【 モービウス 】41点 – 映画批評 –

映像作品



【 ✔ 視聴前チェックポイント】
【①ジャレッド・レト演じる怪しく美しい吸血鬼「モービウス」を堪能しよう】
【➁本作はマーベルコミック原作だがMCUとは別シリーズで、「ヴェノム(2018)」と同一の世界線】


※ネタバレを含みます※

【①主演俳優と役柄の強い統一感】
【➁冒頭から中盤までの流れが完璧。物語にエンジンが掛かるまでが早い】

【①シンプル過ぎるストーリー】
【➁中盤以降のストーリーがお粗末。開き直ったかのようにありきたりな展開の数々】
【③バトルシーンの出来が悪い。CGアニメ同士が絡み合うだけで重みや迫力がない】

批評

✔ 「モービウス」は2022年公開のアクションヒーロー映画。マーベルコミックが原作だがMCUとは別の世界線を舞台に物語が展開する。怪しく美しい吸血鬼「モービウス」を「スーサイド・スクワッド(2016)」のジョーカー役でお馴染みジャレッド・レトが演じる。

2018年、サンフランシスコでヴェノムが大暴れした世界線のニューヨーク。天才医師であるマイケル・モービウスは自身の血液の難病を治癒すべく、吸血コウモリの遺伝子を自らに移植するという施術を行う。自力での歩行も困難だったモービウスは健康体になり、超人的な運動能力も手にするが同時に人間の血に強い渇望を覚えるようになる…という筋書き。

私がジャレッド・レトを初めに見たのは「ファイト・クラブ(1999)」でだが、それから20年以上経っても彼は全く衰えない。ファイト・クラブではエンジェル・フェイスという美男子役を演じていたが、50歳になった今の方が美しいぐらいではないだろうか。色白でミステリアスな彼に今回の「吸血鬼」という役は大ハマりだ。

導入部分でグダついて「いいからはよ戦えや」とやきもきさせられるヒーロー映画というのは結構多いが、本作の場合導入にあたる映画前半部分の流れがスピーディーかつ刺激的でとてもいい。日陰者でともすればイジめられた幼少期、体は弱いが頭脳明晰、似た立場だがキレると凶暴になる親友、孤独な主人公をたった一人理解し寄り添ってくれる美人のヒロイン、動物の遺伝子を人体に取り込むという嫌な予感しかしない実験等既視感満載の描写が連打されていくが、分かり易いものをテンポよく見せられるというのは結構気持ちがいい。「主人公が吸血鬼になって暴走するアクション映画」という事は何カ月も前から観客全員が知っていた情報なので、そこまでの流れをノンストレスにサクサク進めていくのはいい判断だ。



能力を獲得した直後のモービウスが手近にいた人間を次々と手にかける最初のアクションプロットや自分の能力を探り探りで確認していく描写はダークな上にスタイリッシュで、中二心をくすぐられる。能力を解放して高速で移動する際は映画「X-MEN2(2003)」のナイトクローラーの煙に似た残像を残し、高い聴力を利用して反響定位を行う際には周囲の空間が暗く振動する。同じ世界線のヴェノムが重量感のあるパワーバトルを行うのに対してモービウスは素早くスマートに戦うスタイルだ。

中盤、本作のヴィランが登場してからストーリーは一気に停滞し始める。前半部と同様の既視感たっぷりの展開を、後半では低速かつ雑に、しかも陰鬱なテイストで展開していくので全く見所がない。モービウスとヴィランのバトルはCGアニメ同士が絡み合っているだけで何の重量感も感じられず、吸血鬼の飛行能力や高速移動ならではの映える画も撮れていない。ストーリー部分が貧弱なのは「ヴェノム」も同じだが、あちらは戦闘シーンだけは素晴らしいので「アクションヒーロー映画」という意識で見るなら本作は数段劣る。モービウスのビジュアルと能力自体はいいので次作以降能力系バトルの描写が上手い監督が手掛ければいい画が見られる事もありそうだ。

「モービウス」はシンプル過ぎるストーリーとパッとしないアクションシーンのせいで全体的には微妙な出来のヒーロー映画だが、ジャレッド・レト演じる怪しく美しい吸血鬼「モービウス」と、それに付随する世界観は一見の価値ありだ。ストーリーに関してもストレスを感じる程ではないので予告編を観て気になった人は劇場に足を運んでみてはいかがだろうか。



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