【 YouTubeチャンネル→壱百満天原サロメ / Hyakumantenbara Salome】
【 所属:にじさんじ 】
【 活動開始:2022年5月24日 】
【 チャンネル登録者数:41.5万人 】
【 直近再生回数:初配信179万回、第2回127万回 、第3回84万回】
【①古典的な「お嬢様」におバカと天然を掛け合わせた分かり易いキャラクター】
【➁独創的な企画。個人情報・胃カメラ画像の提示、都道府県穴埋めクイズ等】
【③ロールプレイの度が強い。与えられたお嬢様キャラを全力で演じる】
【④独特なワードチョイス。前出の演技と噛み合って非常にシュール】
✔ 中途半端な時期に突如単体でデビューした変わり種のにじライバー。ラナンキュラス(天ヶ瀬むゆ・先斗寧・海妹四葉)のすぐ下の後輩になるが同期はいない。初配信が即座に100万回再生を突破しチャンネル登録者数も25万を超えるという異例のスタートを切り、トレンド入りする(ラナンキュラスのメンバーそれぞれの初配信は現在大体40万回再生、チャンネル登録者数は10万人程度)。
何十年も前から漫画やアニメで擦り倒されてきたようなお嬢様キャラクターで、語尾に「ですわ」「ございますわよ」等が付く。私はまだ聞いた事はないが多分「オーッホッホッホ(高笑い)」とかも言うのではないだろうか。与えられたキャラクターを演じる度合が強く、一言一句がハイトーンなお嬢様口調で占められている。昔からアニメ等で見て来たお嬢様キャラクターがそのまま配信を行っているような状況にはかなり引き込まれる。
優雅なお嬢様が実は勉強が出来ないだとか内面が残念だとかはこの20年程のステレオタイプなので、壱百満天原の狂気じみたセンスや素っ頓狂なワードチョイス、おバカさや天然さは与えられたキャラクターによくマッチしている。漫画やアニメ好きの既視感を激しくくすぐるステレオタイプなキャラを具現化する事で衆目を集める、という意味でホロライブの兎田ぺこらと同じ戦略を採ったライバーと言える。
✔ 非常にセンセーショナルなデビューだ。よもや死に体のにじさんじからこんなにも世を賑わす大型ライバーが出て来るとは思わない。同時刻剣持刀也が寝坊して配信を飛ばしているという事もトレンド入りしていたが最近のやる気の無さを自虐気味に強調して新人の引き立て役を請け負うとは出来た先輩だ。最近の彼の一番のファインプレーは間違いなくこれだろう。
壱百満天原は、配信を観ての通りいいライバーだ。古典的だが誰にでも一瞬で理解できるキャラ設定で中の人のハイトーンボイスもお嬢様キャラクターに綺麗に合致している。普通ライバーのキャラ設定というのは挨拶で「こーんにちにーんにん(忍者だから笑)」と始めるとか一人称が女子ながらに「吾輩」になるとか、自分は女子高生だと言い張ったりするだとかその程度に留められるものだが、壱百満天原の場合素の自分を完全に殺してステレオタイプのお嬢様を演じきっている。やった事のない私には分からない事だがこのパフォーマンスを長時間の配信でやり切るのは体力・精神共に相当消耗するのではないかと思う。初っ端からこれをやり遂げている彼女にまずは拍手を送りたい。
また教養はないようだがセンスと地頭はあるようで、話の展開のさせ方や立ち回りの質がいい。どこまでが運営の入れ知恵かは分からないが中の人に関してチラリズムする個人情報や直筆の字の開示だったり、配信時トラブルで時間が余ってしまった際に都道府県名穴埋めクイズでおバカさをアピールしていくのは視聴者の心を掴むナイスな采配だ。Vの視聴者はこういった類のアプローチに目が無い。
どうしても名前が出てこない県に小さな池があるからと「少池県」と名付けるのは寒くて面白くないし胃袋の写真を見せるのは奇をてらう以外の何にもなっていなくて今後が心配になるがこの数年で生まれたにじライバーと比べると破格に質のいいライバーだ。まだデビューしたばかりなのでもう少し見てみないとわからないが周央 サンゴ以上フレン未満ぐらいの位置まではすぐに行ってしまうのではないだろうか。
✔ Vタレントの中の人には「サブカル分野に詳しいオタク系だがアニメ声で喋りの上手い人」を採用するのがベーシックな所だが、にじさんじは2019年の後期以降あえてこれを逸脱し、ゴリゴリの大阪のおばちゃんだとか高学歴女子、体育会系や浮世離れした金持ち等様々なキャラクターを生み出してきた。
この方針は結果として大失敗に終わっており、この数年でデビューしたにじライバーは皆小粒な者ばかりになっている。バラエティ畑の女性ライバーで言えば毎配信の再生回数は3万も行けばいい所で、常時5万を超えていればかなり優秀な部類と言える。
