海外ドラマ批評.03【クリミナル・マインド シーズン18】50点《リードを返せよ、この野郎》

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《リードを返せよ、この野郎》





✔ シーズン15で一旦幕を引いた後〝エボリューション(=シーズン16)〟として復活してもう早くも3シーズン走り切ったクリミナル・マインドだが、〝エボリューション(=進化版)〟だから、という事で付け加えられた演出・ストーリー運び等に関する新要素が全く面白くない。


✔ シーズン16以降付け足された〝新要素〟のうち最も大きかったのが新参レギュラーキャラクターのヴォイト。それまでのシーズンで毎話登場したサイコキラー達の親玉みたいな存在で、彼が作り出した「サイコキラーのネットワーク」の構成メンバー達が毎話事件を起こしBAUのお世話になっていく、というのがシーズン16以降のメインパターン。──────不人気なせいかは分からないが彼のご尊顔はYouTube上に見当たらなかったので代わりに挙げた上動画のサムネを見て欲しい。BAU(主人公チーム)全6名のバックにでかでかとシルエットの形で載っているのがヴォイトだ。

シーズン16を途中までしか観ていない人にはネタバレになってしまうので申し訳ないのだが、彼は「ネットワーク」を作ったはいいものの早々にBAUに捕まり自身が作った「ネットワーク」の全てを捕縛するために協力させられる運びになるので、言ってみればシーズン16以降の(少々変則的ではあるものの)BAUの新メンバーだ、という事になる。──────背格好や年齢、並外れた知能を誇るキャラである事を考えると彼はどう考えても(シーズン15を最後に降板した)リードの代わりにBAU入りしたキャラだ。なので、クリミナルマインドのシーズン16以降について評価する場合まず「リードの代わりに入ったヴォイトとかいうキャラ、どう思う?」という論題は避けられない。

私が世間一般のクリミナル・マインドファンの感性から大幅にズレていたのならそれはもう本当にすみませんと平謝りするしかないのだが、そのリスクを鑑みて控え目にでも言わせて貰うとするならリードの代わりにこんな若作りぶりっ子前髪垂らしおじさんが入って喜ぶクリミナル・マインドファンなどどこにもいるわけがない。シーズン16の放送開始からもう3年が経つので彼もシリーズに参入してからもう3年経ったわけだが、その間何度思わされたか分からない「いいからさっさと殺せよ誰なんだよこいつ」と。「リードはいつ戻って来んだよ本当に」と。クリミナル・マインドをシーズン15まで観ていた全世界の視聴者が同じ事を思っていたのは明白で、彼を置いたままリードの復帰を見送る製作陣はその時点でズレが過ぎる。

彼自身の存在に付随するように、彼自身の作った「ネットワーク」の存在は飛躍が過ぎていてつまらないし、その「構成メンバー」もこじつけたような理由とやり方で犯罪を犯したりしていて安っぽい作り物臭が半端ないし、シーズン18に入って彼らが揃って着用していた「仮面」+「パーカー」の出で立ちなど最早ギャグの域だ。──────シーズン16以降追加された新要素のうち一番大きいのはまず新参(裏)BAUメンバーヴォイトと彼が作った「ネットワーク」だがどちら共無理があって作り物臭くて圧も迫力もオーラも真に迫るものも何も無くてとにかく全部が面白くない。シーズン18ではヴォイトがサイコキラーに戻るのかどうか、みたいな部分を軸にシーズンが進められていくが、(まぁ全然観れる水準ではあるものの)どうでもいいキャラのどうでもいい葛藤でしかないためやはりどうでもいい。シーズン16以降のクリミナル・マインドを観ていて「そんな事よりリード戻せよ」より強く思う事は特にない。

2005年に始まって今年シーズン18を迎えたクリミナル・マインドは言うに及ばず大長寿のモンスタードラマ番組だが、海外ドラマで言うなら大体シーズン10ともなればその時点で〝大ドラマシリーズ〟みたいな種別になる。そういうドラマシリーズに必ず共通して言えるのは『視聴者は最早話自体を観ていない』という事だ。じゃあ代わりに何を観ているのかと言えば、それは『出演キャラ』だ。

シーズン10を超えるドラマ作品、ともなれば(出演者の容姿を含む)劣化は基本的に必ずするし、グダグダとしていて明らかに面白くなかったシーズンもあれば同じパターンの繰り返しも必ず起こる。──────シーズン16以降のクリミナル・マインドで言えばロッシがヴォイトにカマされてアワアワ言っていたプロットが結構長く擦られていたが彼はシーズン15でもあの顔の皮を剥ぐ奴にカマされてアワアワ言っていた。制作陣が同じなだけに10シーズン(短くても10年以上)も同じシリーズが続けば「同じプロットの繰り返し」はどのドラマでも必ず起きる。

それでも視聴者が変わらずそのドラマシリーズを推し続ける理由は、最早出演キャラクター達に対する愛情以外あり得ない。〝同じパターンで進む話〟を〝同じ面子が演じてくれる〟以上をご長寿ドラマシリーズのファンは求めていない。

20年近くもやっているのだから新キャラ結構・テコ入れも大いに結構なのだが、それは今までシリーズを観てきたファン達が求める『出演キャラ』の条件をちゃんと満たしてからだ。──────特に、〝それを満たさないまま似通った別キャラを出し3シーズン通しての主役的立ち位置に据える〟なんてとんでもない。シーズン6で一旦JJを切って別キャラを入れた事もそうだが、ここの製作陣は自分とこのドラマの『キャラ』に関して扱いが雑過ぎるし、いい加減に考え過ぎている。

ちなみに、現BAUメンバーとして残存していて次シーズン以降も出演が堅いタラとルークと、あと今回新しく入ったあの顔の長いなんとかいう男性の捜査官はクリミナル・マインドの『出演キャラ』にカウントしない。──────ので、別に次シーズン以降無言のまま静かに降板してもいいし「別チームで頑張ってる」設定にしてもいいし、チームメンバー全員での車移動中に受けた爆破攻撃で無理矢理に死んだって別にいい。

クリミナル・マインドにおいて視聴者から『出演キャラ』にカウントされているのはリードとガルシアとJJとエミリー、それにロッシ、居なくなってしまったモーガン、後はホッチやギデオンぐらいまでだ。最後の3人に関してはもう無理だがまだ可能なリードは次シーズン以降で早々に呼び戻す事──────新要素や新キャラ、テコ入れ等何をするにしてもまずはそれからだ。



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