「チョコミント よりも あ・な・た♪」「って、」
「…………………」「…………………」
「聞いたこと、」「ない…………?」
「…………………」「……………あ、」「ありまっス………」「…………ッス、」
「………うん。」「そのくらいね、重要なポイントだと思うの」「アイドルにとって」「〝好きな食べ物〟」「…………って」
「……………ッス、」「ッス、」
貧相な体つきをした女は
萎縮していた。
暴力や精神攻撃を主とした嫌がらせより
何より
〝大きな声〟が
実は一番苦手だった。
「10年ぐらい、前…………」「かな?」
「…………………」「…………………」
「鞄からサラっと市販のグミとかが出てくると」
「…………………」「…………………」
「〝あ、女の子なんだな〟みたいな」「ちょっとした可愛らしさを演出できたものだったけど」
「…………………」「…………………」
「今だとちょっと古い感じ、」「よね」「やり方」「が………」
「…………………」「…………………」
「山盛りで、」「サラサラで」「練乳みたいなの、」「ドバっとかけた」
「…………………」「…………………」
「かき氷ぐらい、」「古い………」「わね」
「…………………」「…………………あの、」「タピ、」「オカ………」
「…………………」「…………………ん?」
「アッ、ひっ!」「………ッア、」
「なあに?」「たな、」「かん…………」
「…………………」「………………あの、」
「うん。」
「タピッ、」「オカ」「ぐらい」「古いかなぁと」「思って」
「……………」「…………うん。」
「時期、大体」「同じ、ぐらい………ww」
「うん。」
「ハ、」「ハハッ」「ハハハッ、」「ハ………」
「私はタピオカを可愛いアイテムとして使ってたアイドルの子」「見たことない、」「けど………」
「え、」「えぇ、」「えぇ」
「いたとしたらー………」
「えぇ」
「バカの域ね」
「バ」「…………バカ?」
「そう、」「ね………」
「へ、」「へ、」「へぇー…………」
「あの」「チョコミント、よりも♪」「のやつ」
「はい………」
「あれもそういう」「バカな世界観を演出する」「自虐ネタ、」「じゃない………」
「…………………」「………………あ、」「あぁ、」「はい………」
「ね?」
「うん…………」「分かる」「分かります」
「歌ってるの………」「誰だか知らないけど」「絶対一番好きなアイス」
「うん。」
「チョコミントじゃ」「ないじゃない」
「あ、はい」「それはもう」「絶対」
「ね?」
「は、ははぁ………」「そういう、〝バカなアイドルソングを歌ってるんです、今〟」「っていう、」「そういう演出………」
「っていう話、」「よ」
「は、」「ははぁ~………」
縦長の部屋の
霞むぐらい高い天井付近の
さっき割れた窓ガラスが
〝パリ、〟
〝カシャ、〟
と重なり合い
移動させられていく音が
時折かすかに聞こえていた。
「じゃ、じゃあ」
「うん………」
「まじきちさん的に、」「今一番アイドル感を演出できるのは」
「うん。」
「ポアロだってこと、」「ですか?」
「…………………」「…………………」
「…………あの、」「さっき吐いた」
「……………うん、」「そうね、難しい、」「けど………」
「ハイ」
「模索はしてる、わ」「常日頃」
「…………………」「……………わぁ、」
「最適解は、何なのかって」「考えない日はない、」「わね………」
「…………………」「……………スゲェや……」
と、
貧相な体つきをした女は
思った。
正直、
特に最後の数年なんてただダルくて
流してやり過ごすだけだったアイドルとしての活動に
そこまで向き合い続けることができるなんて。
「…………………」「…………………まぁ、」
「…………うん。」
「私としては」「あまり好きなパターンじゃ」「ないんだけ、」「ど………」
「うん。」
「最新版は〝肉〟」「とか」「〝寿司〟」「とか」
「うん。」
「〝生肉〟」「みたいな」「ラインなのかなと」「思って」「いるわ………」
「あ、」「あ~………」「意外と」「ご飯系………」
「そう、」「ね………」
「うん。」
「飾らない食欲と」「殿方にも理解できる嗜好が」「共感度の高い愛着を」「生む、」「のよ…………」
「はっはぁ、」
「そう………」
「……………〝生肉〟って」「いうのは?」
「大抵は」「生ハムの」「こと、」「ね………」
「はぁ~、」
「それかそれを巻いた春巻きだとか、」「生に近い肉を乗せた」「高めの寿司、」「とか………」
「ふぅーん………」
「今、とても」「可愛いわ」
「うん」
「家で、」「一人で」「生ハムのパックを開けて」
「うん」
「一人で、お箸で」「一枚ずつ剥がして」「モリモリ食べてる」「女の、」「子………」
