは十分に売れた今も、地元である滋賀に住み続けている。
地元の売りをモチーフにキャラクターを組み立てたり、地元の名所や名産品を紹介する動画を度々作る事、さらに自分達をゆるキャラ化しようとする活動方針を見ても、地元を代表する、ご当地タレントのような位置を狙って活動している事が分かる。
ご当地タレントやゆるキャラには、老若男女に受け入れられるクリーンさや、優しく丸みのあるキャラクターが求められる。ぽこピーはどちらも若さを売りにしておらず、例えば借金があるだとか下ネタだとか、そういった毒のある設定やネタも使用しない事から長期的に活動を続けてさえいれば、滋賀、若しくは関西のご当地キャラクターぐらいの位置は簡単に狙えそうである。
しかしそれは長期的に安定した活動を続けて知名度を上げる事が出来ればの話で、ぽんぽこの手が塞がると同時にユニットの勢いが落ちるようでは到底無理な話だ。何度も言うがユニットが勢いに乗ってぽんぽこが活動のほとんどを一人でこなしてくれている内に、手隙きになったピーナッツくんが屋台骨の補強を行うべきなのだ。
ぽんぽこがある日突然倒れても代わりが務まるような、花形の3Dモデルを被せても遜色ないキャラクターでぽんぽこと似通った趣味嗜好を持ち、編集やコラボのセッティングも担えるような、出来れば地元滋賀在住でピーナッツくんとも相性のいい女性を、まずは雇い入れなければならない。その体制を作らず先々まで安定した活動を続けると言うのは、どう考えても無理な話だ。
近場にいるおめシスが調子を崩している事と自分達の未来を重ね合わせる視点を早く持って欲しいのだが、ピーナッツくんは賢いようで割と抜けているので、下手をすれば未来永劫思い至らなさそうで怖い。


【 ガチ恋ウィーク 】
 ところで2021年末に行われた連続企画、「ガチ恋ウィーク」はかなり出来が悪かったと思うのだが、いかがだろうか。せいぜい一ヶ月前に思い立ち、突貫工事で各動画を作った事が透けて見えるようで、練りの甘い企画にバラエティ向きではないゲスト、展開も落ちもない仕上がりの動画が目立ったと思うのだが、どうだろうか。

私が特に気になったのは最終日に上がった、イラストレーター「可哀想に!」にMVの作画を依頼した楽曲「DON PA PPO」だ。
歌詞に対して可哀想に!の描いたガチ恋ぽんぽこがとる仕草が、動画をよく観ている者からするとかなりズレていて、例えば「バツイチ」でガチ恋ぽんぽこに子供の手を引かせている事や、「捨て身」でゴミ箱に入っているシーンがそれなのだが、ガチ恋さんの「捨て身」は激辛物や昆虫を捨て身で食べる、という意味の「捨て身」で、バツイチになったのは恋愛VRゲームで伊達と結婚式を挙げた直後である。
「捨て身」のシーンでは激辛か昆虫を食している姿が適当で、「バツイチ」では去って行く伊達の後ろ姿に向けて涙を浮かべるガチ恋さんでも描かれているのが正解だろう。
他にも「初恋の味」で只々口を咀嚼している風に描いたり、「どん」「ぱっ」「ぽっ」「ち」のサビ部分ではガチ恋さんの口がその形に動く描写を繰り返し、可哀想に!のYouTubeチャンネルで何度見たか分からないポージングを、ガチ恋さんにとらせた絵をコピペしたり・・ガチ恋企画を追っている者からすると、「動画を一片も観たことのない奴が適当に作ったな」と思う他ない。

もちろん可哀想に!が一介のYouTubeチャンネルを都合よく視聴している筈がないのだが、彼女はクリエイターと言うより人として不安定で雑な所があり、ネタ切れになると攻撃的で下品な言葉を只々羅列するようになったり、チャンネルに上げる動画にこっそりとパクりネタを織り込んで、指摘されるとコメ欄を閉鎖したり動画を削除したり、どう見ても嘘な日常ネタを本当風に動画にしていたりと、そういう事を度々やっている人なのだが、そんな人にぽんぽこが「歌詞に合わせて絵をつけちゃって下さい」と細かい指定なしに依頼を出したのなら、そりゃこういう安易で雑な絵付けをするよね、というのが今チャンネルに上がっている「DON PA PPO」なのである。
ガチ恋ぽんぽこにしても「どんぱっぽ」という文言にしても完全に内輪ネタなので、「DON PA PPO」はその元ネタの動画を視聴しているファンに向けて作られるべきなのに、MVが元ネタを全く反映していない仕上がりだとどうしようもない。
チャンネルの動画を観ている筈のない、まだ若く経験の浅いクリエイターに、「最近Twitterで話題になっている人だから」という理由だけで原案も何も無しに丸投げしたぽんぽこが悪いのだ。こんな雑な仕事をしていては日頃動画を視聴しているファンを裏切る事になるし、せっかく生み出した「ガチ恋ぽんぽこ」というヒットコンテンツが白けてしまうではないか。私だってガチ恋さんの事は好きなので、心から残念である。
それでも、「ぽこピーでもたまにはこんな事があるんだな」と思わせるのは普段が出来過ぎている事の裏返しでもあり、それはそれでさすが、と言ってもいいのかも知れない。


【 まとめ 】
 全8記事にも渡るVTuber批評シリーズ、「VTuberは、ぽこピーだけ見てればいい」いかがだっただろうか。令和の時代においては古臭い関西発の笑いを武器に、懐かしさすら感じさせる純朴な兄妹で活動するという、少々VTuberらしくないぽこピーを最推しにしている人は、実はVというジャンル自体にはそんなに興味がないのではないか、という所があるが、正にそれを反映した批評シリーズになったと思う。
他より出遅れても焦らず腐らず、安直な一過性のネタにも逃げず、ただ実直に作品の質にこだわり成長を続ける、そんな不器用で愛らしい生態がもっと世に広く知れ渡れば、と願わずにいられない。
長期的な視点で屋台骨の強化さえ行われれば、ぽこピーは未来の、関西を代表する存在になれるだろう。話題性の為に汚い手段に出る者や、お世話になった人々に砂をかけて迷走を続けるような者ではなく、彼らのような人こそ世間の脚光を浴び、人々のランドマークになるべきなのだ。そんな未来を夢見つつ、今日も日の出と共に彼らの動画を視聴することとしよう。

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