「一年半」「ぐらい前、」「だったかな」
「……………………」「……………………」
「マジックの練習、」「始め」「たの…………」
「……………………」「……………………」
一年半前。
丁度若手一のホープが辞めて
それをきっかけに箱で脱退ラッシュが始まった頃。
「攻め手に欠ける、から」「私」「何か武器が欲しいと」「思っ、」「て……」
「……………………」「……………………」
〝小田原〟仕様のマンホールの蓋に座って頬杖を突いたまま
物憂げな顔の女は淡々と語った。
「大変だった、わ最初」「は」「喉奥やお腹、から」
「……………………」「……………………」
「〝嘔吐音〟を」「出せるようになる」「まで、が」「本当」「に」
「……………………」「……………………」
「大変だった……」
「……………………」「……………………」
脚を組むことで持ち上げられた太腿の
跨ぐら部分にできて今マンホールの蓋の縁に押し付けられている
ぷっくりとした縦長の膨らみは
〝服の隆起〟だろうか
それとも
〝まじちゃんのダメな部分の具現化〟なんだろうか
と貧相な体つきをした女は考えていた。
「たなかん…………」
「……………………」「……………………」
「たなかん。」
「……………………」「……………………」
「……………………」
〝空嘔吐〟で疲弊しきった体を鎖に預けたまま
物憂げな顔の女の秘部(?)から目を逸らせずにいると
女は〝カッ、〟とヒールを鳴らして立ち上がり、
「ど・こ・見・て・ん・だ・よっ、」
と言いながら
貧相な体つきをした女の額に唇を押しつけた。
「!」「……………あっ、」
「…………もう、ほんとバカ」「たなかんて」
と言いながら物憂げな顔の女は
長らくコンクリート製の床に突き刺さったままになっていた
〝小田原〟仕様のマンホールの蓋を
〝バキンッ!〟と音を立てて
引き抜いた。
「……………………」「……………………」「(〝ちゅ〟、て)」
「もうほんとさーあ?」「愛想尽かしてるからね?」「私じゃなかったら」
「(〝ちゅ〟て音、)」「(した、今)」「(吸い付いた、今)」「(この人)」「(僕のおデコに…………/////)」
「…………………」「………………もう!」
と言いながら左手で〝小田原〟仕様のマンホールの蓋を支え、
胸の高さまで持ち上げて
〝ブンブンブン、〟と横回転させるハンドリングを始めた。
「(小ちゃな薄い唇で、今)」「(僕の、おデコ、)」「(………………)」「(……………?)」
「……………………」「よっ、」
と言いながら右手で縁をビンタするように叩くと
マンホールの蓋はいよいよ回転数を上げ
〝ブブブン、〟〝ブブブン、〟と唸りながら
風を撒き散らし始めた。
「ちょ、」「危ね」「危、」
「……………………」「ほっ!」
「あぶ、」「危ねくない!?」
風切りの轟音が声をかき消す程になった頃、
物憂げな顔の女は〝小田原〟仕様のマンホールの蓋を
「ふんっ!」
と低く唸って宙に放り投げた。
「わ…………」「ぁ、」
「……………………」「……………………」
〝ブンブン〟と横回転を続け一つの球体のようになり、
そのままゆっくりと下降してくるマンホールの蓋に対し、
物憂げな顔の女はくるりと振り返って軽く屈み、
背中を差し出した。
「(…………あ、)」「(キャプテン、)」「(アメリカ………)」
と貧相な体つきをした女は
思った。
〝背中に収納してたんだ〟と
〝だから何時間もの間気付かなかったんだ〟と
(何度も背中を見る機会はあった筈、という矛盾を忘れて)
貧相な体つきをした女は合点し盾…………
ではなく
マンホールの蓋を収納するためのホルスターのようなものに
それが収まる瞬間を待った。
「……………………」「……………………」
「……………………」「……………………」
「……………………」「……………………」「ん?」
しかし、その瞬間は訪れなかった。
先程それが浮いていた辺りを見上げてもそこにもやはり何も無く、
〝小田原〟仕様のマンホールの蓋は忽然と姿を消していた。
「……………………」「……………………」
「え、」「え、」「え?」
「……………………」「……………………」
「ない!」「何?」「え!」「ない!」「どこ行った!?」
「はいーーーーー♪」
と言って物憂げな顔の女が両方の掌で示した先に
〝小田原〟仕様のマンホールの蓋はあった。
「え゛っ!」「すっごい………」
刺さっていた。
先程まで突き刺さっていた元の場所に。
端からそこが収納場所だったかのように
この上なくぴったりと、
〝小田原〟仕様のマンホールの蓋はそこに落ち着いていた。
「どう?」「凄いー?/////」
「凄いよもう!」「びっくりした!本当にどうやってんの」
と貧相な体つきをした女が言うのに被せるように
折り曲げた肘の内側でわき腹を〝バンッ〟と一回だけ鳴らした後
「あっ、」
と短く言って
物憂げな顔の女は固まった。
「……………………」「……………………」