「……………」「可愛いの?」「それ」
「えぇ、」「いいと思う、」「わ」「今、」「非常に…………」
「…………………」「…………………」
頭頂部に
視線を感じた。
〝多分ごじゃるだろうな〟と
貧相な体つきをした女は
思った。
「…………………」「…………………」
「……………今度、」「やってみようかな?」
「…………………」「……………いい、」「んじゃない………?」
「本当?」
「えぇ………」「可愛い、と」「思う、」「わ………」
「そ、」「そうかなぁ/////」
「えぇ………」
「…………………」「…………えへ/////」
「買ってあげる、わ………」
「…………………」「………………え?」
「生、」「ハム………」
「え、」「……………本当?」
「えぇ………」「徳用、」「パック………」
「え、」「うれしー/////」
「ろくなもの、食べてなかった」「もの、」「ね………」
「…………………?」
「この一カ月程、の」「あい、」「だ………」
「…………………」
〝そうだっけ?〟と
貧相な体つきをした女は思った。
確かに少し素っ気なくて
調理がなされていないメニューが多かったけど
〝肉〟とか〝野菜〟とか一応身になるものは与えてもらえていたし
〝水〟も水道から勝手に飲み放題だった。
実家時代を思うと
何の問題もない好待遇だった。
「………………ま、」「何にせよ」
「うん。」
「星街すいせいは凄いって」「ことね………」
「うん。」「……………お゛ッ?」
「大体奴が好んで食しているようなものが正解、」「だもの」「今の」
「…………………」「…………………」
「何だかんだで勘が良くてセンスがあるし、」「先見の明みたいなものも」「あるんだ、」「わ…………」
「…………………」「…………………」
「…………………」「………………?」
「…………………」「…………………」
「…………………」「たな、」「かん………?」
「…………………」「あ、」「あぁ」「何?」
「…………………」
「クソゴキブリの話」「してるの?」
「たなかん。」
「…………………」「…………………」
「たなかん。」「ダメよ」「弁えなさい。」
「…………………」「…………………」
「いないわ、」「この地球上に」「〝クソゴキブリ〟などという名の」「生物は」
「…………………」「…………………」
「たなかん。」
「…………………」「え、」「あ、」「あぁ笑」
「…………………」
「あ、」「ハーイ笑」「すんませんっ、」「ッハーイ笑」
「…………………」
「…………………」「…………………」
「…………………」
「…………………」「…………チッ、」
「たなかん。」
貧相な体つきをした女は
〝星街すいせい〟が
大嫌いだった。
自分と同じく〝歌〟が売りで
イメージカラーも同じで
デビュー時期もほとんど同じな
あのクソッタレが。
自分が歌い手としてVとして
失敗したのも完全に奴のせいだった。
スタイルもイメージカラーも
華もセンスも実力も
歌い方や歌唱力も
何もかもが瓜二つで
何もかもを
少しだけ先にデビューした上で被せてきやがった
奴のことが
貧相な体つきをした女は
以前から憎くてたまらなかった。
「殺すぞ、お前」
と頭上から吐き捨てる声が聞こえた。
声だけだったら天辺とれちゃいそうな
ロリかわ系の
アニメ声。
「…………………」「…………………」
「ご苦労様、」「ごじゃる。」
割烹着姿の女だった。
天を仰ぐように首をもたげて見上げると
月明かりを背面から受け、
推理パート以前の犯人のように
真っ黒に塗り潰されてシルエットだけになった
割烹着姿の女が
天井近くの窓枠越しに
こちらを見下ろしていた。
「殺してやるからな、」「お前本当に」
「ごじゃる。」
「ざけんなよマジで」「あのなぁ、」
「ごじゃる。」
「某には、肢体を切り分けて捧げても痛くないと思えるお方が」「二人いるでごじゃる」
「ごじゃる。」
「一人目はそのお方でごじゃる。」「そこにおわす美の神でごじゃる。」
「ごじゃる。」
「もう一人は芸術の神ことすいちゃんさん先輩でごじゃる」
「ごじゃる。」
「お前今我が芸術の神ことすいちゃんさん先輩をゴキブリと呼んだ上で」「美の神に失礼な態度をとったな?」
「ごじゃる。」
「殺すから」
「…………………」「…………………」
「ごじゃる。」
「まじきちが何と言おうと」「お前だけは絶対殺して刻んで動物の餌にすっから」
「…………………」「…………………」
「ごじゃる。」
「おいっ」「何か言え、この」「ジメジメじとじと」「陰湿系異常者」
「…………………」「…………………」
貧相な体つきをした女は
不貞腐れていた。
不貞腐れて
