【 行き詰ってるYouTuberあるある 】
先日富士葵のYouTubeチャンネル「Aoi ch.」で「覚悟、決めました」という追い詰められたYouTuberに有り勝ちな生配信が行われたが、発表された指針が大きく分けて「一人ではどうにもならないから人を入れます」と「無理して仕事量増やします」だったのを見てさすがの私も可哀想になってしまった。外から眺めて伺える以上にチーム富士葵は停滞し、今後の展開に窮していたのだ。
バラエティや笑いの能力に優れる運営のキクノジョーをレギュラー化するというのはもちろん良策だが、次動画で早々にキクノジョーにスポットを当てて掘り下げるのはどうかしている。最近チャンネルに上げている動画を見ても動画勢VTuberの成功例「ぽんぽこちゃんねる」を模範に活動しているのが分かるが、「ぽんぽこ×ピーナッツくん」と「富士葵×キクノジョー」の組み合わせはざっくりと似ているものの本質的に全く違うのだ。「ぽんぽこちゃんねる」を観ている視聴者は二人の兄弟という関係性を楽しみの一つとして動画を観ているのでピーナッツくんの存在を大いに受け入れているが、富士とキクノジョーは異性の他人同士で、富士は単体のアイドルなのだ。若くて可愛らしいアイドルを推すような視聴者がその側にいる男の運営の詳しい情報に興味を示すとは思えない。
富士が真性のアイドルである以上キクノジョーは有名番組「乃木坂工事中」におけるバナナマンの立ち位置に収まるのが適当なのだ。乃木坂工事中でバナナマンにスポットを当てる必要がないのと同じ理由で、「Aoi ch.」ではキクノジョーも前に出るべきではない。行き詰ったアイドル系VTuberのチャンネルにバラエティ能力の達者な男性を投入するのはあくまで企画を円滑に進める為であって新たなファンの獲得の為ではない、という事をチーム全体で認識する事が必要だ。
他Vとのコラボ時は企画や共演者に合わせてカメレオンのごとくキャラごと変えて器用に立ち回るキクノジョーだが、ホームである「Aoi ch.」で富士とツーショットになった時、彼はコラボ時が嘘のように大人しく、当たり障りのない言動しかとらないのだ。ぽんぽこやピーナッツくんと絡む際は大きくボケて鋭くつっこむ彼がどうして富士と二人になると大人しくなるのかと言えば、それは富士に対してそれをしても彼女の能力では対応仕切れないからである。あくまで富士を立てるべきAoi ch.で添え物である自分は富士以上に張り切ってはいけない、という考えからキクノジョーはあんなにも大人しく、面白くなくなっているのだ。
しかしお笑いの能力の高い者が低い物と共演する際に出来る事は張り切るか、遠慮するかの二択だけではないのだ。乃木坂工事中でバナナマンは乃木坂のメンバーを立てて、メンバーの添え物として役を全うしているが、決して大人しくしている訳ではない。アイドルのようにバラエティ能力が素人並の出役を相手にして彼らがどんなスタンスをとってどんな立ち回りを心掛けているか、回し役とは、企画に対してフリの役割を請け負うとはどういう事なのか、というのを乃木坂工事中の違法アップロード動画でも見て勉強すればいいのだ。一介のチャンネルの運営が担う範囲を優に超えている仕事だが、キクノジョーなら十分クリア出来る所だろう。
【 現実逃避 】
ウケない活動形態は努力量を何倍に増やしてもやはりウケない。今年活動開始から3年目でチャンネル登録者数100人のVTuberがこれから毎日10時間生配信をしても売れないのと同じ理屈で、世間からの反応が悪いコンテンツは何倍量産しても結局響かない。
Aoi ch.の伸び悩みは活動量を増やしても決して改善しない。「VTuber富士葵がバラエティ系の動画や配信に取り組んでいく」という型自体がダメなのだ。それは私がわざわざ文字に起こすまでもなく登録者数や再生回数にはっきりと表れている。ピーナッツくんの、「いつでも前言撤回出来るんですからね」という言葉に「君らの場合活動量を増やしても何も変わらないと思う」という本心が漏れてしまっているのを汲み取って欲しい物だ。
間違ったフォーマットの上でアクセルを踏み込む、というのは絶対にやってはいけない行いだ。教育系VTuber言う所の「無駄な努力」というのがこれで、根本的な問題から目を背けてこれまでと同じ仕事の量産に舵を切るというのは実質現実逃避と変わらず、当然これが現状を改善してくれる筈もないのだ。
富士は本質的にアイドルである。ぽこピーのように芸人のような素質がある訳ではなく、バラドルのように捨て身でボケられる訳でもない。そんなVTuberが単体でバラエティ畑の活動に臨むというのが土台無理な話なのだ。ぽこピーですら二人の掛け合いでやっと今の面白さを保てている事に気づきキクノジョーを投入したはいいが、彼は富士と二人だと遠慮してしまうので結局まともな優等生二人が並んでお話しているだけの画になってしまう。最近の動画の企画はかなりいい線を突いていると思うが、二人の掛け合いにエンタメとしての面白さはほとんどない。
