
〝ベロベロベロベロベログチョォ…………〟
「…………ぷわぁ?」
気がつくと
〝ベロベロベロベロベロォ………………〟
「ワァ…………」「もとあきぃ…………」
「オンッ!!」
もとあきが
ももの顔をベロッベロになめていました。
「ハッハッ」「オンッ!!」
〝ベロベロォ〟とまたやろうとするので
首もとをりょう足でつっぱってとめました。
起きぬけのおおがた犬の顔面ベロベロ
効きます、かなり…………
「オンッ!!」「オンッ!!」
「もたぁーき…………」「おぁよ、」
もとあきはさいきんママに買ってもらった
まっ白な
ももだけのおおがた犬です。
きょねん、
良ィ音でゆかにねころんで
殺す気であばれ回ったら
買ってもらえました。
ママってなんだかんだで
もものことアイしてんだなって
思います。
「オンッ!!」「オンッ!!」
「もたぁーき、だぁーめ」「やめて」
「オンッ!!」
「も、もたぁーき、」「コレッ」
「グルルルッ」「グルゥ………」
「も、もたぁーき………?」
〝ペロペロペロッ〟〝ペロペロォ〟〝グチョォ……〟
「ヒ、」「ヒィ………」「もたぁーき………」
「ももー、」
むりやり顔にこようとするもとあきがちょっと怖くなってきたころ、ふすまを開けてつばきがはいってきました。
「もー、いつまで寝てんのー?」
「あ、つばき………」
「わっ、犬いるじゃん」「しッ!しッ!」「出てけ!」
つばきに追いはらわれてもとあきがでてゆきます。
「おぁよ、つばき………」
「………………何だ、あの犬」
「………うーん?」
まだねむい。もう1どね、いけそう…………
「舌打ちしなかった?あの犬」「今」
「………うーん」
もう一回横になろうとしたらつばきにせなかをガッてやられて
そしされました。
「ダメダメ!もう起きないと」「お母さん呼んでるから」
「うみゅぅ………」
「用意するから、座っててそのまま」「………汚ったな、なんだこれ」
あつでの濡れシートでももの顔面をわしわしふきながら、つばきが言います。
「今日術式教わる日なんでしょー?なんか特殊な」「昨日夜言ってたじゃん、お母さんが」
「………うーん」
いってた、かも。
「うーん、て」「結構大事な話だったでしょ、あの感じ」
分かんない、だいじとかだいじじゃないとか。
きぃーてないですから、ママのはなしとか基本。
「髪バッシバシじゃん」
つばきがももの髪をくしでガッシガッシとときはじめました。
首ががっくんがっくんて、なります。
「いだい、いだいだいだいだ」
「首真っ直ぐ!」
痛いけど、ちょっとおもろい。
「もーいい加減しっかりしなきゃ、お姉ちゃんなんだから」「毎朝これじゃ困っちゃうよ」
つばきは、ももが小さいときからママよりおせわをしてくれます。
つばきのほうがママだったらよかったのにって、
たまに思うこと、
あります。
「ふたつにするー?」「ひとつ?」
「ふたつー」
髪のくくりかたのはなしです。
ツインテかポニテか。
いっておきますけど、
ももはポニテなんか
したことありませんカラ。
あるとしても
ママが勝手にするだけですカラ。
ポニテなんかしたことないのに
毎朝こうやってきいてきて
ほんと、
「バカだなぁ」
「うん?」
「つばきは」
「はぁ?」
「バカ」「バカつばき」
「なにをぅ」
「あっ」
かたっぽだけ結んだポニテで鼻のしたのところをはかれました。
「やーめぇーてぇwwww」
「こうだっ!用意してやってんのに」
「キャッキャッwwww」
「そうやって悪口言うやつはっ!」
「キャッキャッwwww」
つばきは毎朝やってるだけあって
ももの髪をやるのがじょーずだし
はやいです。
もう終わりました。
「はい、次、立つ!」
「あ゛ーぃ」
布団から出てたたみの上にたつやいなや
〝バッ〟
ねまきをはぎとられました。
もものほうまんなしたいが
あらわです。
「イヤーン」
「えーと今日は、内稽古だから」
「イヤーン」
「道着の方でいいか」
「ねーつばき、」「つばき」
「いや」「でも正式な場ぽかったから覇装の方がいいのか………?」
「ねーえ」
「何?」
「イヤーン」
「うるっさい!」「毎朝やるなおんなじこと」
道着のほうをらんぼうにきせられはじめました。
つばきは手ははやいけど
ちょっとらんぼうだなと思います。
「はい、後ろ向いて!」
はやいだけに、自分のぶんがおわると
いつもももの世話をさせられています。
損なせいかくだなぁと、
おもいます
いつも。
「はいバンザイして!」
他人事です。
ちょっとわるい気がしてきたので
えいぎょうトークでもしてあげることにしました。
「つばきぃ、」
「ん?」「何よ」
「おしごと」
「うん」
「どう?」「さいきん」
「何?」「世間話か、一丁前に」
つばきはつい最近、しゅーしょくというやつをしました。
こーえい鬼道師です。
ママの紹介でなりました。
コネというやつです、いわゆる。
「そうだねー、」「慣れてきたよ、最近は」
「ふんふん」
「先週なんか結構大きいの祓ったからね」
「ほうほう」
うで組みをして、しんみにきいてあげています。
「腕上げる!」
うでを上げられました。
「何級?」
「え?」
「何級のやつ?」
「えーと、」「四級が一体と、あとは三級が何体かだね」
「ふぅん」
「怪我人とかも何人か出ちゃったけど、まぁなんとか」
「なんにんで行ったの?」
「えーと、」「14、5人?」
「ふぅん」
「はい、前向いて」
こまのように、ぐるりと回転させられます。
何だと思ってんだ、ももちゃんのこと。
「いいなぁ」
「え?」
「ももも行きたい………」
「ちょっと無理かなぁー?おちびちゃんには」
「なぁんで」
「もうちょっと大きくなったら連れて行ってもらおうねーママに」
しんがいです。
ももはもうこんなにも
大人だというのに。
「はいできた!」
すがたみの前で見るももは
いつも通りかんぺきなしあがりでした。
「じゃあすぐ演舞場行って!」
「あーぃ………」
「やっばい遅れちゃう」
つばきはわきめもふらずにそそくさと部屋をでていきました。
「いっつも遅刻ぎりぎりだなぁ、つばきは」
つばきとちがって時間のよゆうがあるももは
ママが待ってる演舞場にゆったりと
むかうことにしました。