世代一つ分年下の
(元)後輩に叱られて、
顔を上げ
目だけで床を睨みつけ、
むっつりと
黙りこくっていた。
「ごじゃる。」
「…………………」「…………………はい、」「何ですか、美の神」
「ありがとう、」「ガラスの、」「そうじ…………」
「……………いえ、」「是非に及ばず。」
「たなかん。」
「…………………」「…………………」
「たなかん。」
「…………………」「…………………」
「っおい!」「お前いい加減に」
「…………………」「…………………」
「いい、の」「いいの、」「よ………」
「何っなのこいつぅー………」「大人かお前、それでも」
「…………………」「…………………」
「〝ごめんなさい〟、」「出来る、」「わね?」「たな、」「かん…………」
「…………………」「…………………」
「ごじゃる、」「がね」「この後お食事用意」「してくれる、」「のよ………」
「!!!!!!」
「お腹空いた、」「でしょ?」「さすが、」「に………」
正直、
もう限界だった。
パンいちに絆創膏二枚で拷問を受ける羞恥は早々に受け入れられたし、
鎖で吊るされたことによる腕や足の痛み、体の辛さにも
もう適応出来ていた。
しかし、
「……………〝ぐぎゅご、〟」「〝ぐぎゅるごごごごご〟…………」
「……………ね?」「ほら………笑」
空腹はとどまるところを知らなかった。
もう限界は
とうに超えていた。
「ごじゃる、」「三人分」「お願いね…………」
「…………はぁーい」
何でもいいから口に入れたかった。
冷凍した生肉でも三角コーナーからひっくり返した
野菜くずでも良かった。
この一月ですっかり慣れ親しんだ
そういったメニューたちが
恋しくてたまらなかった。
「たなかん。」
「…………………」「…………………」
「〝ごめんなさい〟、」「言える、」「わね………?」
何なら美の神の足元に今も置かれている
皿の上に乗った〝一品料理〟でも
全然良かった。
とにかく空腹で
気が狂いそうだった。
「…………………」「…………………」
「もー、」「はよせいお前」
「……………」「たな、」「かん………?」
「…………………」「…………………」
「…………………」
「…………………」
「…………………」「…………………も、」「申し訳ありま」「せんでした………」
「………………!」
「たな、」「かん………」
「ごじゃるさんが大切に思ってらっしゃる」「美の神ことまじきちさんと」
「…………………」
「うん。」「うん。」
「芸、」「術…………」
しかし、
貧相な体つきをした女の
〝星街すいせい〟への憎しみは
それを
軽々と凌駕した。
「芸術の」「神、」「こと」「クソハゲチャバネ、」「ゴキブリさんを」
「…………………」「…………………お前。」
「…………………」
「〝クソゴキブリ〟と、」「控え目に表現してしまいィ………!」
「…………………」
「…………………」
「誠っことォ………!」「すまん、」
「…………………」
「…………………」
「こってし、」「た」「のう………wwww」「カハッ、笑」
「…………………」
「…………………」「ハゲ、」「ちゃった、」「わね………」
不毛な時間だった。
憎悪に毒され壊れてしまった人間に
誠意を以て当たっても時間が無駄になるだけという
いい見本のようだった。
「…………………」「…………………もう」「殺そうでごじゃる、こいつ」
「ごじゃる。」
「そのための業務用骨肉粉砕機と」「焼却炉でごじゃる」
「ごじゃる。」
「再教育も、あんまり上手くいっていないようにお見受けするでごじゃる」
「…………………」「………うん。」「そう、」「それは、」「そうね。」
「…………………」
「やっぱり話が面白いから、」「この人。」「話し」「込んじゃった………」「わ」
「…………………」
「話上手、以上に」「聴き上手」「ね………」「あと、」
「…………………」
「嗜虐耐性が異常、」「だわ」
「!」「やっぱり…………」
「鈍いわね、」「悪く言えば。」「痛みにも」「心理的な辛さにも」「他人の気持ちにも」「〝状況〟にも〝現実〟、」「にも」
「…………………」
「自分という存在に対して」「さえ。」「ありとあらゆる」「ものに」「対して………」
「…………………じゃあ、シバいても」
「そう………」「ね」「言いなりにはならない、」「わ」
「はぁ……」
「何か、」「別の刺激が、必要ね………」「この子の、ヒトとしての芯に響く、何か」「別の方法」「が…………」
ねー、たなかん。
と
物憂げな顔の女が頭をぽんぽん、と叩いて
髪をさわさわ、と撫でても
貧相な体つきをした女は無反応だった。
物憂げな顔の女の足元にある〝ゲロのパテ ~群体ポアロを添えて~〟を
