✔ 「アイドル」がなぞった形式の軌跡の三つ目【③会いに行けるアイドル】についてだが、この場合ファンが「アイドル」に【③会いに行ける】場所は基本的に『劇場』だ。グループの発足と共に秋葉原に新設した小劇場でライブを行いそこに客を招き入れることで【③会いに行けるアイドル】のコンセプトは実現されていた。
つまりホロライブが【③会いに行けるアイドル】の形式を取り入れたい場合『(小)劇場の設立』がまず前提になる。──────AKBに倣って秋葉でもどこでもいいが小さなリアル・劇場を作りそこに毎日のようにホロメン達を登壇させ何かしらパフォーマンスを打たせる。大抵の場合集団での”ライブ”になると思うが、であるならこれは去年一杯ホロライブのトレンドになっていた”ソロライブ”の小規模版だ。せいぜい数百人しか入らない小劇場で敢行されるものなのでチケット代は大方4000円ぐらいまでがせいぜいで、これは”ソロライブ”の半額程度なのだが毎日数公演ずつ敢行することを思えば上りは相当なものになる。
公演の頻度は(平日含む)昼・夕・夜の三回がベストだ。「平日昼」と言えば大人も学生も本業に励んでいる筈で客入りは一見悪そうだが「夜勤」「在宅ワーク」「不登校」「アルバイター」「主婦」みたいな感じで昼の時間の自由が利く層というのは思いの外多いし、それ以上に「外国人観光客」という一大層もいる。「秋葉原ホロライブ劇場」みたいな感じで銘打ってそこを世界のVオタのメッカのようにしてしまえば話題性も抜群、そこでしか買えないグッズも併せて製作すればバカみたいに売れるだろうし、客足も途絶えることはないだろう。──────年末に「カウントダウンイベント」、大きめのホロメンがソロライブを敢行する際にはそれを他のホロメン達と同時視聴できる「同時視聴イベント」等もやってみれば面白いかもしれない。要するに「劇場に足を運ぶことでしか参加できないリアルイベント」を多めに敢行して金を落とさせること、加えて劇場に登壇しているホロメンとファン達との距離感を縮めることを同時に行う狙いだ。
特に”お笑い”のジャンルで顕著な話だが、「劇場に足を運びリアルタイムかつ相互的な生の関りを推しとの間に作ろうとする」客層と「テレビ・ラジオ等で距離の空いた推し活を続けようとする」客層は全く別の層で、文化としても別枠になる。「ホロメン達の配信を自室で一人で鑑賞しつつ大抵の場合読まれないコメントを打ち遠巻きに認知されたくてスパチャを投げて」、という行為と「小劇場に足を運びリアルタイムで相互的な盛り上がりを共有する」行為は根本から性格を異にするもので、やはりホロライブが劇場を設けてホロメン達にそこで活動させた場合アプローチする先は今と別になる。──────『公式動画勢化プロジェクト』は「配信の形式だと観る気にならないが」→「動画ならなる」層に向けてアプローチする狙いもあったがこちらは「遠いと親近感が湧かなくて推す気になれないけど」→「近いとなる」層に向けてアプローチする意図で、つまり未開の領域を開拓でき新規顧客の獲得が望める。
書き忘れていたが『劇場』への出演はランク表で上、中、下位と分けたうちの主に下位のホロメン達にだけやらせるプロジェクトだ。AKBが【③会いに行けるアイドル】のコンセプトを採った理由はずばり『直接的な関りでファンの心を掴んでいくため』だが、であるなら既に売れているぺこマリ以下のトップライバー達、箱の中の盛り上げ・回しを配信活動によってのみ行っていればいいだけの中級相当のホロメン達にはそもそも必要がない。言ってみれば成績不振で落ちぶれてしまったホロメンや数字の伸び悩みが激しい新参期生の起死回生のためのプロジェクトで、彼女達の最後の頼みの綱であったり、(それでも成績が伸びない場合の)終の棲家であったりする。
推奨活動形態 | ランク | ホロメン名 |
