
「つつしんで、お受けいたちまつ」
「あらそう」
「あぃ」
「どうしてまた急に」「そんなに嫌?働くの笑」
「甘えてまちた、自分」
「あらあら笑」
「総滅のいえをしょって立つものとちて、」「やらててくらたい」「ぜヒに」
「まぁ笑」「頼もしいこと笑」
ももは、
今のくらしが大好きです。
5どね6どねのない人生、
かんがえられません。
ひるすぎに家に重役出勤して、
ばあやズをあごでこき使う人生、
やめられません。
ももの好きなものは、
ぜんぶ屋敷の中にあります。
ぎゃくにお外には、
何もない。
だからももちゃんは、
なにがなんでも
なににかえても
のこりの人生ぜんぶを屋敷ですごすって
決めたんや。
そのためなら
なんでもやったるんや、
〝に゛ぇ〟でもなんでも。
つよい女なんや、
ももちゃんは。
「じゃあ、もう一度詠唱やり直すからももちゃんも一緒に、」
「いえ、ママ」「それにはおよびません」
「あら、」「あらそう?」
「もも、もうおぼえましたから」「さっきので」「見て」
「ま、」「あらそう」
「あぃママ」
「まー……」「ももちゃんは本当、」「鬼道のことになると優秀ね」
「あぃ」
「じゃあ、いい?」「見せてもらっても」
「あぃ」「…………あにょ、」「そのまえに」
「あら、」「あらごめんなさいね」
ママが鬼道指揮をかるくふって
塞を解いてくれました。
「じゃあ、」「いける?」
「あぃ」
背にかえられる腹など、に゛ぇえ。
血をながさずに得られるあすなど、ありはしに゛ぇえ。
ももはかいてきすぎる明日をまもるために、
たたかいます。
あの、〝に゛ぇ〟とかいう
鬼道を、
ももの大好きな鬼道をぐろうした
アホみたいな健康体操をおどって。
だいじょぶ、
いっぱちゅげいを
いっぱちゅひろうするようなもの。
きょういっぱちゅやったら
つぎは次代の、
つばきのこどもかなにかに
いっぱちゅおせぇーて、おわり。
それだけのこと。
鬼道の神さまも
ゆるしてくれるだろうて。
「いきます」
「うん、」「三倒波からね」
「あぃ」
両脚を肩幅に開き、右手に持った鬼道指揮を顔の左側まで持って行き、
ほぼ垂直に立てて〝三倒波の型〟を作り、
せーしんをとーいつします。
「………うん、」「いい練り」
左から右に鋭く、水平に指揮をきります。
「〝に゛ぇ〟っ!!」
「うん」
ここで一旦動きを止め、小~中型の鬼道と同等の霊力を込めつつ二節目の詠唱。
「〝に゛ぇに゛ぇ〟っ………………」
〝ズンッ!!!!!〟
「!!!!?」
〝ガランガランッ〟
「………?」「ももちゃん?」
「……………!!!!!!」
鬼道指揮を
おとしてしまいました。
右手にものすごい衝撃を感じて。
「……………????」
二倒目で霊力の〝込め〟をしたしゅんかん、
ものすごい重みがもものみぎ手をおそいました。
「……………????」
「ももちゃん」
「……………ママ、」
「どうしたの」
「…………………」
「だめよ、中途詠唱は」「作法違いよ」
…………………
…………………
…………………見えてない。
ママ、見えてないんだ、
いまの。
「……………ママ」
「どうしたのよ、ももちゃん」「そんなに嫌なの?〝に゛ぇ〟言うの」
あれだけの霊的衝波が、
見えてない。
もも、みぎうでぶっとびそうになったのに。
黒棺かもしかしたらそれいじょうクラスの
霊的熱量がいまたしかにもものみぎうでに宿ったのに
それが見えてない。
どんな鬼道も霊子・霊力のへんどうを見て
詠唱前からしょうたいを見やぶるママが
あんなでっかい鬼道の起こりを
みのがした…………
「さすがにぶっ叩くわよ、ももちゃん」「演舞場での中途詠唱は」「いくら〝健康体操〟とはいえ」
「…………………」
ももはいま二倒目の〝に゛ぇに゛ぇっ〟のとこで
〝小~中型の鬼道クラスの霊力〟をこめました。
それが、
〝黒棺以上クラスの鬼道〟の霊的衝波をはなちました。
これ、
いじょーじたいです。
ありえません、
こんなこと。
霊力→鬼道のへんかんこーりつがいじょうすぎて
チートです。
鬼道のせかいで
ありえません、こんなこと。
「ももちゃん、どうしたのよ」
「……………ママ」
「なによ」
「ちょっと、はなれて見てて」
「うん?」
「……………たぶん」「やばい、これ」
「……………ももちゃん?」
三倒目の〝突き〟をはなって〝に゛ぇ〟を四回言うしめの詠唱をしたとき、
たぶん、
なにかが起きます。
だれも見たことのない、
なにか。
良いか悪いかわからないけど、
なにかとてつもないこうりょくをもった、
とてつもなく大きな鬼道が
はつげんします。
「大丈夫なの?」
「うん、ママ」「ちょっとはなれて、みてて」
「……………わかったわ」
ママが神棚のほうへ10m近くはなれたのをかくにんしてから、
もういちど詠唱にはいります。
〝三倒波の型〟を作り、さっきより慎重にせーしんをとーいつします。
…………………
…………………
…………………ひだりからみぎに水平に、
指揮を切ります。
「〝に゛ぇ〟っ!!」
鬼道指揮の先端を体の右の外側に向けて静止した、この姿勢。
ここでさっき、衝撃がおきました。
込める霊力をさっきより少しおさえめにして……………
「〝に゛ぇに゛ぇ〟!!!!」
〝ズンッ!!!!!〟
きた
やっぱり
〝…………………ッチッチッ〟
