【ホロ些事!@夜空メル】10-00《君のいる地獄⓪I’m inside of your head……》include:[夜空メル]*星街すいせい/訳ありげな”ガリ巨乳美女”/「声かけ事案」て、何?/松本孝弘(B’z)みたいなグラサン、でもある(古い)/呪痢阿(じゅりあ)のノロイ/「泣き落としで女が抱けた」→「ためしはねェ」/おじィの怒声パラドックス/「”いい匂い”ではなく”え(⤴)え(⤴)臭い”」wwww/オパーィを強調する、女子の本音////メル「モォ~、」「ポカポカポカ」/メルは押しに弱かった/「実体を作りだしていたのか………」やあるかぃ/ある春の日の狂気/Vの怖い話

VTuber


I’m inside of your head……

真っ暗な部屋の中。

暗い、暗い部屋の中。

ぎしり、

と古い床板を

踏みしめる音が響く。

「……………!?」

「……………え、」

「……………え!?」

「……………誰?」

「……………誰誰????」

甘く、

声圧に乏しい声が響く

「……………あぁ、」

「なんだ、」

「メルちゃんか」

「……………」

「ごめん、」

「ちょっと」

「びっくりしてしまって………笑」

「……………」

「……………また、」

「訪ねて来てくれたんだね」

「こんな遠い場所まで、」

「わざわざ。」

「……………」

「……………ありがとう。」

「嬉しいよ」

ころころと、鈴のように笑う声が

一転、

訝しみの色を孕む。

「……………あぁ、」

「これ?」

「この」

「グラサン?」

「僕が今かけている」

「この」

「タモさんみたいな」

「ATSUSHI(EXILE)みたいな」

九能龍信くのうりゅうしん(クローズ)みたいな」

PSYサイ(江南スタイル)みたいな」

「ゴツいグラサンは」

「一体どうしたのかって?」

「……………」

「……………」

真っ暗な部屋を、不穏な静寂が包む。

「……………」

「……………」

「……………」

「……………わかった、」

「話すよ」

「気が進まないけど、」

「メルちゃんにだから」

「頑張って」

「話すよ」

「……………」

「……………」

なお暗く、静寂が包む。

「……………」

「……………」

「……………僕はね、」

「……………メルちゃん」

「僕は、」

「僕は本当に」

か細く声が、

震えている。

「星街の顔バレが」

「本当に、」

泣いている、

恐らく。

「本当に嫌、だったんだ………!!!!」

部屋の空気が、

いよいよ

重くなる。

「嫌で嫌で、たまらなかった………」

「……………」

「……………」

「……………最初はね?」

男は、堰を切ったように

猫又みたいな感じで」

まくし立てる。

「笑ってネタに出来るようになるかなって」

「思ってたんだよ」

「”寧ろ”」

「”実家のような”」

「”安心感wwwww”」

「とか何とか言って」

「僕も思い切りよく叩いてイジって出来る」

「いいネタが手に入ったって」

「そのくらいにしか」

「思ってなかった」

「……………」

「……………」

「……………でもね、」

あれは違う。」

あれはそんな生易しいものじゃない」

あれは化け物だよ」

「呪いだよ」

あの顔は」

「地獄の入り口なんだよ」

「日に日に大きくなっていくんだ」

「僕の内側で」

まぶたの裏で」

「星街のコンプレックスが」

「嘘が」

「声色も所作もモデルも」

「何もかもをイイ女風に取り繕っていた」

「星街の必死の努力が」

「一つになって僕の中に流れ込んで」

「僕の中で日に日に」

「大きくなってい゛ぐん゛だよォ゛…………

気のせいだろうか

心なしか、男の声が

何か電波障害のように歪んで聞こえて…………

「最初はバカにしてた」

「お勧めに上がってくるたび」

「”わぁブスが今日も配信してらァ~www”」

「”効いてないフリ頑張ってねェ~www”」

「”じゅァ~~~www”」

「て、」

「言って」

「笑ってたんだよ」

「それが段々」

「星街の姿を見かける度に悪寒が走るようになって」

「体が強張って」

「冷や汗まで滲むようになって…………」

「……………」

「……………」

「……………え?」

「……………いや違う、」

「……………違うよ」

「顔バレ画像の方じゃない」

「モデルだよ」

「星街のモデルを見かけるたびに」