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・公式動画勢 | A(基本月給数百万~/箱内イベントの主催&参加禁止/フリーコラボ枠2) | 宝鐘(G)/さくらみこ(L) |
・公式動画勢 | B(基本月給100万前後~/箱内イベントの主催&参加禁止/フリーコラボ枠1) | 兎田(GC)/星街(GC)/大空(L) |
C(基本月給~100万/箱内イベントの主催・参加可/フリーコラボ枠無) | 白上/戌神/AZKi(C)/猫又/角巻 | |
D(基本月給~50万/箱内イベントの主催不可・参加可/個人ライブの敢行不可) | 天音/白銀(C)/博衣(C)/百鬼/大神/雪花 | |
・劇場 | E(基本月給~25万/箱内イベントの主催不可・参加可/ライブの敢行不可/個人グッズ・オリ曲の製作不可) | 桃鈴(C)/姫森(C)/獅白(C)/らでん/ラプラス(C)/不知火/常闇(C)/轟/火威/音乃瀬(C)/アキロゼ(C) |
・劇場 | F(基本給0円/箱内イベントへの参加不可/ライブの敢行不可/個人グッズ・オリ曲の製作不可) | 尾丸(C)/鷹嶺/風真/一条/ときのそら/赤井/ロボ子(C)/夏色(C)/癒月(C) |
✔ ランク表の「推奨活動形態」に書き入れるとこうなる。──────『公式動画勢』に対し客の側に降りて行き向き合って関わりでもしない限り成績改善など見込めないメンバー達のための救済措置も兼ねているのが分かるだろう。
「劇場」を横に書き入れたE、Fランクのホロメン達は(“基本給”を見てもらえれば分かるように)配信活動だけでは食っていけない。配信活動を通して存在価値を捻出出来ず人気も獲得出来なかった彼女達が今後「アイドル」としてのアイデンティティの上に立ってこの先も生き続けたいと思うなら道はこの【③会いに行けるアイドル】に形式を切り替えた上で「劇場」で活動する方法以外にない。
E、Fランクに入れたホロメン達のうち、活動歴の長い者はこれまで続けてきた「配信ベースの活動」が向いていなかった上に不遇の期間が長過ぎて心が折れているし、新人達は今からどう頑張ったところで現在の箱のトップ達と同じランクまで登っていくことは出来ない。「劇場」での活動はそんな彼女達に箱の上位ライバー達とは異なる価値の獲得の機会を与えてくれる。──────何故なら「配信活動」と「劇場での活動」が発信する先は別の客層で、「劇場での活動」で得られる新規客は箱の上位ライバー達の下へは向かわないのだから。彼女達が新規で掘り起こして獲得し、以降独占し続けられる票を「劇場」は稼がせてくれる。「(人気無さ過ぎな)配信」+「劇場出演」で新規ファンを獲得し、また「(削られてほぼ0円になった)配信活動から得られる給与」+「劇場出演料」で生活費を工面する、それがこの『劇場』プロジェクト上でE、Fランクのホロメン達に推奨される活動形態だ。
アイドルにせよ芸人にせよ劇場に出演するようなタレントはそれにより「劇場ギャラ」という名の給与を受け取るのだが、朝・昼・夕と3ステージ立つような場合でも新人だとその額は大体一日5000円とかだ。「劇場」に出演するホロメン達に関しても同じような扱いで構わないのだが「グッズの売れ方」「チケットの捌け方」等で他を大きく引き離すような優秀な成績を残す劇場出演者というのはやはり出てくる。
そういうタレントは(どの芸能ジャンルでも)大抵の場合「劇場リーダー」みたいな呼ばれ方をしてホームにしている劇場をそこの運営と共に取り回していたりするのだが、そこまで登り詰めたのなら”何ステージこなしても一日5000円”こと「劇場ギャラ」だけでは安過ぎる。──────「出勤日数×数万円」みたいな感じで「リーダー手当」でも渡して月50~60万円ぐらいの手取りが発生する仕組みにしておけば「劇場」以外にチャンスがないようなホロメンでも上を向いて頑張る動機になるだろう。