【ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結】81点

【始まる、DC侵攻計画】

 本作は「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー(2014)」で有名なジェームズ・ガンが手掛けた、DCEU(DCコミックス原作の映画作品群)の最新作だ。
前作の作風を一新し、「ガーディアンズ」っぽさ満載の、明るくポップで、ナンセンスなギャグに溢れた娯楽超大作となっている。

アメコミの映画化に関して、今ハリウッドでジェームズ・ガンの右に出る者はいない。
彼は世界のオタク達が何をしたら喜ぶか、よく心得ている。
今最も勢いのあるアメコミ映画の専門家をDCEUが、あろう事かライバルであるMCU(マーベルコミックスを原作とする映画作品群)から呼び寄せて製作されたのが本作である。
これはDCEUの、MCUに対する事実上の敗北宣言と受け取っていいのではないだろうか。

前作からテイストを一新して「ガーディアンズ」に寄せ、MCUから持ち込まれたキャストで構成された本作はさながらMCUの、DCEUにおける植民地・侵略の足掛かりである。
作中、前作から僅かに引き継がれたキャラクター達の出番を次々と奪って行く展開に、「スーサイドシリーズは俺の物にするから」という監督の意思が表れているようだ。
序盤の、主に前作から引き継いだキャラで構成されているチームが作戦開始と同時に壊滅し、監督がMCUから連れて来た役者の率いるチームが生き残って物語の主軸となる流れなどは、今考えると笑ってしまう。

看板キャラハーレイ・クインにしても、本作では本筋のストーリー上で重要な役割を何一つ担っていない。活躍シーンは多いが、その全てのシーンと彼女の存在を丸ごと本作からカットしても、ストーリー的には何の破綻も起きない。
本作の主人公はブラッドスポートだし、ヒロインはラットキャッチャーで、彼らの父娘的な関係が物語の軸である。

最近売れ始めている、ピースメイカー演じるジョン・シナは、本当にいい仕事をする。
近年ハリウッド映画でよく見る「強くて有能、知恵もあって表面的には完璧だが、根本的に思い上がっていて、人として間違っている白人の悪役」が綺麗にハマる。
前文内の鍵括弧で括った特徴は、今アメリカ国民が自国に対して抱いているイメージで、ピースメイカーは「近年までの、間違ったアメリカ」の象徴として作られたキャラである。

自国の利益の為に他国を侵略・利用し、不都合な事実は破壊して隠蔽。
その邪魔をする者は誰であっても殺害して闇に葬り、結果世界に平和をもたらす。
作中あるキャラが彼に向けて言う「ピースメイカー(平和をもたらす者)とは、笑わせるぜ」というセリフは、監督の、自国に向けた抗議である。
立ち向かう主人公が黒人、というのも非常に示唆的だ。
娯楽作としてハイレベルに仕上げた上に、考察出来るような裏テーマやメッセージ性まで含ませる高度な映画作りは、映画の都ハリウッドと言えど並みの監督には出来ない。

序盤が少しもたつくものの、DCEUではこれが一番完成度の高い作品だろう。
弐瓶勉作品のような装いをした主人公に、星のカービィの敵キャラを思わせるカイジュウ、カラフルでポップな特殊効果等、どことなく日本人の琴線に触れる要素も多い本作。おすすめである。

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