キクノジョーの能力を生かしたいのなら彼が遠慮する必要のない、彼と本気で殴り合っても当たり負けしないバラドル的な資質を持ったアイドルVを新たに投入するべきだろうと思う。主人公気質の富士を姫として配置し、回し役のキクノジョーとお笑い担当Vが企画を盛り上げる、というのは大手アイドルグループがバラエティ系の企画に当たる際の基本陣形と同じで、Aoi ch.についている、アイドルを推したいような視聴者達にも受け入れ易いだろう。
配信で言っていた出役の人数の問題もクリア出来るしチャンネルに新人を入れる事でチームにとってもファンにとってもいい刺激になる。この先何年活動を続けるか分からない富士に代われる人間もいるに越した事はないだろうし、いい事尽くめだ。
人選はもちろん声優の卵か売れない声優で、VTuber界においては民度と文化レベルの高い富士・キクノジョー共に噛み合うような人間がいい。噛み合わないVと絡んでいる時の富士はいい所が何もないが噛み合うぽこピーと絡んでいる時は富士・キクノジョー共に本当にいい雰囲気を出している。
ぽこピーの、能力と人の良さを両立したような人となりが好きならばあれはあの兄妹特有の性格と言うより滋賀県民全体の県民性なので、滋賀県出身者がいれば積極的にコミュニケーションを取って探ってみるのがいいだろう。いなければ隣接していて大体同じ県民性をしている京都府出身者でもいい。
アイドルは20年も前から多人数で売るのが定石である。富士がアイドル気質でアイドルらしい魅力を武器に人気を得ているなら活動形態も本場のアイドルに寄せるのが吉だ。
問題は富士が企業に属している以上キクノジョーの上役が良しと言わなければ何も出来ない、という点だがこのままの形態で活動を続ける限りAoi ch.は年々下降して行くだけだろう。
間違っても新しい人員を追加出来ないから、と言って富士にバラドルのようにボケ役をやらせてはいけない。やらせてしまえばどうなるかと言うと、先日の配信で言っていた、キクノジョーを召喚した時の動画のように目も当てられない有様になってしまうのだ。富士は「もう一回観たら泣いちゃうかも知れない」と言っていたが、それはこっちのセリフである。ガニ股で「キェェー！」と吠える富士は低品質なモデルと相まってバケモノでしかなく、今とは似ても似つかない。私がVTuber系の動画を見ていて思わず手で口を覆ってしまったのは、富士のこの動画とふぇありすの本体が映っている動画を初めて観た時の二度のみである。ぽんぽこの素人っぷり然りおめシスのぶりっこ然り誰しも黒歴史はあるものだが、こんなにも真っ黒な、漆黒よりも猶黒い黒歴史を私は今まで見た事がない。やはり富士は姫として配置するべきで、バラエティ担当・ボケ担当は他に用意するべきなのだ。
先日の放送もキクノジョーのインタビュー動画も、富士のみに着目して見ていると本当に酷い。どうでもいい所ではしゃぐしキクノジョーの大事な話には無意味にカットインするし、投げる質問も解答の処理も全部ズレていてどうしようもない。その出来なさがまたアイドルらしくていいのだが、自然企画をまともな形で成立させたりエンタメ性を高めるのは大手アイドルグループと同じく運営や回し役、つまりキクノジョーの仕事になってしまう。
若さを売りにしている富士は後何年活動を続けられるか分からない。「夢はいくつでも口に出せば出す程いい」などという眠い自己啓発を喋っている場合ではないのだ。キクノジョーの言う「僕の好きな、公演をよくなさっている人」というのは教育系YouTuber鴨頭氏の事だと思うが、教育系YouTuber達は自分の並外れた能力と確変じみた運を誰もが努力次第で持ち得ると思い込む癖があり、「才能と運に恵まれ、経済力と人脈を十分に得て精神的に余裕のある自分なら」という行間を逐一省いて打ち出される彼らのアドバイスは、いつだって何の役にも立たないのだ。
Aoi ch.を立て直す為に必要なのは運営側が富士をVTuber、YouTuberではなくアイドルとして意識し、アイドル(グループ)を成功させるにはどういった施策が必要かと具体的に考える事、それ以外にない。
【 不調の豆狸 】
年を越してからこちら側、ぽこピーはどうやら不調のようである。あまり練られていない企画で微妙な出来の動画が増え、編集はバタバタと落ち着きがなくテロップは誤字脱字だらけ、サムネは謎に薄暗く絵のタッチもおかしい。
二人の仕事の質が同時に落ちた事から多分動画と同時進行で何か別の仕事をしていて忙しくなったのだと思うが、あまり不安にさせないで欲しいものだ。ぽこピーは富士のように後ろにサポートのついていない個人勢、どちらかがスランプに陥りでもすれば簡単にユニットが崩壊してしまうのだから。