どうやって自分の口に運ぶ流れに持っていくかを考えるのに必死で
物憂げな顔の女と割烹着姿の女の会話は
全く耳に入っていなかった。
「……………もうおかしいよォ、こいつ」「絶対……」
「まぁ、」「後はやっておくから」「お食事お願い、」「ね………」
「…………………」「…………はぁーい、」
不服そうに返事をして
割烹着姿の女は窓枠から外へ
飛び降りて行った。
物憂げな顔の女は
失敗してしまった〝再教育〟の
締め作業に入った。
「たなかん。」
「…………………」「…………………」
「たなかん。」
「…………………」「…………………」
「たな、」「…………………」
〝バチッ〟と
馬用の鞭で左腿の尻に近い部分を叩く。
「………………ア、」「まじちゃん。」
「…………………」
「どうしたの?」「ごじゃるは?」
「…………………」
「……………あれ、」「居なく」「なってる………?」
「…………………」
どうやら、
〝比較的大丈夫な部位〟を
馬用の鞭で叩かれたぐらいでは
最早何も感じない体に
なってしまっているようだった。
「丁度いい、」「うん」「都合がいい。」
「…………………」
「あのね、まじちゃん」「僕、やっぱりまじちゃんを」「体の芯の芯、つまり胃袋で」「感じたいんだ」
「…………………」
「だからね、やっぱりそこの」「〝まじきちのゲロパテ ~群体ポアロを添えて~〟、」「食べさせて」「くれないかな?」
「…………………」
「もちろん、タダでとは言わない。」「好きなだけ叩いてくれていい、その鞭で」
「…………………」
「ううん、むしろ叩いて欲しい」「叩かれながら食べたい。」「体の内と外からまじちゃんを感じ………」
必死で考えた〝空腹を満たすためのプラン〟をまくし立てる異常者をよそに
物憂げな顔の女は愕然としていた。
〝どうしてこんなに人間が歪むんだろう〟
と。
〝なぜこんな異常な人間が存在するんだろう〟
と。
人の10倍近い体躯をした生き物に向けて振るわれる半ば〝武器〟で
体を打たれることにさえほんの少しの時間で順応してしまえる
その異常な忍耐力・適応能力に
物憂げな顔の女は
驚愕していた。
「そういう〝胃袋を掴む〟が」「あってもいいと思う。」「僕はそうやって」「まじちゃんと新しい愛の形を」「模索していきたい」
「…………………」
「だからさぁ、」「早く持って来て食わせてよ、〝ゲロパテ〟」「ねぇ、」「聞いてんの!?」
「…………………」
「おい!」「おいって!」
〝忍耐強い〟〝適応能力に優れる〟は多くの場合日本人にとって美徳で
一般的に重宝されがちな素養ではあるものの、
それを極限まで極めた目の前の生き物が
善い存在には
物憂げな顔の女にはどうしても思えなかった。
「もう千切っちゃうよ鎖!」「ねえ!」「もうやっちゃうよ本当に!」
「…………………」
「そしたらどうすんの?」「台無しだよシチュエーションが!」
「…………………」
物憂げな顔の女はす、と屈み
〝一品料理〟を乗せた皿を持ち上げた。
「!!!!!」「ヒューーーーーー!!!!!」「待ってましたっ!」
それをそのまま貧相な体つきをした女の顔の前に持っていく。
「…………………」「たなかん。」
「もっ、」「もう」「流し込んじゃって?」「全部イくわいっぺんに」
「…………………」
「もうまじ、気ィ狂いそう」「もう関係ない、ゲロだとかなんだとかそういうの」
「…………………」
「そもそもね、」「汚くないんだよ、まじちゃん産だと」「あんまり汚いと感じない、誰も」「だから成立してないんだよこの拷問そもそも」「言っとくわ、それだけ」「大体さぁ、」
「たなかん。」
「ん?」「え、なに?」「なに、まじちゃん」
「これ、」
〝顔〟と言うより
〝目〟にぐいい、と
近付けていく。
「……………わ、」「ちょっちょ、」
「これ、本当に」
「……………え?」
「本当に、」「ゲロに見える………?」
【ホロライブ・アナザーライン】02《たそ殿〝拷問〟の時間でごじゃる》include:[天音かなた]*[AZKi]*[風真いろは]*さくらみこ*星街すいせい*雪花ラミィ*とぎもち*あずきちゃん/とぎもちのアレって炎上芸だったんですか?/「つまり〝ケーキ〟みたいな〝ゲロ〟は」→「いよいよ〝ケーキ〟みたいに」→「なっていた。」/星街すいせいだけは絶対に許せなかった女/〝上下の激しい女性V〟=〝きっと病気持ち〟/どマゾの初〇き、絶望〇き/嗚呼、百合……/////風真いろは「はぁ、もう」「はぁ、好きお前」「もう好き」「好きだよ、」「ねぇ」/まじきち、画策す/Vの怖い話
VTuber《たそ殿〝拷問〟の時間でごじゃる》8/15「星街すいせいだけは絶対に許せない女」