「……………………」「……………………」
「……………………」「……………………」
「……………………」「……………………」
天井近くのガラスを失った窓が
ビュウ、と
風の音を立てた。
この時期に夜風が吹き込んでも薄着の二人が平気でいられるのは
この部屋に設置してある何台かの業務用エアコンが
仕事をしているお陰だった。
「……………………」「……………………」「いや、」「凄いよ、本当に。」
「……………………」「……………………」
「たった一年半でここまで…………」「頑張ってたんだね」「知らなかった」
「……………………」「本当?」
「いや本当に凄い。」「軽いの?あれって」
と言って〝小田原〟仕様のマンホールの蓋を目で指す。
「ううん、重いよ」
「そうなの?」
「うん」「見た目通りと言うか、イメージ通りと言うか」
「えぇー……」「それをあんな軽々と?」
「うん、まあ」「慣れ?」「ごじゃるに付き合って筋トレとかもしてるし」
「へえぇー…………」
〝筋トレした女子があの精度で取り回せる重量か?〟とは
貧相な体つきをした女は考えなかった。
「最初にね、」
「うん。」
「盗んでくる時が一番大変だったよ。」
「盗ん…………」「……………………」「ん?」
「小田原から持って帰ってくる時が一番大変だった。」「慣れてないし、サイズも大きいし」
「…………………」「盗んで来たの?」「小田原から」
「うん。」「すーぱーちゃんとかずぇ君とか」「派閥の人達と旅行行った時」
「……………………」
「電車で帰って来たんだからね?その時、みんなで」「ほんと大変だった………」
「……………………」
「でもね、その時に培われた気がする。」「人を欺く技術とか視線を躱す呼吸法とか」
「……………………」
「一回も気付かないのーすぱちゃんもずぇ君も、他のみんなも。」
「まじちゃん。」
「おっかしい………笑」「うん、なに?」
「返しに行こうね?今度」
「え?」「やだ。」
「犯罪だよ?」
「えーやだやだ」
「やだじゃなくて」「一緒に行くから今度返しに行こう。」「ごじゃるに車出してもらって」
「やあーだぁ。」「これが一番可愛いもん」
「まじちゃん!」
〝すぱちゃん先輩とずぇさんはバカだからあれだけど、〟と
失礼な前置きをした上で
貧相な体つきをした女は
物憂げな顔の女の〝物を隠す能力〟に驚愕していた。
自分が繋がれているこの部屋に入って来てからの何時間か、
〝小田原〟仕様のマンホールの蓋の存在を
物憂げな顔の女は一切臭わせなかった。
部屋は暗いものの
そんなサイズの物を長時間隠しておけるようなスペースも無ければ
オブジェクトの類も何も置かれておらず、
考えれば考える程物憂げな顔の女が〝小田原〟仕様のマンホールの蓋を
口から吐き出し(たように見せかけ)て床に突き刺すまで
どうやって隠していたのか分からなくなるばかりだった。
「じゃあ!」「じゃあじゃあ!」
「………………うん」
「今度はガンダムが描いてあるやつにするー/////」
「まじちゃん!」
「運ぶの担当ね、怪力無双」
「誰が怪力無双や」
もしかしたら
〝胃からマンホールの蓋を吐き出したように見える芸当〟
よりも
〝それを長時間僕から隠し続けた芸当〟
の方が凄いんじゃないか、と
貧相な体つきをした女は思った。
このマンホールの蓋だけでなく
他のネタに使われた〝魚の全身骨格〟を始めとした
物憂げな顔の女が吐き出した(ように見せかけた)物達も含め。
「これ本当可愛いの~////」
と床に突き刺さった〝小田原〟仕様のマンホールの蓋を
しゃがんで撫でている物憂げな顔の女に
貧相な体つきをした女は問いかけた。
「ねえまじちゃん」
「うん。」「なあに?」
「あの、手品ってさ」
「うん。」
「四つやったじゃん?」「トランプのを除いて」
「うん。」
「あれってさ」「どこからが手品だったの?」
「……………………」
「ねぇ。」
「…………どこ?」「って?」
「マンホールと魚はそうだったわけじゃん?」
「……………うん。」
「あとは?」
「……………………」「……………………」
立ち上がりこちらを振り返った物憂げな顔の女は
貧相な体つきをした女を
無表情のまままじまじと見つめていた。
【ホロライブ・アナザーライン】02《たそ殿〝拷問〟の時間でごじゃる》include:[天音かなた]*[AZKi]*[風真いろは]*さくらみこ*星街すいせい*雪花ラミィ*とぎもち*あずきちゃん/とぎもちのアレって炎上芸だったんですか?/「つまり〝ケーキ〟みたいな〝ゲロ〟は」→「いよいよ〝ケーキ〟みたいに」→「なっていた。」/星街すいせいだけは絶対に許せなかった女/〝上下の激しい女性V〟=〝きっと病気持ち〟/どマゾの初〇き、絶望〇き/嗚呼、百合……/////風真いろは「はぁ、もう」「はぁ、好きお前」「もう好き」「好きだよ、」「ねぇ」/まじきち、画策す/Vの怖い話
VTuber《たそ殿〝拷問〟の時間でごじゃる》12/15「多分それ、マジックやない」

