【 03.リゼ・ヘルエスタ:84点 】(後編) – VTuberレビュー(にじさんじ) –

VTuber



批評(後)

✔ 個人勢VTuberを強く推し大手事務所を敵視している私だが、声、モデル、人格、笑いのセンスまで業界最高クラスで質のいい仲間にも恵まれ、最強の事務所からのプッシュまで受けているリゼの事が、実はあまり恐くない。他のV達が喉から手が出る程欲しがるありとあらゆる物を備えていながら彼女は精神面が酷く脆弱で、向上心や自負の類を持ち得ないからだ。

怒ろうが焦ろうが上擦ろうが、何なら体調が悪くて出が悪かろうがどの瞬間でも切り取って即ボイスとして販売出来るような美声を使って、彼女は今30年も前のオールドゲームの実況をしている。業界が飽和状態になっている今、V達は皆苦しんでいる。個人勢はランドマークであったキズナアイ無き後増々強まる大手事務所の勢力に怯え、にじさんじ所属のライバーにしても2019年後期以降にデビューした者は筋が良くても皆埋もれている。さんばかを始めとした仲間を引き連れ埋もれた者を取り立てて、にじさんじの力を結集して業界ごと盛り上げていこう!そして打倒ホロライブ!という動きが出来るのは事務所内に月ノかリゼぐらいしかいないのに、それを今どき「MOTHER」実況とかお前は2010年代初頭のゲーム実況者か、と言いたくなるが何故だか絶対に言ってはいけない気がするのでそれはやめておこう。

リゼは破格の才能も恵まれた状況も、自分を信じて付いて来てくれる仲間も保身的な活動にしか使えない。美しい声と華々しいモデルを実況界で数千回は擦り倒されたオールドゲームの実況に、アンジュ戌亥をマイクラの土木作業に、「皇女」という事務所が期待を込めて充てがった設定を雑談配信の小ボケ程度にしか使わない。事務所の面接を受ける時「月ノ美兎さんと同じ仕事に挑戦して、成功したらこんな自分の事を少しは好きになれるかなと思って」と話したというエピソードを聞いた事があるが、その言葉通り一定の成功を収めた今自分の事を少し好きになって、そこで彼女は満足なのだ。リゼより恐らく一回り程も年下にして事務所を背負って立つ月ノや我が身を削って戦い続けるぽこピーの姿と対比すると恐ろしく矮小な精神性で笑える。この先も彼女は人より恵まれた才覚を「同事務所の他ライバーより少し優れた結果を残す」為だけに使い続けるだろう。何かの中で、誰かの下についてそこそこの結果を出す事で得られる安心感が彼女の生き甲斐なのだ。

正統派なキャラ設定も優秀な仲間も事務所内に無限にある訳ではない。にじさんじ内にいるファンタジーRPG系の設定を持つライバー達のリーダーである「皇女」という設定と、どの姫系ライバーと組ませても魅力を倍増させるスーパーセッターアンジュの第一婦人の座を占有しておいて自分の保身にしか使わないというのは最早所属事務所、ひいてはV業界の発展を遅延させる害悪行為だ。恵まれている癖に上を見ないVTuberなんかさっさと辞めて埋もれてる後進の為に道を譲れや、というのが私の信条だがリゼに関してそれは言えない。彼女だけは守って活動しても他とはモノが違うのだ。例え革新的な動きが出来なくてもリゼには居て貰わないと困る。リゼがいないにじさんじ、リゼがいないさんばかなど考えただけでもゾッとする。

✔ VTuber関連の記事を書いていて気付いたのは、V視聴者にも派閥がある、という事である。例えばぽこピーを推している視聴者層は彼らと度々コラボをしている富士葵おめがシスターズ等を併せて推しており、にじさんじやホロライブのような大手、個人であっても天開司を中心とするようなリア充系のVなど見ていないだろう。にじさんじの、個人の雑談配信で毎回20万回再生を突破しているようなトップライバーを複数人集めたバラエティ系の大型企画でも再生回数は大抵50万回強程で止まっている。この50万回強を回している視聴者が現在にじさんじが抱えている視聴者層で、その層をどこまで拡大出来るか、ホロライブや個人勢を観ている層をどこまで引き込めるか、というのがにじさんじの今後の課題と言えるだろう。

事務所が抱える視聴者層を拡大するにはやはり事務所外のVTuber達と精力的にコラボを行うのが一番の早道で、真っ当な営業方法だ。私がリゼを見たのはぽこピーのチャンネルに単体でコラボに来ていた時なとリゼのクイズ大会でだがどちらも大人し過ぎて何の印象も残らなかったものだ。最近老化が激しくおじいちゃんみたいになってきている黄色い人にるるちゃんと間違われた事で特徴のない存在なのだと印象付けられ、クイズ大会の時は名取の横に立っている人でしかない。事務所外に出向くときは、出来るなら横にさんばかを始めとしたリゼ自身の緊張を解いてくれる誰かを伴って行くのがいいだろう。私は対外的にはフレンを連れている状態がベストだと思っていて、彼女の分かり易いおバカキャラとそれをたしなめるちゃんとしたリゼ、という構図はどこの誰にとっても理解に易く、何の企画に参加しても大いに盛り上げる事が出来るだろうと思う。地上波に小峠教官というのがいるが、彼みたいなプロの芸人でも「リゼ×フレン」みたいな分かり易いコンビを見たら扱い方を瞬時に理解して腕まくりを始める筈だ。小柄な「皇女」と長身の「女騎士」という統一感のある組み合わせは見栄えも抜群だ。

✔ リゼ・ヘルエスタは声、人格、モデル、スキル、事務所から与えられた設定から伴っている仲間までありとあらゆる面で恵まれた業界で最高クラスの高品質なライバーだが、目線が低く視野は狭く、スケールの小さな活動に勤しむ為業界全体では今ひとつ目立たない存在だ。仲間と繋がる事で強くなり、仲間ごと上のステージへ連れていけるというのは彼女の心のお姉さま月ノにもない才能だがそういうスケールで物を考えられない精神性が彼女を今の位置に留めている。ライバーを志すのがもう少し早ければ、もう少し自信の持てる性格だったら等、何か一つでも掛け違えればリゼがにじさんじを牛耳っている世界戦も全然ある程に特別な存在だが、その世界戦の存在に気付けているのは地球上で私とにじさんじの運営数名のみだろう。類稀な才能が二人の仲間と共に経年劣化していく様を肴に、今日も安酒を頂くとしたい。



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