今度はおとしません、鬼道指揮。
それなりの備えができてたから。
〝……………チッチッチッチッチッ〟
それにしてもやっぱりあり得ないへんかんこうりつ
あまりにいじょうな……………
〝……チッチッチッチッチッチッチッチッ〟
「……………!!!!?」
聞こえる、なんか、
へんな音
〝チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ〟
指揮を体の右の外側に向けて静止したままのももの耳に
明らかになにか
時計の針が時をきざむような音が
聞こえています…………
「……………もも?」「大丈夫なの?」
わからない、大丈夫かどうか
〝チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ〟
でもやる。
やるしかない。
〝アホみたいな健康体操〟の正体がなにか
つきとめないと
〝チッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッチッ〟
「もも?」
最後は三倒。
鬼道指揮の先端を前に向かって突きながら
「〝に゛ぇに゛ぇに゛ぇに゛ぇーーーーー〟!!!!!!!!!!」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………」
「……………うん、上出来よ」「〝込め〟も〝練り〟も丁度いい」「ちょっと霊力控え目だったけど」
〝ゴォーン………〟
「……………!?」
「さっきはどうしたの?」「ヤバいとか何とか」
〝ゴォーン………〟
今度は時計の鐘のような音が聞こえます。
「……………!?」「ももちゃん?」「何この音」
「!!!!!ママ、」「聞こえる?ママも」
「えぇ、」「何よこれ」
詠唱を終えたももに歩みよってきたママにも
どうやら今度は聞こえているようでした。
〝ゴォーン………〟
ももは、まだ三倒目の〝突き〟の姿勢をキープしたままです。
「ママ、あぶないからまだ離れてて………」
〝バキィッ〟
ももが指揮を突き出した目の前の空間が
ふいに歪み、ピンク色の光をはなちました。
「!?ももちゃん」
「はなれて、あぶないママ!!」
〝バキッ〟〝バキバキィッ〟
歪んだ空間が連動してうごめき、
いくつかのまとまりを見せ収束していきます。
「何何何何何何、」「何なの、それ………」
「……………わ、」「わがんない、」「時計………?」
ももが前方にむけた鬼道指揮の先10cmのところに
ピンク色をした、きょだいな
アナログ時計の盤面があらわれていました。
「……………ももちゃん、」「何したの、あなた……」
「わ、わわ」「わがんない………」
「何なの、それ……」
ももひとりが中に丸まって収まれそうなサイズのそれには
短い針と長い針がちゃんとあり、
短いほうが〝12〟と〝1〟のあいだ、
長いほうがひだり下の、〝けっこういいとこ〟をさしていて
盤面の周りには数字だとかゲージ、メーターみたいなものが
いくつもあわせて配置してあります。
「なな、なんなんじゃァ、」「こりゃぁ………」
前に突き出した鬼道指揮を少し動かしてみると、
アナログ時計の〝長いほうの針〟が
連動して〝ピクリ、〟とうごきました。
「!?ももちゃん」
「うご、」「動いたァ、今」
さらに鬼道指揮をグイ、と動かしてみると
〝長いほうの針〟がまたさらに連動して〝グイィ、〟と動き、
引きずられるようにして〝短いほうの針〟も〝クィ、〟と軽く
動きました。
「ももちゃん!!」「…………ダメよ」
「…………ママ?」
「動いちゃ、ダメ」「鬼道指揮も動かさないで」
「ママ」
「息もしないで」「爆弾かも知れない」
「!!!!?」
爆弾!?
って、
あの大昔の
古い映像作品やなんかに出てくる
あの古代へーき!?
何で……………?
…………………
…………………
…………………時計だからって、
ことぉ!?
ももが鬼道指揮クイクイして
長針短針あわせてゼロをさした時
大爆発が起きるって
ことぉ!?
「マ゛ーマ゛、やだ!!!」「ごわぃ」
「動いちゃダメよ、もも」「指揮もそのまま動かさないで」
「マ゛マ゛…………」
「息もしないで」「…………ちょっと、あの」「ママは」
「…………ママ?」
「ちょっとパパを、」「呼んでくるわ…………」
「!!!!?」「マ゛マ゛!!!!」
こいっちゅ、
まさかももちゃんをここに置いて一人、
「マ゛ぁマ゛!!やぁだ!!」
「動かない!!!」「喋らない!!!」
逃げようってのか…………!?
「息もしない!!!!!」
「…………ママ、」
「いいこと、もも」
ママは、
言いながら演舞場の出口に向かって
後ずさりをはじめていました。
「ママ、」「ね゛ーママ」
「絶対に動かないで」「ママすぐパパ呼んで戻ってくるから」
「マ゛ーマ゛!!!」「やだ!!!」
「いいこと、絶対よ」「殺すわよ、動いたら」
「やーだ!!!マ゛マ゛!!!」
ママは〝ダンッ〟と演舞場の板の間を鳴らして、
瞬歩で逃げました。
「マ゛ーマ゛!!!!」「置いてかないでぇ!!!!」
…………………
…………………
…………………ももは、
ドッヂのしあいをよっつくらい
ドッヂにできるぐらい
でっかい演舞場に
未知の鬼道とふたり
とり残されて、
しまいました………………

