【 ブラック・ウィドウ 】46点 – 映画批評 –

映画



【 ✔ 視聴前チェックポイント】
【①時系列は「シビル・ウォー」直後。ナターシャはロス長官に追われている】
【➁主な舞台はロシアで、ナターシャの過去や家族関係に関わるストーリー】
【③MCU最高峰の素晴らしいアクションシーンを堪能しよう】



※ネタバレを含みます※


【①鋭くリアルなアクションシーン】
【➁レッド・ガーディアンやタスクマスター等アメコミファン必見のキャラ達】
【③ナターシャと妹(エレーナ)の関係性が微笑ましい。ナターシャの姉としての顔は必見】

【①編集のキレが悪い。余計なシーンに尺をとり、大事なプロットを強調しない】
【➁薄っぺらく無理のある脚本。ズレていて芯を食わないセリフの数々】

批評

✔ 「ブラック・ウィドウ」は「シビル・ウォー(2016)」直後のナターシャ(ブラック・ウィドウ)の活躍を描くMCU(マーベル作品を原作とした映画作品群)作品。ロシアを主としたヨーロッパの国々を舞台に、ナターシャの元家族達と共闘するストーリー。マーベルコミックファンにはお馴染み「タスクマスター」と「ソ連版キャプテン・アメリカ」レッド・ガーディアンが登場する。

MCUが軌道に乗ってから「エンドゲーム(2019)」までの関連作品はどれもかなりのクオリティを保って作られていたが、「ブラック・ウィドウ」の出来を見ると今後MCU作品はどんどんB級に寄っていくのかも知れないと心配してしまう、それくらい安っぽく仕上がった作品である。全編狭めの画角に天井の低い室内という低予算映画にありがちな画で仕上がっており脚本の作り込みも感じない。私は好きだがレッド・ガーディアンやタスクマスターのビジュアルもダサ過ぎるだろう。各所に急ごしらえ感が見え隠れする微妙な仕上がりだ。

ナターシャとその妹であるエレーナの姉妹らしい掛け合いは見ていて和む。自分より歳下の誰かを優しく見守るナターシャというのは新しい。しかし二人が太っていて汚らしいレッド・ガーディアンや、昔少し世話になっただけの敵方の女科学者を両親と認めて家族の絆を感じているという設定にはかなり無理がある。「20年以上前の幼少期に3年一緒に暮らしただけの大人」など仮に親戚で血の繋がりがあったとしても実質他人にしか思えないだろう。四人を無理矢理「家族」と定義付けた違和感を解決出来ないまま物語は進行していく。太った汚いおっさんが若い女性のゼロ距離まで顔面を寄せてネチネチとオラつく密描写が繰り返される様は大人の男である私から見ても耐え難い不快さで、女性でありながらこんな描写を入れ込んだ本作の監督の趣味嗜好を疑ってしまう。



この世界のロシアには「レッドルーム」というナターシャのような女性の特殊工作員「ウィドウ」を育成する機関があり、そこに在籍しているウィドウ達やその頂点に立つ「タスクマスター」、そしてナターシャやエレーナのアクションシーンは物凄く見応えがある。男性顔負けのスピードとキレ、重量感満載のリアルなアクションは何度でも見返したくなる程だ。ストーリー部分は微妙だがアクションシーンだけで観てよかったという気持ちにさせてくれる。

全体的に安っぽくて作り込みの甘い、残念な作品ではあるがMCUファンであればつまらないシーンをスキップしてアクションだけでも楽しむのがいいだろう。レッド・ガーディアンが「(キャプテン・アメリカが凍結状態だった1980年代に)俺はキャプテンと戦った」という武勇伝を語る様子から、いよいよドラマシリーズ「ロキ(2021)」で解禁された多次元宇宙がMCUの本筋にも絡んでくるようだ。そういった点や今後シリーズで活躍するであろうナターシャの妹エレーナのキャラを確認する意味も含めて、MCUファンにはとりあえずオススメしておきたい一本だ。



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