
女は男が言い終わらないうちにおもむろに手を伸ばし、それに触れた。
〝ワッシ〟
「(ハァッ………/////)」「(まさかのそんな積極的にィ………)」「メル、ちゃん………/////」
女は〝へぇ、これが赫子〟と白々しいことを言いながら、慣れた手つきで握ったその手を前後に動かし始めた。
〝ワッシ……〟〝ワッシ……〟
「(長かった、、、)」「(ここまで本当に、)」「(長かった、、、)」
男は、自身が赫子だとするそれから伝わる快感をよそに、この廃墟での長い苦難の日々を思った。
「(女子というのは、まこと不思議なる生き物)」「(一皮剝けばこれこのように)」「(いつでも欲しておる癖に)」「(男が堰を外してやらねば)」「(その溢れ出ずる性の奔流)」「(自ら解き放つことならず………)」
〝ワッシ……〟〝ワッシ……〟
「(かように良き女子でもそれは変わらず)」「(家持ち金持ち知名度持ち)」「(声も良ければ顔も良し)」「(細き体に都合良く揃いし巨乳)」「(露出好きの見せたがりの根が変態)」「痛ッッッッたぁ!!!!!!!!!!」
突如、男のそこを激痛が襲った。
「(…………え、)」「(痛い)」「(…………痛った、)」「(…………痛った痛った痛った痛った)」「(痛い!)」「(確実に痛い…………!!)」
〝ワッシ、ワッシ〟と変わらず、男が赫子だとするそれをしごく女の手から伝わるのは想像していた快感ではなく、驚く程に強烈な痛みだった。
〝ワッシ……〟〝ワッシ……〟
「(痛い、痛い痛い)」「(イタタタタタタタタ痛い)」「(…………痛った、)」「(…………痛い痛い)」「(痛い!)」「(…………これあかん)」「(一旦止めな)」「(あかんルート(=最後まで到達出来ないルート)に入る)」
同じ場所を同じ握り方で単調に〝ワッシ、ワッシ〟と繰り返す女を、男は一旦止めることにした。
「……………ちょっとごめん、」「ちょっと一旦ストップ」
女は〝ん?〟と顔を上げ手の前後運動を止めた。
「(痛い、)」「(この状態で既に痛い)」
ただ握っているだけの手が大事な箇所の内部組織を押し潰す程に過剰な圧をかけているのが分かる。
「ちょっと一旦手、放してもらって…………」
〝パッ〟
女が手を離した途端、解放されたそれに血が流れ込む感覚があった。
空気を悪くしたくない男は努めて冷静に、
ソフトに
女に性の手ほどきを施すことにした。
「あの…………」「もしかしたら意外と知らんことかも知れんねんけど、」
〝うん、〟と女は下からの姿勢で上目遣いに男を見上げた。
重めの金髪が色白の顔にかかり、その隙間から金色の瞳が二つ覗いている。
顔はやっぱり、完全に可愛い。
「あのー……………」「女性って行為の時に、」「たまに痛い時が、」「あると思うんですよ」
〝あるー、〟と女は食い気味に同調した。
「でしょ?」「なんか前段階が不十分だったり相手の力加減が強過ぎたりで」
〝うんうん分かる、高校生の時に〟と聞きたくない話(しかも多分長い)を披露しにかかった女を慌てて制止する。
「じゃじゃじゃじゃじゃなくて、」「なんか」「あんまり、変わらんというか」「男性と女性のそこの部分って」「外に付いてるか中に付いてるかの違いしかないというか」
〝そうなのぉ~〟と女は素直に興味を示している。
「うん、まあ」「確証とかないんですけど」「大体一緒やん、性感帯の数とか位置とか」「あと絶頂に達した時の反応とか」「多分形状が違うだけでほとんど一緒やと思うんよ」「特にデリケートに扱わないとめちゃくちゃ痛いところとか」
女は〝あっ〟と小さく声を漏らした。
「いや、」「いやいやいやいや、」「いや、」「全然大丈夫やったよ?」「全然大丈夫やったけど」「まあ出来たらもうちょっと、」「みたいな笑」
女は〝ごめんねぇ〟と小さく呟き、申し訳なさげに男の顔を覗き込んでいる。
どうやら意図が伝わった様子だった。
「じゃ、じゃあ」「続きの方、」
と男が言い終わる前に女は自分から男の萎びた〝赫子〟に手を伸ばした。
〝ワッシ〟
「(Ah………)」「(積極的だァ………)」
〝ワッシ……〟〝ワッシ……〟
「(女というのは、どうしてこうも)」「(始めは何でもかんでも嫌よ嫌よとはね付けるくせに)」「(一度落ちてしまうとどうしてこんなにも)」「(従順に)」「痛ッッッッたぁ!!!!!!!!!!」
女の力加減は
全く改善されていなかった。

