→ドラマ批評.05 に続く
※※※※※※※※※※※ ネタバレを含みます ※※※※※※※※※※※
✔ 手がかかっていて作りが丁寧。作り手の熱意と豊潤な製作費の存在が感じられる。
✔ エイリアン関連の映像作品としてかなり優秀。初作を彷彿とさせつつ新しい試みにも意欲的。──────特にエイリアンの解剖&育成パートが一押し。
✔ 〝見た目は大人、頭脳は子供〟な役を演じる若手俳優達の演技が上手く、キャラ造形も良い。
✔ ゴリゴリのポリコレ作品だが見様によってはそのアンチ作なのかも………?
✔ 無理矢理なポリコレ展開。特に最後二話が酷い。
✔ 度々差し挟まるサブリミナルを始めとした、意図不明の変な演出が結構な数ある。
✔ エイリアン(ゼノモーフ)の所作・姿勢が人間過ぎる。
✔ 身勝手過ぎる上に横暴、残虐非道にして低知能でもある主人公サイドに辟易。──────特に最後二話が酷い。こいつらが主人公なら次シーズンは無くていいと思える程。
✔ プロメテウス(2012)→コヴェナント(2017)と酷評続きでロムルス(2024)でちょっとだけ持ち直す、というパッとしないここ10年を過ごしたエイリアンシリーズの最新作。形式はドラマだがこれは悪過ぎるセールスのせいでとうとう金が集まらなくなった…………のではなく、寧ろ製作費はロムルスまでの映画作品以上にかけられているし、それは作り手の手間や熱意に関しても同じだ。
それが初めて明確に感じられるのは第一話の中頃で不時着でビル群に突っ込んだ宇宙船の半壊した内観だとかビルの内観の凝った作り、およびそこを武装救助隊が探索していく丁寧かつ刺激的なストーリー展開を観た時だ。──────第一話は〝エイリアンの映画なのにエイリアンが(あんまり)出てこない〟という一番やっちゃダメなミスを犯していて、正直そんなに面白くはないのだが該当のシーンの出来の良さで視聴継続だけは十分出来る。
エイリアン(=ゼノモーフ)が出て来てまともに稼働し始めるのは二話目の途中からなのだが、以後このドラマシリーズの〝エイリアンもの〟としての真価が発揮され始める。──────何せちょっとした暗がりに紛れ込んで〝ヌルり〟と動き出す形で視界に現れる描写だとか、咽頭顎(口の中の口)での顔面破壊からの情け容赦ない(連続)殺人シークエンスだとか、それでいて一定以上の知能を感じさせる所作・行動の不気味さ等、視聴者が〝エイリアンもの〟を観る上で望む全ての要素が余すことなく、かつ忠実のその上で再現されているのだから。プロメテウスだとかコヴェナントの二の轍をこのドラマシリーズは全く踏んでいない。
エイリアンファンのどのくらいがどれだけ反応したかは分からないが、それ以降のストーリー上で差し挟まれる〝エイリアンの解剖&育成実験〟の流れは長年エイリアンシリーズを観続けている私個人からするととんでもなく面白かった。フェイスハガーの内部から取り出したチェストバスターの幼体(ほとんどオタマジャクシ)を生理食塩水(みたいな液体)に漬け機械に繋ぎ呼吸をさせた状態の人間の肺に寄生させて育て、成体にまで成長させる過程を追うものだが、それを観ればゼノモーフ(=オーソドックスなエイリアン)が「①オタマジャクシ」→「➁ヘビ」→「③足の生えたオタマジャクシ(=カエルの幼体)」→そして「④人間そっくり」という変態過程を辿るのが分かる。長いことエイリアンの関連シリーズを観ていても描かれなかった描写だし、今回初めて明かされたゼノモーフの新たな一面だ。
エイリアンシリーズは毎回その軸を〝新発想〟に頼りがちだ。
「3」では四足歩行のドッグエイリアン、「4」ではニューボーンを筆頭とした愉快な奴等、「AVP2」ではプレデリアン、プロメテウスはそもそもほぼエイリアンの映画ではなくエンジニアの存在と人類の起源を探る旅が主軸、コヴェナントではネオモーフと異常な変態ロボットが主な脅威だった。
これら全ては余すことなく評判が悪かったわけだが、では逆に評判の良かった初作以降の作品は「2」、「AVP」、「ロムルス」で、その詳細は■「2」=「1」の〝数が多い版〟■「AVP」=「2」をプレデターという別の宇宙最強種族にぶつける■「ロムルス」=単純な「1」への原点回帰、ということでその全てが〝新発想〟ではなく「1」かせいぜい「2」の〝原点回帰〟だったり〝拡張版〟みたいな主旨の作品だ。──────ここからエイリアンシリーズを観る視聴者はそれに作り手の〝新発想〟が盛り込まれることが嫌いで、「1」かせいぜい「2」までのベタな〝エイリアンらしさ〟を色濃く引き継いだ〝原点回帰作〟もしくは〝拡張版〟とでも言える作風が好きだ、ということが分かる。
「1」にも登場したゼノモーフを非常に〝らしく〟描き、解剖&育成過程までを事細かに描いて掘り下げた今回の「エイリアン:アース」は間違いなく〝原点回帰〟&〝拡張版〟だ。新しい要素として「目玉の奴」「ヒル」「蛾」みたいな新クリーチャーも登場するがその全てもゼノモーフと同じ「寄生生物」ということで本作の「1」や「2」との〝地続き感〟を阻害しない。──────だから多分視聴者からの評判はすこぶる良いだろうし、次シーズンもすぐ作られるだろう。
エイリアンシリーズを成功させる秘訣は飛び道具的に斬新な〝新発想〟ではなく、まず間違いなく〝温故知新〟だ。具体的な質・内容はともかく、そうでなければエイリアン関連の映像作品はまず成功しない、というのは一つ確実なところだろう。