今回壱百満天原サロメという、あえてクラシックでステレオタイプなキャラクターをデビューさせる事でリスナーが強く食い付いたのはにじさんじ運営にとっていい教訓になっただろう。古くからあり、どの世代でも簡単に咀嚼出来る設定を持ったベタなライバーこそが受けるのだ。壱百満天原のデビューによってにじさんじは月ノや剣持等の世代への、一つの原点回帰を果たした形になる。
にじさんじに続きホロライブも2020年以降生み出すライバーの質は下方推移だ。大手はどう見ても2017年から今の間に東京近郊で取れる素材を粗方取りつくしてしまっている。地方からにじさんじに中の人志望で面接を受けに行く際、かつては交通費の類が一切出なかったという地方の人材を度外視していた事が垣間見えるエピソードがあるが、最近にじさんじでデビューしたライバーで目ぼしい者は皆関西の出だ。壱百満天原も関西出身でその前にデビューしたラナンキュラスも関西色のグループで、にじさんじが人材発掘の面で関西に的を絞っている事が窺い知れる。
✔ 表面的なキャラクターがウケているというのは危険な事でもある。壱百満天原の度の強いキャラ作りは同じクオリティでいつまでも続けられるような類の物ではなく、必ず段階的に中の人の素のキャラクターに近づいていく。今は独特なワードをハイトーンで放つ様がシュールで受けているがそれが失われた時、中の人にトーク力やギャグセンスのような地力が不足していれば当然見放される事になる。
意地と根性で今の演技を続けるというのも選択肢としてあるにはあるのだが、キャラ設定の為の度の強い演技を長年貫けているVタレントなど売れている者の中にですらさすがにいない。でびでび・でびるやピーナッツくんのように声質をキープするだけならまだしも一言一句をフルスイングのお嬢様口調で続けるというのは普通に考えてありえない。なまじそれが出来たとしても表面的なキャラの面白さなどいつまでも今と同じ温度で面白がって貰える筈がない。地力の強化と、キャラと素の折り合いの付け方を探る事が今後の課題になるだろう。
✔ にじさんじの戦略は「魅力的なライバーを少しでも多く産み出し、その力でより多くのリスナーを集める」という所にある。これはホロライブの成功の秘訣を知っている私のような者からしたら失笑もので、見当違いも甚だしい。
ライバー単体の魅力や実力で勝負する時代は何年も前に終わっている。今は複数のライバーの絆を強め、その関係性や人間ドラマを提示する事で衆目を集めていく時代だ。現在のホロライブ最強の武器は間違いなくこれだし、ホロライブにあってにじさんじにない物もこれだ。にじさんじの運営は輝夜月の成功辺りで頭が止まっているのだろう。
三人組のアイドルユニットであるラナンキュラスをデビューさせた事でようやくライバー同士の関係性が生み出す箱推しの重要性に気付いたのかと思ったがモデルや楽曲に大した力が入っていないのでにじさんじ最後の成功例さんばかに倣っただけなのかも知れない(カラーリングも同じ)。
壱百満天原が優れていると分かっていたのなら浮足立って即出しせずに彼女に見合うライバーを早急に見繕って同期としてデビューさせ、関係性込みでセット売りするのが下げ調子の現状を打破する最良の策だったのだ。壱百満天原が仮に月ノ並に才能があったとしても月ノと同じ時間をかけ、同じような状況に落ち着くというサイクルを繰り返すだけの話だ。今のにじさんじは如何に質のいいライバーを保有しても足掛け5年程度でそれを使い潰すような仕組みしか確立出来ていない。ホロライブを見習って才能あるライバーを最大20年も持たせる仕組みに切り替えるには優秀なライバーとその仲間を伴って事務所ごとリセットをかける他に方法はない。小室圭氏似のイケメン若社長にはその辺の事が分からないと見える。
壱百満天原は間違いなく優秀なライバーだがにじさんじの腐った空気が彼女をゆっくりと殺していくだろう。産むだけ産んで放ったらかしの無責任な運営と少しでも再生回数にあやかろうと切り抜き狙いで話題に挙げる気色の悪い先輩ライバー達がそれを示唆している。
「VTuberと言えばにじさんじ」がかつての定番だったが、今はにじさんじでデビューしてしまうと死亡ルートが確定する時代だ。今からVタレントになる事を志す若者には何度落ちてもホロライブを受け続け、滑り止めのにじさんじでデビュー出来たとしても引き続きホロライブの面接を受け続ける事をお勧めする。さもなくばデビューと同時に落ち始め、足掛け5年程度で寿命を迎えて全てを失うライバー人生を送る事になる。にじさんじからホロライブに移ったライバーというのもいるのだが、今彼女は本当に幸せそうだ。当然未来も明るい。