【 本文の要約 】
個人で活動しているYouTuber達は個人勢VTuberの先達であり、彼らの活動形態から個人勢Vの行く末ととるべき行動が学べる。鍵は業界のあちこちに散らばる才能や能力を結集し、売れっ子Vの屋台骨を強化する事にある。
【 本文 】
先日キズナアイが引退し、VTuber業界は2018年初頭以降にデビューした中堅V達に委ねられた。大手事務所所属の企業勢達が業界を席捲して行く中それに属さない個人勢達はいかにして生き残ればよいのか。VTuberより先にYouTubeで成功を収めていた有名YouTuberカジサックとその運営チームを引き合いに、個人勢Vのこれからについて考察していきたいと思う。
VTuberとはYouTuberの新興亜種である。ぽこピーのように本家YouTuber達と似たスタイル・似た企画を軸に活動する者は本質的に彼らと同種の存在であると言える。つまり3Dモデルを被っている事を除けばYouTuberとほぼ同じ仕組みで成り立っているVTuberのこの先や、正しい活動方式は既に名を馳せているYouTuber達を見れば自ずと計れるという訳だ。私が特にひいきにしている大物YouTuberカジサックは実質個人勢のような体系で運営されている為、その運営方針の中に個人勢Vにも応用出来るメソッドが複数存在している。
チーム・カジサックには出役であるカジサックとその家族の他に、五人のスタッフが在籍している。一人は吉本興業所属のマネージャー、残り四人の内二人はチームへの在籍歴が比較的短く今ひとつ仕事の出来ない下役二人で、あとの二人がチームにとって重要な役割を担っているメンバーになる。名は役職の高い方から「山口トンボ」、「ヤスタケ」といってカジサックより少し後輩のお笑い芸人だった二人だ。全く売れず、芸人としては廃業同然だった所をカジサックに拾われ動画の企画や撮影を担当する形で働いている。
最近停滞が続いているもののやはり大成功の部類に入るYouTuberカジサックは、この二人の存在無くして存在し得なかっただろう。売れはしなかったものの長い間芸人として活動していたお陰で笑いのスキルや発案する企画のレベルが高く、チャンネルへの貢献度は二人合わせればカジサック本人を超えてしまうのではないだろうか。
有名YouTuberともなればスタッフが得る恩恵も多大で、山口はチャンネル出演で得た知名度を土台にTシャツ一枚が1万円もするような高級アパレルブランドを立ち上げ大成功、ヤスタケは東京のタワーマンションにこの度引っ越したらしい。売れない芸人時代家賃にも困っていた事を思えば考えられないような大躍進だが、この二人からは人気商売に敗れた者が成功を収める為にとるべき行動を学ぶ事が出来る。
✔人生ごとチャンネルに捧げている山口
✔タワマンに住み始めたヤスタケ
個人勢VTuberもお笑い芸人と同じく人気商売で、やはり成功した者とそうでなかった者に分かれる。私は以前ぽこピーが懇意にしているVTuber「ミミック」について記事を書いたが、今回はぽこピーと比べると知名度が圧倒的に低い、という点から不躾ながら彼をVTuberの失敗例と仮定しよう。ミミックが現在裏方作業に忙殺されおかしな事になっているチーム・ぽこピーにスタッフ兼出役として加入した場合、やはりチームカジサックにおける山口・ヤスタケと同じ道を辿る筈なのだ。個人勢の最大手であるぽこピーのチャンネルで露出を増やす事で彼の知名度は増し個人チャンネルの登録者数は増え、この前やっていたようなグッズ販売等ももっと大きな範囲で出来るようになるだろう。代わりにぽこピーは技術に長けたスタッフを得たお陰でコラボや企画の構想等二人にしか適わないような仕事に時間を使う事が出来るようになり、休みも十分にとれるようになるので長期的に安定した活動を維持できる。
ぽこピーとミミックを引き合いに出しているが、他の個人勢Vも結局同じ事なのだ。運よく成功出来た者は失敗した者を取り込みチャンネル成長の糧とし、失敗した側は成功者の下でセカンドチャンスを得られる。その連鎖を延々繰り返して上のステージへ登っていく事でしか企業勢には対抗し得ない。大手事務所の中には非常に有能なスタッフが何人もいて、事務所やライバーを大きく育てる為に必要な物を日々取り込み続けているからだ。ミミックでもふぇありすでも朝ノ瑠璃でも誰でもいいのだが、今ひとつパッとしないVTuber達でも放置して腐らせてしまうには惜しい才能や能力を何か一つは持っているものだ。V界のあちこちに散らばるそれらを結集する事が個人勢Vを強化する為に最も早道だし、何よりそのままにしておくのは非常にもったいない。
山口とヤスタケを芸人として失敗した後活動の場所と形態を変えて成功した者の具体例としてこの記事では取り上げているが、実はチャンネル主のカジサックも彼らと同じである。彼は活動開始と同時にブレイクしていた超早売れの漫才コンビ「キングコング」の片割れで、行く末は芸能界指折りのスターと目されるスーパーホープだったのだが、本人達に才能が無く早々に頓挫してしまったのだ。芸人を辞める直前だった彼が今のように成功した理由もやはり「適正のある場所に移動し、これまでの活動で培った能力を発揮した」からで、相方の西野も同じ方式で成功を収めている。「笑っていいとも!」や「はねるのトびら」で勢いに乗り、今の霜降り明星などとは比べ物にならない程キャーキャー言われていた20代前半の彼らに「片方は芸人もどきの素人がやる仕事に転職し、もう片方は絵本作家を騙った新興宗教の教祖になる」と伝えると自刃しかねないが、彼らを見ていると挑戦していた道に敗れた時に最も大事なのはその場に留まり努力を続ける事ではなく、自分に適正のある新しい場所に移動する事なのだとつくづく思い知らされる。
私はこれからのV界を担うぽこピーの下に夢破れたV達の力が結集すればどんなにいいかと常日頃思っているが、最近のぽこピーはまともに活動していると言えるかどうかも怪しいようなありさまで、一週間チャンネルに一つの動画も配信も上げない代わりに行っているコラボツアーはどれもこれも本当に酷い出来で全く笑えない。今回のツアーは他Vと共同で作品を作っているというより只のファンサービスと考えるのが正しいだろう。平時売れっ子V達のコンテンツばかり観ていてすっかり忘れていたが、やはり売れている奴らはモノが違うのだ。そんなV達の活動母体が強化され、安定した活動形態が確立される日が一日も早く訪れる事を願うばかりである。