「体がおかしくなるんだよ」

「……………もう怖いんだよ、」

「あのモデルでさえも」

「トラウマが深過ぎて」

「あの青髪の」

「モデル自体」

「恐怖の対象に変わってしまった…………」

「……………」

「……………」

「……………今じゃ、もう」

「どこにでも呪痢阿じゅりあがいる」

「目を閉じれば」

「そこに、」

「いるんだ………笑」

さっきまでと打って変わって、

男の声は

「いる笑」

「今も、」

どこか、無機質だ。

「いる笑」

「目を閉じれば、」

「ずっといるんだ」

「瞼の裏に、」

「ずっと…………笑笑笑」

まるで糸の切れた人形のように。

SNS動画で見かけるAI生成の人工音声のように。

夜半戸口に立ち

「開けてくれ」とせがむ、

何者かのように。

「だから僕は」

「目を塞いだ」

「見えないようにしたんだ」

呪痢阿じゅりあの顔をこれ以上見ないで済むようにって」

「目を」

「自分で、」

「塞いだんだ…………」

じゃあ今は、平和なの?という、

女の問いかけに

男の声が

少しイラ立ちの色を

帯びる。

「…………」

「…………メルちゃん、」

「嗚呼、」

「嗚呼、嗚呼、」

「メルちゃん。」

「嗚呼、」

「メルちゃん…………」

「ちゃんと」

「聴いていたのかい?」

「僕の話を」

男は足を組み替え、

座り直す。

「…………」

「…………」

「…………いや、」

「ごめん。」

「悪かった。」

「僕に、」

フゥーッと細く、

息を吐く。

「僕に怒る権利はない」

「僕も」

「同じ思い違いをしていたんだから」

また足を組み替え、

座り直す。

「僕はね、」

「メルちゃん。」

瞼の裏・・・呪痢阿じゅりあが見えていたんだ。」

「分かるかい?」

瞼の裏・・・。」

くっく、と

男が喉を鳴らす。

「そう、瞼の裏・・・

「つゥ~~まァ~~りィ~~wwww、」

一転、哄笑───────

「ボキの目の前には常に呪痢阿じゅりあの顔があるんでおまァ~~~~~!!!!!wwwwww」

「目を塞いで自分の瞼の裏しか見られなくなったボキの目にはァ~~~~~!!!!!wwwwww」

「ずっとずっとォ!!!!!」

呪痢阿じゅりあのご尊顔だけがァ!!!!!」

「映ってる状態なんでおまよォ~~~~~!!!!!wwwwww」

「今じゃ24時間いつでも」

「僕は呪痢阿じゅりあと」

「一緒に過ごすゥ~?????」

「…………」

「…………」

「…………そう、」

「おしどり夫婦なんでおまァ~~~~~!!!!!wwwwww」

ヒーッヒッヒッヒッ、

ヒェェー、

ウヒョォ~、

といったけたたましい笑い声は、

いつしか

むせび泣きへと

変わっていた…………

「殺してぇ~、、、、」

「もう生きていけない、、、、」

「殺してぇ~、、、、」

女の膝枕に縋りつき、むせび泣く。

「24時間化け物の面しか見えない生活…………」

「耐えられないぃ~、、、、」

「お願いメルちゃん…………」

「ボキを」

「殺してェ~~、、、、」

「殺して、」

「クレメンスぅ~、、、、」

泣いている人を無下に出来ない

優しい女は、

不必要にぐりぐりと押し付けられる

男の鼻とあごに、

フンス、フンスと

送り込まれ

ももぬくからしめる

鼻息に、

違和感を覚え始めていた。

「デデデデデデデデでもォ~~、、、、」

「やぱ、」

「殺す前にィ~~?」

「ここは一発いっぱちゅ、」

「ベッドを共にスススススススするのがァ~~?」

「スジとイウものと言うか」

「何と言うかァ~~????」

「ママママッマママまぁ、」

「早い話が、」

一発いっぱちゅ

「ヤらせて」

「クレメン………」



その時だった。

救い様のない空気を切り裂いて中庭の方角から、

「クラァーーーーーーーーーッ!!!!!!!!」

はっきりと聞こえた。

「勝手に入るなァーーーーーッ!!!!!!!!」

絶対に若くはない、張り上げられた男性の声。

「どこの子や!!ワィら!!先生の名前言えぃ!!!!」

続いて聞こえる、子供達数人が『わァー、』と

はやし立てる声。

「………………!!!!!!!!!?」

「……………え、」

「……………え!?」

中庭に誰か

人が、

いる。

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