✔ リゼ・ヘルエスタは2019年初頭にデビューしたにじさんじのライバー。同期にはアンジュ・カトリーナ、戌亥とこがいて、三人でさんばかというユニットを組んでいる。設定は「ヘルエスタ王国の第二皇女」で、にじさんじ内に散見されるファンタジー系RPGをモチーフにしたようなライバー達の魁的存在。普段の配信はゲーム実況が多い。
いやはやにじさんじは本当に恐ろしい。月ノの陰に隠れて無難に優等生をやっているライバーだという認識で軽く動画を漁ってみたらこいつはとんでもない傑物である。こんなのが中堅所で大人しくしている事務所に個人勢はもうどうやっても太刀打ち出来ないだろう。にじさんじは事務所内の仕組み作りでまだもたついている節があるが、それが完了したらV界のバラエティ部門はにじさんじの物になる。次世代のスターもその次のスターも、代々この事務所が生み続ける事になるだろう。
このご時世どのVTuberもモデルのスペックだけは高いものだが、リゼの正統派なデザインはその中でもひと際目を引く。VTuberも今や飽和状態、違いを出さなければ埋もれてしまうので色物のようなVが増えるのは仕方のない事だが、ネタ的にオカマを出して白髪のおじさんを作り、荒れた飲み会の産物みたいな顔面落書き男の次にコアラと柴犬を出してからの皇女、というのは事務所からの強い期待と特別扱いを感じる。花澤香菜から少し甘さを抜いたような破格の美声と真っ当な人格、月ノを念頭に置いた確固たる活動意志を目の当たりにしたにじさんじの採用担当とライバーデザイナーが、即断で彼女に下駄を履かせる事を決意した様子は想像に難くない。
リゼを「皇女」としてデビューさせた後にファンタジー系RPGのパーティにいそうなメンバーが続々と作られていった事はとても示唆的だ。RPGで「第二皇女」がヒロインだった場合大抵そのキャラは本家から冷遇されて自己評価が低く、闇やトラウマを抱えている。旅を進めるうちに様々な仲間達と出会い過去の因縁を乗り越え、最終的には王家の第一子を差し置いて王座に就く、というのがテンプレ的なストーリーだ。にじさんじのライバーデザイナーがリゼを見て「今は弱いがきっと成長していつかV界のトップに立つ器だ。その為の仲間になるライバーもたくさん用意しよう」と当初考えたのだとしたら総毛立つ。前から分かっていた事だがにじさんじのライバーデザイナーは中の人を見て適切なモデルを被せる能力がチートじみて高い。
リゼの中の人がにじさんじに面接を受けに行ったのと同時に以前から親交のあったアンジュの中の人も、恐らく付き添うような形で面接を受けている。アンジュを好きな私としてはこんな事は言いたくないのだが、アンジュはリゼの仲間としてついでに採用された線が濃厚だ。ある意味声優声ではあるものの咀嚼が難しくキワモノ過ぎるキャラクターは単体で採用するにはあまりにもリスキーで、被らされたモデルが彼女に全く合っていない事や「錬金術師」というRPGのパーティの脇にいそうな設定を与えられている事から見てもにじさんじは「リゼのお供になるのなら」ぐらいの軽い気持ちでアンジュというライバーを作ったのだろう。その判断はやはり正しく、リゼはアンジュを伴った時飛躍的に面白くなる。アンジュ自体も能力が高く今やリゼ以上に再生回数を稼ぐライバーになっているが、これはにじさんじとしては嬉しい誤算だっただろう。